プレーオフ準決勝を連勝で制した西宮ストークス、『先走り』のトラブルも収めてB1昇格一番乗り&決勝進出!
ゴール下を支配し、高い位置からの守備が機能 B1昇格の一番手は果たしてどこか――。B2からの昇格枠は最少2枠、最大3枠となっており、決勝に進出したチームは自動的に昇格が決まる。B2プレーオフ準決勝は2戦先取方式。1勝1敗で決着がつかなかった場合は、第2戦終了の20分後から5分ハーフの延長時限を『第3戦』として行うレギュレーションだ。 西宮ストークス(中地区王者)と群馬クレインサンダーズ(東地区王者)の対決は、西宮が78-69で初戦を取り、昨夜の2戦目を迎えていた。 B2は外国籍選手のオン・ザ・コート数が通年で「1-2-1-2」と定められており、この試合も同じ運用だった。群馬は初戦でベンチから外れていたマーカス・カズンが第2戦はベンチ入り。しかし群馬は実質的に外国籍選手が1人少ない状態だった。 平岡富士貴ヘッドコーチはこう明かす。「試合前にベンチの後ろで見ていることが悔しい、どういう状態であっても力になりたいと言ってくれたので今日はベンチ入りをさせた。出られる状態ではなかったし、来週も厳しいと思う」 西宮はオープニングシュートこそ群馬に許したものの、そこからいきなり9-0のランを見せた。第1クォーター残り8分17秒に谷直樹が3ポイントシュートを沈めると、スターター陣が満遍なくショットを沈めていく。 それ以上に強烈だったのがディフェンスだ。216センチのオーストラリア人センター、ジョーダン・ヴァンデンバーグはゴール下の支配力が圧巻だった。彼が一度ベンチに下がる第1クォーター残り4分0秒までの6分間に群馬へ許した得点はわずか2。彼のディフェンス、特にボックスアウトでの貢献があったからだろう。 また西宮の高い位置からプレッシャーを掛ける守備も奏功していた。天日謙作コーチは狙いをこう明かす。 「小淵(雅)くんはすごくピック&ロールが上手。でも彼が良いプレーをしている試合のビデオを見ると、彼がプレーをしたいところまでディフェンスが自動的に下がっている。リアクションでなくアクションをするということで、ディフェンスをとにかく上げろとアプローチした」 梁川「誰か一人抜けたからってチームが悪くはならない」 群馬が17-8とリードして迎えた第2クォーターは、一転して撃ち合いになる。西宮はドゥレイロン・バーンズ、群馬はトーマス・ケネディがボールハンドラーになる場面が多く、ピック&ロールからズレを作れるようになっていた。群馬はこの10分間で23得点を決め、特に第2クォーターの出足は流れをつかみかけていた。 しかし勝負どころで相手のランを食い止めたのが梁川禎浩。16-22まで詰められた残り7分38秒には3ポイントシュートを決めて突き放し、その直後にも2ポイントを成功。前半は11得点でポイントリーダーとなっていた。 第2クォーター残り1分29秒にはヴァンデンバーグ、ケネディがもみ合いとなり、両者ともにアンスポーツマンライクファウルを取られる場面もあった、しかし大事にはならず、西宮が40-31とリードしてハーフタイムを迎える。 西宮は第3クォーターの入りで再び群馬を突き放す。9分5秒には速攻から石塚裕也が決めると、残り8分25秒にはヴァンデンバーグが豪快なアリウープ。相次ぐ「弾みのつく取り方」で、46-32とリードを広げる。 しかし20分強の出場で9得点と活躍していた谷のファウルがかさみ、彼は第3クォーター残り5分1秒で早くもファウルアウト。西宮にとっては試練だったが、梁川は「長いシーズンを戦ってきて、誰か一人抜けたからってチームが悪くなるという状況にはならないように全員で作ってきた」と胸を張る。西宮が53-43と10点のリードを保って試合は第4クォーターへ。 まずは昇格決定、島根と熊本の勝者とB2王者を争う 群馬は外国籍選手のプレータイムが伸び、特にオフェンス面の負担が大きくなっていた。ケネディはこの試合、2ポイントシュートのスタッツが「15分の5」となっている。積極的に打ってはいたものの、ヴァンデンバーグやラリー・オーウェンスの高さもあり、タフショットを強いられていた。しかしビハインドを負った中で、彼らは強引にでも仕掛けざるを得なかった。 第4クォーターの西宮は、梁川が3ポイントシュート2本を含む8得点と引き続いて得点を量産。その貢献はオフェンスに留まらず、天日コーチもこう称賛する。「ヤン(梁川)は1番と2番、3番といろいろやらないといけない仕事をしている。非常にIQが高くて僕らの武器になっているんですけど……2日間あそこまでやってくれるとは僕も思っていなかった」 最終クォーターは13-13とイーブン。西宮が危なげなく試合を締めた。1702名のブースターのボルテージは最高潮。『残り4秒1』の山場では演出担当者が興奮のあまり、24秒オーバータイムのブザーを「試合終了」と勘違いして祝福のテープをコートに散らしてしまう『先走り』もあったが、ここはチームスタッフ、モッパー、ストークスチアリーダーと総出のコート清掃で事なきを得る。 西宮は70-60で群馬を下して2連勝。5分ハーフの延長時限を待たず、B2プレーオフ決勝進出とB1昇格を決めている。 群馬はカズンの負傷もあり厳しい状況だが、望みが絶たれたわけではない。20日の3位決定戦、28日のB1・B2入れ替え戦で連勝すればこちらも昇格が決まることになる。
文=大島和人 写真=B.LEAGUE