文=Baseball Crix編集部

楽天快進撃の象徴、2番・ペゲーロ。ラミレス監督がこだわる2番・梶谷

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 先発ローテーションの軸である岸孝之、安楽智大の離脱がありながら、見事な開幕ダッシュを見せた楽天。敵地でオリックスに3連勝したあと、本拠地開幕のソフトバンク戦にも2勝1敗と勝ち越し。快進撃の象徴は開幕カードから猛威を振るう打線で、2番・ペゲーロ、3番・ウィーラー、4番・アマダーが並ぶ上位打線は強力だ。

 オリックスとの開幕戦と第3戦では、2番のペゲーロがそれぞれ豪快な決勝2ランをマーク。前者は同点の延長11回で、後者は1点ビハインドの9回二死からの逆転弾。いずれも2番という早い打順に置いたことが、結果的に奏功する形となった。

 梨田昌孝監督は今季の打順について、「相手に初回からプレッシャーをかけたい」と説明。もちろんペゲーロにバントをさせる気はなく、強行策がメイン。しかも、ペゲーロは身長192センチと大柄ながら脚力もあり、途中加入した2016年は200打席に対し併殺打はふたつしかない。強攻時のリスクが少ないのも、ペゲーロを2番で起用する利点だ。

 ラミレス体制2年目のDeNAも、長打力に長けた梶谷を2番に置いた。そもそも2番・梶谷は就任1年目からの構想だったが、昨季は梶谷自身の故障に5番候補・ロマックの不調も重なり、レギュラーシーズンでの梶谷が2番に入った試合は8試合しかなかった。だが今季は、開幕から理想の打順でスタート。2017年初勝利となった4月1日のヤクルト戦では、その梶谷が3本の二塁打に2打点と持ち味を発揮し、6対1で快勝した。

ドナルドソンにトラウト……メジャーでは2番打者MVPが続出中!

 2番に強打者を置く打順構成は、送りバントが少ないメジャーでは当たり前だ。昨シーズン快進撃を見せたカブスは、強打の三塁手・ブライアントをシーズン途中から2番に固定し、そのまま108年ぶりのワールドチャンピオンへ駆け上がった。ブライアント自身も打率.292、39本塁打、102打点の好成績を残し、ナ・リーグMVPを獲得。
 メジャーではそれ以前にも、2015年はブルージェイズの2番・ドナルドソンが、打率.297、41本塁打、123打点の成績でア・リーグMVP。2014年はエンゼルスの2番・トラウトが打率.287、36本塁打、111打点の成績を残し、同じくア・リーグMVPを受賞している。

 そもそも2番打者に強打者を置く打順構成は、セイバーメトリクスの考え方に基づくものだ。個人の得点能力を可視化するものにOPS(出塁率+長打率)という指標があり、シンプルにこのOPSが高い選手を上位に並べれば、得点力がアップするという確率論だ。ただ、野球にはアウトカントの制限があるため、足の遅い主砲タイプには併殺のリスクがある。よって2番には、OPSに加え脚力を備える選手が入ることが多い。

 梶谷の昨季のOPSを見ると、リーグ10位の.839を記録。3年連続100三振越えという淡泊さもあるが、併殺は2015年が4つ、2016年がふたつと少ない。ペゲーロも規定打席未到達ながらOPS.832をマーク。こちらも前述の通り併殺のリスクが少なく、改めて2番に適した人材であることがわかる。

セは優勝チームの2番が2年連続で最多安打。菊池は犠打数が大幅減

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 2015年にセ・リーグを制したヤクルトは、川端慎吾の2番起用がハマり打線が機能した。川端自身も打率.336、195安打をマークし、首位打者と最多安打のタイトルを獲得。昨シーズン25年ぶりの優勝を果たした広島も、不動の2番・菊池涼介が.315の高打率をマークし、こちらも181安打で最多安打のタイトルを受賞した。

 セ・リーグは2年連続で2番打者が最多安打のタイトルを獲得し、その選手の所属チームが優勝している。特に菊池は、レギュラーに定着した2013年から不動の2番打者だったが、2013年は50犠打、2014年は43犠打、2015年は49犠打と、以前は典型的なつなぎ役タイプの2番だった。

 それが2016年は、過去3シーズンとほぼ同じ出場試合数だったにもかかわらず、23犠打と大幅に減少。チーム方針とともに菊池自身の打撃スタイルの変化が、25年ぶり優勝の原動力になった。川端の2015年犠打数もわずかにふたつ。バントをしない2番打者がセ・リーグを席巻している。

 今季はDeNAの梶谷、楽天のペゲーロだけではなく、ロッテも開幕第3戦目以降、昨季の首位打者&最多安打者の角中勝也を2番に入れてきた。そして4月6日には、日本ハムの大谷が2番・指名打者でスタメン出場。大谷は昨季、規定打席未到達ながらOPSは脅威の1.004をマーク。「1、2番に打てる人がいる方が勝ちやすいに決まっている」とは栗山英樹監督。この試合は1対5で敗れたが、今後も大谷を2番に入れる可能性を示した。

 かつての西鉄ライオンズ・豊田泰光、日本ハム時代の小笠原道大のように、強打の2番打者はいつの時代にも存在した。だが、その起用は“奇襲”と捉えられることも多く、日本の2番打者と言えば「小技が上手く献身的な選手」というイメージが未だに根強い。

 それが今季は、春先から半数近いチームが“攻撃的2番”を採用し、チームの得点源として機能している。これが近年のヤクルト、広島のように優勝という結果にもつながれば、攻撃的2番が当たり前の時代へと突入するだろう。


BBCrix編集部