「優勝するには『スーパーチーム』が必要」という流れに歯止めをかけるサラリーキャップ減額案に、頭を抱える各クラブ
ロケッツは今夏クリス・ポール争奪戦に名乗りを挙げる!? 『スーパーチーム』は、NBAの新たなトレンドとして成立しつつある。巨額の放映権契約によりNBAの収入は増加し、リーグが定めるチーム年俸総額、サラリーキャップも大幅に増額されるはずだった。しかし、ウォリアーズが今年のプレーオフでファイナルまで12連勝、キャバリアーズが同様に12勝1敗という圧倒的な力の差を見せつけた影響か、その流れは変わろうとしている。 『ESPN』は、来シーズンのチーム総年俸にあたるサラリーキャップが、当初予想された1億200万ドル(約133億円)から9900万ドル(約110億円)程度に減額となるとの予測を報じた。 NBAコミッショナーのアダム・シルバーは、ウォリアーズのチーム作りを問題視してはいない。むしろ、選手を育てた上でケビン・デュラントを『最後のピース』として加える編成の力を称えてさえいる。だが、ウォリアーズとキャバリアーズの2強体制により、2017年のプレーオフ・シリーズが短く終わったことが、来シーズンのサラリーキャップに影響を与えたとも言われている。 実際、プレーオフのファイナルが5試合で終わり、カンファレンス決勝も最大14試合のところ9試合しか開催されなかった。第7戦までもつれたのはクリッパーズvsジャズ、セルティックスvsウィザーズだけ。試合開催による利益を取りこぼし、最も熱い展開が期待されるプレーオフの規模が縮小したことはNBAにとって好ましくない事態だ。 来シーズンのサラリーキャップが発表される6月30日まで正確な金額は分からないが、本当にサラリーキャップが減額となれば、チーム編成を考え直さなければならない球団も出てくるだろう。 たとえば、昨シーズン、西カンファレンスで唯一3ポイントシュート成功数で982本のウォリアーズを上回る1181本を記録したロケッツ。ジェームズ・ハーデンをポイントガードに固定し、その周りをエリック・ゴードン、ライアン・アンダーソン、そしてシーズン途中にレイカーズとのトレードで獲得したルー・ウィリアムズといった凄腕シューターで固め、攻撃が最大の防御というエキサイティングなプレーで脚光を浴びた。 そのロケッツは、ウォリアーズと対戦する機会を得る前に西カンファレンス準決勝でスパーズに敗退。ハーデン中心のチームでもカンファレンス準決勝の壁を破れない以上、もう一人マックス契約レベルのスター選手が必要という考えに行き着く。これも優勝するには『スーパーチーム』結成が条件と言われる現代のNBAでは致し方ないのかもしれない。 『ESPN』は、ロケッツが今夏の獲得候補に、クリス・ポール、ブレイク・グリフィン、ポール・ミルサップ、カイル・ラウリーを挙げていると伝えた。 4選手はそれぞれプレーヤーオプションを行使してフリーエージェントになることが濃厚。それぞれ特徴が異なるものの、ロケッツが優先的に獲得を検討しているのが、クリス・ポールと見られている。ただ、ポールがロケッツへの移籍を望んだとしても、マックス契約締結に必要な約3000万ドル(約33億円)の捻出は簡単ではない。 現時点で放出が噂されているのは、ルー・ウィリアムズ、パトリック・ビバリー、アンダーソンの3選手。3選手のうち来シーズン最も高額な年俸を受け取るのはアンダーソンで、1950万ドル(約21億円)。ウィリアムズとビバリーの年俸を合わせれば1200万ドル(約13億円)ほどになるため、目標の3000万ドルに届く計算だ。 それでも、昨シーズンにキャリアハイの3ポイントシュート成功率(40.3%)を記録したアンダーソン、安定感のあるウィリアムズに代わるシューターを見つけるのも簡単ではない。また、スタッツには表れない『汚れ仕事』を一手に引き受けるビバリーはプレーオフで真価を発揮したばかり。彼らを失う痛手は決して小さくない。 ここでもう一つ大きな障害になるのが、先述のサラリーキャップ減額だ。現時点でロケッツの2017-18シーズンの総年俸は9000万ドル(約100億円)を超えているため、GMのダリル・モーリーは頭を抱えているだろう。 ウォリアーズにとってもまた、フリーエージェントになるステフィン・カリー、ケビン・デュラント、アンドレ・イグダーラらとの契約に影響が生じる可能性はある。 今年のプレーオフを通じて、圧倒的な力の差がシリーズをつまらなくしている、という意見も聞かれた。強豪チームが今オフに取る行動により、再び『スーパーチーム』議論が熱を帯びることになりそうだ。
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