ベイスたんも、球場にいるすべての人々も。
小池選手を「選手」と呼べる、残されたわずかな時間をいつくしみながら、打席を見つめました。
1球目、高めのストレート。
小池選手は見逃します。
そして再びバットを構え、涙で真っ赤になったその目をマウンドに向けて。
1ボールナッシングからの、2球目。
そこからは、すべてがスローモーションでした。
小池選手はゆっくりとベースを回りました。
何度も何度も駆け抜けたハマスタのダイヤモンドを、
何度も何度も涙をぬぐいながら。
その姿は、まるで叱られた子どものようで、
もしかしたら野球少年の頃、そんなことがあったかもしれなくて、
そんな昔のことも ぜんぶぜんぶ思い出しながら、
ベースを回ったのかもしれません……
つよいだけじゃ、だめ。
やさしいだけでも、だめ。
夢をほんものにしてくれる、つよくてやさしい存在。
ひとはそれを「ヒーロー」と呼びます。
ベイスたん、小池選手の応援歌しってる?
「戦士が集う グランドで 打て豪快に 小池正晃」
ほら、夢が本当になった。
まぎれもなく小池選手は、最後の最後までベイスターズのヒーローでした。
時間はとめられない。
だから、いつまでも拍手をしよう。
去りゆく背番号8の背中を、ちょっとだけ追い越せるように。
たくさんの人に惜しまれながら、小池正晃選手は今日引退します。