欲につまずいた松山英樹 それでも「あきらめる位置ではない」
◇海外メジャー第2戦◇全米オープン 3日目(17日)◇エリンヒルズ(ウィスコンシン州)◇7845yd(パー72) リーダーボードのToday欄に、「-5」や「-7」、果ては「-9」まで並んだ大会3日目。首位と2打差で出た松山英樹の1アンダー「71」は迫力に欠けた。通算6アンダーの14位。その差は6打に広がった。 朝の練習場から不穏だった。ショットは右へ右へと曲がり、パッティンググリーンでは短いパットもするりとカップを避けていく。「(パットの感触は)最初から悪かった。ショットを立て直せないと、苦しいラウンドになるのは分かっていた」と覚悟を決めてティオフした。 ショット後のリアクションを見ても、クラブから手を離したり、うなだれたり、あげくはクラブを手から落としたりと、思い通りに打てていないことは明白だった。前半、フェアウェイをとらえたのは7回中4回だけ。それでも、2番、7番でチャンスを生かし、2バーディで折り返した。 10番の3パットでこの日初めてのボギーとしたが、「いずれ、ああいうミスが来るだろうと思っていた」と予感はあった。後半に入り、ショットは復調気配を見せたが、逆にグリーン上でため息の続く展開。11番、12番と続けて1ピンほどのチャンスを逃すと、13番も同じような距離のパーパットを決めきれない。14番(パー5)は2打でグリーン手前のバンカーまで運んでバーディ奪取。もう1つ…その気持ちがミスを誘った。 ムービングデーの選手の心理を試すように、ティグラウンドが前に出された15番。288ydに設定されたパー4は、松山レベルの選手であれば1打で届く距離。3Wを振り抜いた松山の球は、グリーンエッジの手前1、2ydにキャリーしたが、砲台となった花道を転がり落ちて、右手前の深いバンカーへと吸い込まれた。 「ショットが良くなってきていたし、簡単に『3』が獲れる方法がないかなと考えた。あとあと考えれば、レイアップの方がリスクは絶対少なかったし、やっぱりそういう欲が…。昨日までだったらレイアップしていたという感じはある」と、この日最もやさしいホールとなった15番で、罠にはまって『5』としたマネジメントを反省した。 開眼したかに思われたパッティングは、「1日1日、フィーリングは変わるものだと思うけど、ちょっと変わり過ぎている。不安な部分がそのままカップから遠ざかって行っている結果に表れているのかなと思います」と、口を結ぶ。 残りは18ホール。「だいぶ(首位との差が)開いてしまったけど、ビッグスコアを出せれば、まだまだあきらめる位置ではない。そのプレーができなかったら、下位で終わるというだけです」と、心境に淀みはない。果敢にピンを攻めるだけ――。グリーンを軟らかくする雨粒が、夕闇迫るコースに落ちてきた。(ウィスコンシン州エリン/今岡涼太)
最終18番で深いラフから2打目を打つ松山英樹。ここからバーディフィニッシュへとつなげた パットが入らない…。惜しいパットもありながら、この日1アンダーにとどまった松山英樹