高かった世界の壁、U-19日本代表は強豪カナダに先行するも悔しい100失点負け
最高の立ち上がりを見せるもカナダの逆襲を浴びる U-19ワールドカップ、日本代表のグループリーグ3戦目の相手は優勝候補の一角と見られるカナダ。それでも日本は初戦のスペイン戦と同様、格上に対しても臆することなく立ち向かっていく。西田優大の3ポイントシュートで先制した日本は、直後に八村塁もゴール下の得点を決める上々の立ち上がり。 ディフェンスではサイズに勝るカナダを相手に、ゴール下を固めて攻めの形を作らせない。互いに3ポイントシュートを打ちあう展開が続いた後、日本は西田がドライブからのレイアップを沈め、重冨周希から八村へとつなぐ速攻、ドライブで切り込んだ重冨のレイアップが外れたところを八村がタップで押し込むなど、攻めのバリエーションを見せてリードを広げる。最初の5分強で19-8と日本がリードを2桁に広げたところで、カナダはたまらずタイムアウトを要求した。 ここでカナダは強豪らしさを見せる。タイムアウト一発で攻守の課題をきっちりと修正。本来の力を発揮し始めた。日本もメンバーチェンジを行いつつリングへアタックする姿勢を保ち、チーム全員でオフェンスリバウンドを狙う果敢な攻めを見せるが、カナダはゾーンディフェンスに切り替えて日本のドライブを封じる。インサイドに侵入できなくなると日本は攻め手を失ってしまい、常にショットクロックを気にする状況に。タイムアウト後の4分45秒の間に2-12と猛追を浴び、21-20と辛うじて1点リードで第1クォーターを終えた。 そして第2クォーター、日本はセカンドユニットの時間帯に大苦戦。八村はもちろん、もう一人の得点源である西田、プレッシャーを受けながらボールを運ぶ重冨がベンチに下がった時も攻守のパフォーマンスに響いた。ブロックショットからそのまま走られたり、外のパスを奪われ走られたりとミスによる失点も相次ぎ日本はリズムを崩していく。 ゾーンを攻略できず、3ポイントシュートも決まらず 25-29と突き放されかかった残り6分19秒、日本はタイムアウトで立て直しを図るが、先発メンバーを戻してもカナダの勢いを止められない。試合序盤にはやられなかった、インサイドでの合わせによるイージーシュートを連発され、なおかつタフショットも次々と決められて点差が広がり始める。 インサイドを攻められない日本は3ポイントシュートに活路を見いだそうとするが、出足の鋭さに加え長い腕を生かしたカナダのチェックで精度を狂わされる。いつしかオフェンスリバウンドも取れなくなり、第2クォーターは11-27の大差。前半を32-47で折り返した。 後半、ある程度は立て直すも、目を覚ましたカナダを驚かせるパフォーマンスは見せられず。逆にカナダの個人技と組織力が際立つことになった。NCAAアイオワ州立大のリンデル・ウィギントンはポイントガードながら強引に押し切る攻めを連発し、八村と並ぶゲームハイの21得点。RJバレートは17歳になったばかりの『飛び級』のガードでありながら、ウィギントン同様に強引に仕掛けるだけでなく、そこからの変化でインサイドの合わせを多用し、20得点に加えゲームハイの6アシストを記録。またNCAAオレゴン大のフォワード、アル・キカブは198cmと八村やシェーファー・アヴィ幸樹より小柄ながら積極的にボールに絡み、ゲームハイの12リバウンドを記録。彼らは八村と同じか、それを上回る個人能力を見せ付けた。 終盤に杉本が奮闘するも流れを呼び込むには至らず 51-77と大差が付いた最終クォーター、杉本天昇に当たりが出て、わずかな時間に8得点2アシストと大暴れ。それでも点差を20に縮めるのがやっとで、明日のベスト16を見据えてプレータイムを調整したこともあり追い上げる力が足りず、最後は100失点で敗れた。高さと強さに勝る相手にリバウンドは40-53とむしろ善戦。逆にファストブレイクポイントで13-26、アシスト数で18-24と、技術と組織力に差が出た結果と言えるだろう。 ヘッドコーチのトーステン・ロイブルは、「相手の運動能力がすごくて、もうちょっとディフェンスが機能すればと思ったが……」と試合を振り返るも、「八村のプレータイムを25分に抑えた」と決勝トーナメントを見据えた選手起用だったことを明かす。 日本はグループCを3位で通過。明日、グループDの2位チームであるイタリアとベスト16で対戦する。この大会では過去、1999年には14位、1991年には16位と結果を出せていない日本。明日の試合に勝てば新たな歴史を作ることになる。 早々に勝敗が決したこともあり、八村が25分のプレータイム。他の主力もそれ以下しかプレーしていない。「イタリア戦が勝負、勝てばベスト8」と指揮官ロイブルは言う。「W杯に出ることもセンセーショナルだが、明日はそれ以上の奇跡を起こしたい」 イタリア戦は今日20時45分の試合開始となる。
文=鈴木健一郎 取材・写真=小永吉陽子