激戦の東地区に旋風を巻き起こすと意気込むサンロッカーズ渋谷、新指揮官は「自分にプレッシャーをかけて開幕戦に臨む」
「ディフェンスからリズムを作れている時は強い」 9月17日、サンロッカーズ渋谷が練習拠点としている日立台体育館で公開練習を実施。全11選手が参加して、熱の持ったトレーニングを行った。また、終了後には見学に訪れたファンとのサイン会を行い、交流を楽しんでもいる。 今シーズンからヘッドコーチを務める勝久ジェフリーは、アーリーカップ、その後の熊本ヴォルターズ、滋賀レイクスターズとのプレシーズンと実戦を重ねた中でのチーム状況をこう見ている。「収穫は、ディフェンスからリズムを作れている時は強いこと。でも逆を言うと、それができていない時、オフェンスがうまくいっていない時にどうリズムを取り戻すのかについてはまだまだです」 指揮官が語るように、今シーズンのSR渋谷は守備においても受け身にならず、自ら仕掛けていくスタイルだ。例えばアーリーカップでは、伊藤駿や山内盛久のガード陣が、前から積極的に当たり相手のポイントガードにプレッシャーをかけた。そしてガード陣の背後にはディフェンスを武器にNBAレイカーズで4シーズンプレーしたロバート・サクレ、昨季のブロック王であるジョシュ・ハレルソンと2人のビッグマンがゴール下を守る。また、フォワードには昨季リーグのスティール王の広瀬健太がいる。このタレントが示すように、ディフェンス力はリーグでも屈指の力を持つ。 ただ、勝久はアシスタントからの昇格とは言え新しいヘッドコーチであり、外国籍を含め5人の新加入選手などメンバーも大きく変わった。それ故、チームとしてのコンビネーションは発展途上であり、流れの悪い時間帯にいかにチームとしてのプレーで立て直すかはこれからの大きな課題となるだろう。 「もっといろいろな組み合わせを生み出していきたい」 今回の公開練習でも確認できたが、勝久ヘッドコーチの指導は細かい部分にまでこだわる丁寧さに定評がある。しかし、本人は「いろいろと考える中、コーチとしてはもっとシンプルにするべき。もっとオフェンス、ディフェンスともシンプルに内容を濃くしていかなければ」と、こちらも発展途上であるようだ。 その一方で「選手起用のバリエーションはもっといろいろと試したい」と言う。「これまで同じパターンのローテーションで選手交代を行っていることが多く、もっといろいろな組み合わせを生み出していきたい。誰かがファウルトラブルになった時や、対戦相手によってアジャストが必要といった部分で、まだ試せていない部分もあります」 今シーズンのサンロッカーズは8月上旬に韓国で開催された東アジアチャンピオンズカップから大会参加。「プロコーチとしての経験は短いですが、その中では一番長くプレシーズンを戦ってきたと思います」と指揮官が振り返るように、他のチームと比べても早い段階から実戦を重ねてきた。 だからこそ、新チーム始動からここまでについて「自分たちのあるべき姿には到達していないので危機感を覚えています」と語るとともに「いろいろと発見できるなど、今まで良い時間を過ごせてきたと思います」と、積み上げてきたものに手応えも得ている。 開幕に向け「新しいチームにとって始まりはとても大事」 リーグ開幕戦は琉球ゴールデンキングスとのアウェーゲーム。大型補強でリーグ全体で見ても注目を集める琉球との対戦となるが、「開幕戦はレギュラーシーズン全体で考えると60試合のうちの2試合。ただ、新しいチームで弾みをつけるためには2連勝したい」と勝久は語る。 もっとも、開幕へ向けての意気込みは十分だ。「プレッシャーは周りからくるものと、自分でかけるものとあります。そして新しいチームにとって始まりはとても大事なので、開幕からしっかり結果を残したいと自分で自分にプレッシャーをかけています」 予定調和は面白くなく、リーグがさらなる盛り上がりを見せるには下馬評を裏切るチームの出現が欠かせない。昨年の内容から苦戦を予想する声も少なくないSR渋谷だが、激戦の東地区においてダークホースとして旋風を巻き起こすべく断固たる決意を持った指揮官の下、虎視眈々と準備を進めている。
文・写真=鈴木栄一