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ベイスたんも、球場にいるすべての人々も。

小池選手を「選手」と呼べる、残されたわずかな時間をいつくしみながら、打席を見つめました。


1球目、高めのストレート。
小池選手は見逃します。

そして再びバットを構え、涙で真っ赤になったその目をマウンドに向けて。

1ボールナッシングからの、2球目。

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そこからは、すべてがスローモーションでした。


小池選手はゆっくりとベースを回りました。

何度も何度も駆け抜けたハマスタのダイヤモンドを、
何度も何度も涙をぬぐいながら。

その姿は、まるで叱られた子どものようで、
もしかしたら野球少年の頃、そんなことがあったかもしれなくて、
そんな昔のことも ぜんぶぜんぶ思い出しながら、
ベースを回ったのかもしれません……

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つよいだけじゃ、だめ。
やさしいだけでも、だめ。

夢をほんものにしてくれる、つよくてやさしい存在。
ひとはそれを「ヒーロー」と呼びます。



ベイスたん、小池選手の応援歌しってる?




「戦士が集う グランドで 打て豪快に 小池正晃」





ほら、夢が本当になった。

まぎれもなく小池選手は、最後の最後までベイスターズのヒーローでした。

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時間はとめられない。
だから、いつまでも拍手をしよう。

去りゆく背番号8の背中を、ちょっとだけ追い越せるように。


たくさんの人に惜しまれながら、小池正晃選手は今日引退します。

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カネシゲ タカシ

漫画家・コラムニスト。1975年生まれ、大阪府出身。 「週刊少年ジャンプ」にてデビュー。 現在は「週刊アサヒ芸能」や「スポーツナビ」に連載を持つほか、テレビ・ラジオ・トークイベントに出演するなど活動範囲を拡大中。 著書・共著に『みんなのプロ野球川柳』、『みんなの あるあるプロ野球』(ともに講談社)、『ベイスたんやよ!』(KADOKAWA)、『野球大喜利 ザ・レジェンド』(徳間書店)などがある。 元よしもと芸人。