善戦で満足しては先がない、絶対的エース八村を擁するU-19日本代表の課題と期待
U-19男子ワールドカップ、トーステン・ロイブル率いる日本代表は昨日、ベスト8進出をかけてイタリアと対戦した。試合終盤に八村塁の劇的な2本の3ポイントシュートで同点に追い付くも、ラスト2秒でイタリアに突き放され、55-57で敗れた。 課題も収穫も多すぎる試合で、「大健闘の末の惜敗」という安易な言葉では片付けられない。ただ、U-19イタリア代表のパフォーマンスは「世界の強豪」と呼ぶには物足りないもので、決して勝てない相手ではなかった。善戦しただけで満足しては先がない。勝たなければいけない試合だったのだ。 運動量を生かした堅守は諸刃の剣、終盤の失速を招く 日本のディフェンスは機能していた。ヘッドコーチのロイブルはこう語る。「リバウンドも良かったし、イタリアが57点だったことは良いディフェンスだった。昔だったらヨーロッパの相手だと45点くらい離れて、いつもハイスコアゲームだった。トップのチームをロースコアに抑えることが必要で、それ以外チャンスはない」 つまり、ロースコアの展開は日本の狙い通りだったということ。序盤からインサイドへの素早い寄せでプレッシャーをかけ、3連続でトラベリングを誘発。しっかりと足をつかい、なおかつチームで連動する守備は、体格の不利を十分にカバーするものだった。その後も積極的にダブルチームを仕掛けてシュートの手元を狂わせる。前半、イタリアの得点はわずか21点。イタリアのシュートタッチが悪ったこともあるが、日本の守備は間違いなく機能していた。 ところが、後半から徐々にリバウンドを取られる場面が増えていく。タイムシェアをしていても、前半から常にダブルチームを仕掛けることは諸刃の剣となり、ボディブローのように選手たちの体力を削っていった。 特に最終クォーターでは足が止まり、ジャンプ力も低下。リバウンドに跳ばなければいけないと分かっていてもボールウォッチャーになる場面が多く見られ、ペイント内に飛び込まれた。善戦はしたもののオフェンスリバウンドでは10-21と大きな差がついた。 この点についてロイブルはこう語る。「イタリアをハーフタイムで21点に抑えたのは、相当なエネルギーを使ったと思います。それが後に足に来た。全体的に見れば日本のバスケでも対応できるというメッセージになった」 現時点ではこの戦い方しかできなかったということ。ただし、先には可能性が見える。それは選手個々のスタミナを上げることより、チームの底上げになるだろう。例えば八村は得点だけでなく守備とリバウンドでも大いに奮闘したが、シェーファー・アヴィ幸樹のビッグマン2人体制では、30分近くプレーする八村の負担を軽減できない。ここにもう1人、ゴール下の守備をパートタイムでも任せられる戦力が加われば、状況は大きく改善されるはずだ。 勝負どころでのセットオフェンスの遂行力に差 オフェンスはどうだろうか。大黒柱の八村塁はオフェンスでも存在感を放ち、1対1でも互角以上に渡り合い、日本の大きなアドバンテージとなった。また榎本新作の切れ味鋭いドライブ、アグレッシブなリングへのアタックはイタリア相手に効果を発揮。オフェンスが停滞した時間帯を救う貴重な働きを見せた。個の力が世界の舞台でも十分に発揮されたことは特筆に値する。 一方、評価すべき点もあり、課題でもあったのがガード陣のパフォーマンスだ。高い運動能力と手足の長さを生かしたイタリアディフェンスに対してのキープ力は評価に値する。だが1試合を通じて22のターンオーバーは多すぎた(イタリアは13)。常にプレッシャーをかけられたことで、ギャンブル的なパスが多くなったこともあるが、イージーなミスも目立った。もちろんこれはパスの出し手だけではなく、受け手にも問題がある。点差の離れないロースコアの展開が40分続く中、集中を切らしてしまったのは残念だった。 スタミナ切れにより取れなくなったリバウンド、そしてイージーミスからのターンオーバーの多さ。この2つが日本の抱える課題と言える。日本の56本のシュート数に対し、イタリアは78本と攻撃回数に22もの差が見られた。ポゼッションゲームにおいて、これだけ差が開いたのでは苦しい。 イタリアのシュート精度が上がらないことに助けられ、終盤までもつれる展開になったが、そこでも大きな課題が出た。残り27秒、49-52の場面での日本。そして残り2.4秒、55-55に追い付かれてのイタリア。タイムアウトを取って準備したセットオフェンスの遂行力の差が、勝敗を分けたと言っても過言ではない。 これらの課題をしっかりと受け止め、敗戦を糧に成長することができるか。ベスト8進出のチャンスを逃した敗戦は大きな痛手だが、日本はこれをターニングポイントに変えなければならない。今日の休養日を挟み、明日はリトアニアに敗れた韓国が相手。9~16位順位決定戦に回ることにはなったが、ここも貴重な成長の機会ととらえ、良いパフォーマンスを見せてもらいたい。
文=丸山素行 写真=FIBA.com