文=池田敏明

驚きの引退を各メディアが大々的に報道

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 4月に引退を表明したフィギアスケートの浅田真央に続き、また一人、偉大な女性アスリートが競技生活に別れを告げることとなった。5月26日(金)、プロゴルファーの宮里藍が、2017年限りでの現役引退を表明した。

 31歳の若さで競技から退くことを決意した宮里。引退の一報はテレビで速報が流れただけでなく、各メディアも大々的に取り上げた。

ゴルフ界に衝撃が走った。米ツアー通算9勝で世界ランク1位に立ったこともある女子ゴルフの第一人者が、競技を退く決断を下した。今季は米ツアーを主戦場にしながら、国内ツアーには3試合に出場。今月19日から3日間行われた「中京テレビ・ブリヂストンレディス」では通算11アンダーで6位に入っていた。
宮里藍が電撃引退 米ツアー通算9勝の日本女子ゴルフ界第一人者 - ゴルフ - SANSPO.COM(サンスポ)
発表されたリリースには「プロゴルファーである宮里藍がこのたび2017年シーズンの終了をもって、ツアー現役生活を引退することとなりました。来る5月29日、報道各位および全国のゴルフファンの皆様に向けて宮里藍本人から、この決断に至った経緯や本人の心境などを表明させて頂きます。2003年のプロ転向以来、日米での計14年余りにわたる選手生活の間、ゴルフ関係の皆様、報道関係の皆様をはじめ、応援していただいている全国のファンの皆様の支えによりゴルフを続けて参りました感謝の意と、引退のご報告を当日は、宮里藍本人の言葉でお伝えする所存です」と記されている。
宮里藍 今季限りでの引退を発表…29日に会見― スポニチ Sponichi Annex スポーツ

 宮里は3人兄妹で、2人の兄、聖志と優作もプロゴルファー。国内通算15勝、アメリカ通算9勝を挙げ、明るく真摯なキャラクターで女子プロゴルフ界を牽引してきた人気者の引退表明に、兄たちもコメントを求められた。

前日、今季限りでの引退を明らかにした宮里藍の兄・優作(36)=フリー=がスタート前、会見に臨んだ。 引退の意向を聞いたのは今年の正月ということで「『えっ』と思ったけど『そうか』とも。彼女は解放された感じがあって、明るかった」とその時の模様を説明した。
宮里藍の引退、兄・優作は「彼女は解放された感じ」自身は「80歳まで頑張る」/ゴルフ/デイリースポーツ online

 また、『NHK NEWS WEB』は日本女子プロゴルフ協会の小林浩美会長や樋口久子相談役、東北高校の後輩である有村智恵らのコメントを紹介。みな一様に驚きを表しながら、最前線で戦い続けてきた宮里へのねぎらいの言葉を投げかけている。

日本女子プロゴルフ協会の小林浩美会長は「まだ若いので、引退と聞いて本当に驚いた。悩みに悩んだ末の決断だったのだろうと思う。彼女たちの世代は幼い頃からキャリアを積む時代になったので、『本当にお疲れ様。まずはゆっくり休んでください』と伝えたい」と話しました。
女子ゴルフ 宮里藍選手引退へ | NHKニュース

引退理由は「モチベーションの維持が難しくなった」こと

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 5月29日(月)には、東京都内のホテルで記者会見が行われた。詰めかけた報道陣の多さからも、注目度や関心の高さがうかがえた。

 宮里は引退の理由について「モチベーション維持が難しくなったこと」を挙げた。

「モチベーションの維持が難しくなった。それを感じたのは4、5年前からです。自分が望んでいる形、求めている、理想としている姿はそこにはなかったので、こういう結論になりました」

 宮里は2010年に世界ランキング1位になり、そこから数年間はキャリアのピークを迎えたが、2012年にはメジャータイトルを獲得できず、そこから葛藤の日々を送ることになったという。

「2012年のシーズンが終わった後、ピークを迎えていながらメジャータイトルを獲れなかったことに葛藤を覚えるようになりました。自信があるのに勝てないということで、次にどうすればいいのかと立ち止まって考えたんですけど、自分を見失っていきました」

 一部報道では結婚の可能性も取り沙汰されたが、宮里自身はその件についてきっぱりと否定した。また、引退後の第二の人生についても未定であるという。

「今後、何をするのかも具体的には決まっていないのが現状です。次にどうするのかを確約させないと引退できないんじゃないかと悩んだんですが、引退後に一度ゆっくりして、何ができるかを考えていきたいです」

 2003年にプロ転向してからの14年間については、「内容の濃い時間を過ごした」と振り返っている。

「ゴルフは私の人生において大切なもの。プロになってから14年間、内容の濃い時間を過ごしました。多くの人と知り合い、繋がりを持ち、人生が豊かになりました。感謝の気持ちでいっぱいです」

 6月8日に開幕する国内女子ツアー「サントリーレディースオープン」への出場が決まっている。宮里は「優勝を目指します」と宣言した。31歳での引退という彼女の決断に敬意を表しつつ、最後まで戦い抜く姿を見守りたい。


池田敏明

大学院でインカ帝国史を専攻していたが、”師匠” の敷いたレールに果てしない魅力を感じ転身。専門誌で編集を務めた後にフリーランスとなり、ライター、エディター、スベイ ン語の通訳&翻訳家、カメラマンと幅広くこなす。