『天国と地獄』を分ける残留プレーオフ、横浜ビー・コルセアーズが気持ちのこもった戦いで広島ドラゴンフライズを下す
重い立ち上がり、インサイドを制した横浜がリード Bリーグ初年度のラストゲーム、横浜ビー・コルセアーズと広島ドラゴンフライズの入れ替え戦が行われた。昨日、栃木ブレックスが初優勝を決めた代々木第一体育館が、『天国と地獄』を分ける一戦の舞台に。懸かるものの重みがプレッシャーとなり、両チームともに重い立ち上がりとなった。 広島は川村卓也と細谷将司のアウトサイドを警戒。特に川村には徹底した守備でシュートチャンスを与えない。しかし第1クォーターは広島のオン・ザ・コート「1」に対し、横浜はオン・ザ・コート「2」で、インサイドの合わせで失点がかさむ。一方、オフェンスでは形を作るもののシュートタッチが悪くて得点が伸びない。広島はスローテンポにこそ持ち込んだものの、8-19と2桁のビハインドを背負い第1クォーターを終えた。 横浜の尺野将太ヘッドコーチからすると、これは狙い通りの展開だった。B2はオン・ザ・コートが「1-2-1-2」の固定ルール。この大一番で急に変えてくることはないと読み、出だしにオン・ザ・コートのアドバンテージを生かしてインサイドを攻める狙いだった。「B1とかB2とか関係なく、強いチームとやるということで、『シーズンで一番良い立ち上がりにしよう』と選手を送り出しました」と尺野ヘッドコーチは語る。 また、広島はエースのコナー・ラマートがインサイドでジェイソン・ウォッシュバーン、ジェフリー・パーマーを相手に苦戦。出だしからシュートタッチが悪く、マッチアップで劣勢を強いられてリズムを崩し、終盤に持ち直したものの試合を通じて11得点と不発に終わった。 第2クォーター、今度は広島がオン・ザ・コート数でアドバンテージを得るところだが、ここで横浜はファイ・パプ月瑠が粘りのプレーでアドバンテージを取らせない。ここも尺野ヘッドコーチの狙い通りで、30-26と横浜がリードして前半を折り返す。 ウォッシュバーンが27得点、戦犯から英雄へ 第3クォーター、パーマーがコナーをマッチアップで苦しめ、ファウルトラブルでベンチに追いやる。コナーに代わりアジーズ・エンダイが入ると広島のオフェンスが動き始めるが、その代償としてディフェンスが緩み、それまで横浜が出せなかった速攻からイージーシュートのチャンスが連発して出るように。残り5分29秒、リバウンドからのファストブレイクで竹田謙がレイアップを沈めて40-30と差を2桁に広げた。 広島はここでタイムアウトを取るが、流れはさらに悪くなってしまう。ミドルシュートを早打ちするも決まらず、リバウンドから走られて次々と失点。33-51と一気に突き放され、残り2分13秒で再びタイムアウトを取る羽目になった。 横浜のキャプテン、山田謙治が「去年もNBLでやっていた力のあるチーム。乗せてはいけないと思った」と振り返るように、横浜は最後まで気を緩めることなくプレー。その山田は攻守にエネルギッシュに動き回り、第4クォーター残り3分16秒にファウルアウトになったが、この時点で64-45と勝敗はほぼ決していた。 結果、74-53で横浜が勝利。B1残留を勝ち取った。 佐古ヘッドコーチは「選手のポテンシャルを引き出してあげられなかった」と悔しがる。敗因を「ゴール下でのタフなシュートの確率。ゴール下になかなか入っていけなかった。これは技術より気持ちの部分で、試合に飲まれてしまった面もあった」と語る。 逆に、ゴール下にガンガン攻め込んだのがウォッシュバーンだ。ゲームハイの27得点を記録して勝利の立役者になった。シーズン後半、ケガで長期離脱している間にチーム成績が急降下。この日まで残留を懸けて戦うことになった『戦犯』であるウォッシュバーンが、「チームに迷惑をかけたという思いがあった。パーマーもパプが30分以上プレーするような状況を作ってしまった」と、気持ちのこもったプレーで結果を出した。 昨年9月22日に始まったBリーグの初年度もこの試合をもって終了。長いシーズンの最後、喜びで締めくくったのは横浜だった。
文=鈴木健一郎 写真=高村初美、B.LEAGUE