文=大島和人

終盤も消化試合が少なかったBリーグだが・・・

 B1のレギュラーシーズンは5月7日(日)に終了し、13日(土)からチャンピオンシップと残留プレーオフが始まる。終盤戦はどの会場もお客がよく入っていた。

 18チームのうち8チームがチャンピオンシップ、4チームが残留プレーオフに回るレギュレーションのため”消化試合”がほとんど出ない。それは盛況の大きな背景だった。既にチャンピオンシップ出場を決めているチームも「何番目の成績で出場権を得るか」で、1回戦の対戦相手が変わってくる。そんな順番、駆け引きも終盤戦に見どころだった。

 チャンピオンシップの1回戦は「全体1位vs全体8位」、「全体2位vs7位」という順番で機械的に相手が割り振られる。だから理論上は、リーグ戦で頑張れば頑張るほど1回戦は”やりやすい”相手とやれることになる。

 ただ初年度のB1に関しては、この振り分けに”バグ”が出てしまった。第2シード(東地区1位)の栃木は今回、1回戦で千葉(第7シード/東地区3位)と対戦する。第3シード(西地区1位)になったシーホース三河は、第6シード(西地区2位)の琉球ゴールデンキングスと当たる。

 栃木、三河ともに46勝14敗でシーズンを終えており、直接対決の結果によって運命が分かれた。シーズン最終戦で栃木が仙台89ERSを下し、三河は滋賀レイクスターズに敗れたため起こった”大逆転”だった。

 しかし1回戦の組み合わせを見ると、三河は「負けて得をした」と言い得る。琉球は29勝31敗でシーズンを終え、8チームの中では唯一の負け越しチーム。昨年のbjリーグ王者であり、終盤戦に驚異の追い上げを見せた彼らを侮るべきではないが、相対的に見れば楽な相手だ。

 栃木が対戦する千葉は44勝16敗でシーズンを終え、1月のオールジャパンでも東地区首位となった栃木、西地区首位・三河、中地区首位・川崎とすべて倒して日本一に輝いたチーム。必死に頑張った結果がより厳しい敵では、努力の意味がない。

第4シード以下の割り振りに問題はないか

©Getty Images

 会場に足を運んだ観客にプロとしてしっかりした内容を見せる責任があるのは当然だが、チャンピオンシップに向けたピーキングを考えることもプロの責任。栃木もケガ人の強行出場を避け、ベテランや主力選手の出場時間をコントロールするという手を終盤戦で打っていた。

 だとしても「抜いた方が得をする」というレギュレーションはやはりおかしい。各地区の1位が第1シード、第2シード、第3シードを占めるにしても、せめて第4シード以下は地区内の順位でなく”勝率順”で割り振るべきだ。

 今季のチャンピオンシップ1回戦はこういう組み合わせになっている。

1「川崎ブレイブサンダース(中地区1位/三地区間1位)×サンロッカーズ渋谷(中地区3位/ワイルドカード下位)」
2「リンク栃木ブレックス(東地区1位/三地区間2位)×千葉ジェッツ(東地区3位/ワイルドカード上位)」
3「シーホース三河(西地区1位/三地区間3位)×琉球ゴールデンキングス(西地区2位/三地区間3位)」
4「アルバルク東京(東地区2位/三地区間1位)×三遠ネオフェニックス(中地区2位/三地区間2位)」

 第4シード以下を”勝率順”で振り分ければこうなっていた

1「川崎ブレイブサンダース(中地区1位/三地区間1位)×琉球ゴールデンキングス(西地区3位/勝率全体8位)」
2「リンク栃木ブレックス(東地区1位/三地区間2位)×サンロッカーズ渋谷(中地区3位/勝率全体7位)」
3「シーホース三河(西地区1位/三地区間3位)×三遠ネオフェニックス(中地区2位/勝率全体6位)」
4「アルバルク東京(東地区2位/勝率全体4位)×千葉ジェッツ(東地区3位/勝率全体5位)」

 修正案でも「A東京×千葉」というシビアなカードは生まれたが、“負けて得をする”という矛盾は回避できる。シード順の振り分けは可能な限り早く「勝率を重んじる」仕組みに改めるべきだろう。

 もちろんリーグの草創期は試行錯誤がつきもので、制度の“バグ”も出やすい。加えて理想と現実のギャップがあり、矛盾を受け入れざるを得ない場合もある。

 バグ、矛盾の一例を挙げるとレギュラーシーズンの試合数だ。Bリーグは各クラブ60試合ずつを行うが、同地区内のチームとの対戦数は3チームと8試合、2チームと6試合となっており、明らかに平等ではない。例えば栃木はA東京、千葉、仙台と8試合ずつ戦っており、仮にA東京や千葉との対戦が「6試合ずつ」で済んでいればもっと楽をできたはず。特に千葉とはオールジャパン、チャンピオンシップも含めて年に11回戦うことになる。

 栃木のトーマス・ウィスマンヘッドコーチも「1シーズンに8試合対戦しなければいけないという状況は多すぎる。必要のない試合数」と苦言を呈していた。一方で入場料収入を考慮すれば「54」より「60」の方がいいし、単純に試合数を減らせばいいという話でもない。理想の理想を言うなら、個人的には「3地区制」を撤廃して、ホーム&アウェイの試合も平等に合わせた方がいいと考えている。要は理想を追求すればキリがない。

独特な仕組みのチャンピオンシップ

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 チャンピオンシップの1回戦、2回戦の「変則2戦先取方式」も、決して理想の仕組みではない。今回は1勝1敗で2戦目を終えた場合、2戦目終了の20分後に5分ハーフの延長時限を“3試合目”の名目で行なうユニークな方式が取り入れられた。

 60試合の奮闘が10分間で台無しになりかねない「ハラハラ感」には相応のエンターテイメント性があるし、これは旧bjリーグで実際に用いられていた制度だ。要は「土日の両方に試合を入れたいけれど、平日には持ち越したくない」という判断だろう。これなら2日間で必ず決着するから、試合をやらない可能性がある日の準備をしないでいい。

 しかし拮抗したチーム同士が対戦すれば「1勝1敗」で延長時限にもつれる可能性は高い。10分間の勝負は偶然性の要素が高く、PK戦や抽選に意味が近い。それなら「1勝1敗の場合は得失点差で勝ち抜けを決める」規定にした方がオーソドックスだろう。このレギュレーションを「良きもの」として受け止めている選手を私は一人も知らない。

 決勝戦もNBAなら4戦先取だし、昨季までのNBLは3戦先取で行っていた。しかし今回は一発勝負となり、5月27日(土)の15時10分から行われる。代々木第一体育館で大々的な演出を行ない、フジテレビが地上波で中継するという晴れ舞台を作るため、そうせざるを得なかったのだろう。

 またどんなトーナメントも決勝は必ず「ファイナル」に行われるが、今回はB1・B2入れ替え戦が28日(日)と決勝戦の後に来る。これにはどうやら”競馬中継枠を動かせない”というテレビ局側の事情が絡んでいたようだ。様々な条件の中からベストの選択を採る難しさは理解できるし、Bリーグはまだ様々な部分で妥協が必要なのだろう。

 振り返るとJリーグも草創期にはVゴール方式の延長戦やPK戦、日替わり背番号など、今思えばかなり不思議な仕組みで運営されていた。Bリーグもこの国に根付いていけば妥協が不要となり、オーソドックスな制度に切り替わっていくはずだ。


大島和人

1976年に神奈川県で出生。育ちは埼玉で、東京都町田市在住。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れた。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経たものの、2010年から再びスポーツの世界に戻ってライター活動を開始。バスケットボールやサッカー、野球、ラグビーなどの現場に足を運び、取材は年300試合を超える。日本をアメリカ、スペイン、ブラジルのような“球技大国”にすることが一生の夢で、球技ライターを自称している。