構成・文/キビタ キビオ 写真/下田直樹
キヨシの今季イチオシは横田慎太郎(阪神)だ!
──まずは、中畑さんの今季イチオシ選手から教えて下さい。
中畑 なんといっても横田慎太郎(阪神)がいいねえ。彼の潜在能力は将来のビジョンを感じさせるものがあるよ。キャンプでフリーバッティングを見たときに、いとも簡単にホームランを打っていて、「おいおい、あれは誰だ!?」と目を疑ったほどだった。それこそ、松井秀喜(元ヤンキース他)を越えるようなインパクト。足も速いから、「トリプルスリーどころかトリプルフォーも狙えるんじゃないか?」と、本気で思わせてくれる選手だよ。
──それほどのスケールですか! 俊足のアベレージタイプと思っていました。
中畑 今はまだ大きい当たりは打っていないからな。でも、試合で一発すごいホームランを打ったら急に変わるんじゃないかな。とにかく、監督が我慢して使い続けたくなる選手だよ。そう遠くない将来、結果を残してくれそうな気がしている。飛距離というのは教えて伸びるものではなくて、天性の部分が大きいからねえ。将来は必ずや日の丸を背負うことになると思うよ!
DeNAのドラ1左腕・今永は安定感があって三振も奪える

──古巣であるDeNAで気になる選手はいますか?
中畑 今年入った新人の今永(昇太)がいいと思う。ボールの切れ、コントロール、精神面……すべてにおいて、一軍のローテーションをきっちり守れるレベルにあるよな。ドラフト1位の名に恥じない、既にできあがったピッチャーだね。
──確かに、まとまっているイメージはあります。0-1で敗戦するなど勝ち運に恵まれず、4月23日現在未勝利ですが、新人ながら登板した試合すべてで、早期ノックアウトされることなくゲームメイクしています。先制されても簡単には崩れない。
中畑 それはつまり、自滅する要素が少ないからなんだ。それと、プロ初登板、初先発だった巨人戦(3月29日)でも、甘く入ったところを一発ガツンとやられはしたけど、7回で9三振も奪ったからね。三振がとれるのも大きな魅力。そういうピッチャーはピンチになっても安心して見ていられるから、監督としても我慢して引っ張ることができるよ。
──ちなみに彼は、駒澤大学出身ということで中畑さんの後輩でもあります。
中畑 そうよ。だから、シーズン前に焼肉をたくさん食べさせた! プロで活躍したら、逆におごってもらわないと(笑)。まあ、それは冗談だけど、力があるのは間違いないよ。
外国人では中日・ビシエドが断然いい!

──新たに来日してきた外国人選手で、目に留まった選手はいますか?
中畑 ビシエド(中日)。あれはキャンプで見たときからすごかった。若いし、パワーがあるし、軸がぶれなくてインコースも綺麗にさばける。久しぶりにいいバッターだと思ったよ。
──開幕戦から、タイムリーヒットや本塁打を次々と放つなど活躍し、現在も打率、本塁打、打点と、すべての部門でトップ争いをしています。
中畑 ケガさえしなければ、かなりの数字を残すだろうなあ。
──元々、メジャー通算66本塁打という実績の持ち主ですからね。編成部国際渉外担当を兼務していて、毎年、ドミニカ共和国へ渡っている森繁和コーチ(中日)が、見事に獲得を決めました。森コーチは中畑さんにとっては、大学時代の後輩で親交が深いです。
中畑 このオフ、多くの球団がビシエドを狙っていたけど、「たまたまウチだけが先に情報をキャッチできて、うまく立ち回れました」とモリシゲ(森コーチ)が言っていたよ。
──中日にとっては、まさにお手柄でしたね。
中畑 こういう外国人を獲ってきてほしかったなあ、オレも!(笑) まあ、ブランコ(現オリックス)やグリエルを獲ってもらったりはしたけどな。
パはオコエ(楽天)と「キヨシ流」の後継・松田(ソフトバンク)に期待!
──パ・リーグの注目選手は誰でしょうか。
中畑 将来性を踏まえてオコエ瑠偉(楽天)だね。この選手は“伸び率”がものすごく高い。自分に必要なものを見つける観察力、指導されたことや見たものを吸収する力、ほかにも先々成長していける要素がある。礼儀作法もしっかりしているし、野球に取り組む姿勢もいい。球界に新しい風を起こしてくれそうな雰囲気があるよ。
──キャンプ当初はバッティングで苦労していましたが、短期間で修正していました。
中畑 オープン戦に入る頃にはタイミングの取り方も変わってきて、下半身と上半身のバランスが安定した、“打てる雰囲気”になっていた。キャンプの頃とは別人だったよ。
──入団前から、強肩、俊足については、すでに一軍レベルと言われていました。
中畑 外野守備は楽天で一番うまいよ。それは、間違いないね。
──最初に話に出た横田と同様、近い将来楽しみな選手ですね。他にはいますか?
中畑 いま、ソフトバンクが群を抜いて強いと言われているけど、松田(宣浩)の存在が大きいよな。彼のムード作りは本当にうまい。あんな脳天気なやつがいたら、負けていても負けている空気にならないよ。オレも選手のときにそうだったから、共感するものがあるね。監督の立場から考えても、負けているときにワイワイやってくれる選手がチームにいてくれると、本当に助かるよ。
──スタンドに向かって「熱男ーー!!」と叫ぶシーンはすっかり定番になりました。
中畑 スタンドも盛り上がるしな! そういう野手がチームリーダーなら鬼に金棒だよ。
──中畑さんの現役時代を知っている人には、松田のプレースタイルが中畑さんの姿と重なって見えるところがあるのではないでしょうか。
中畑 だろ? きっと、本人もわかってくれているよ。だから、「今度サインくれよ」と言ってあるんだ(笑)。アイツはオレのプレーを直接は見たことないかもしれないけど、同じ空気というか、お互い感じるものがあると思うな。新しい選手にも期待しているけど、元々活躍しているなかから、松田のような熱いものを外に出してくれるような選手がもっとたくさん出てきて、12球団を盛り上げてくれることを大いに願っているよ。
中畑清
1954年、福島県生まれ。駒澤大学を経て1975年ドラフト3位で読売ジャイアンツに入団。「絶好調!」をトレードマークとするムードメーカーとして活躍し、安定した打率と勝負強い打撃を誇る三塁手、一塁手として長年主軸を務めた。引退後は解説者、コーチを務め、2012年には横浜DeNAベイスターズの監督に就任。低迷するチームの底上げを図り、2015年前半終了時にはセ・リーグ首位に立つなど奮戦。今季から解説者に復帰した。
キビタ キビオ
1971年、東京都生まれ。30歳を越えてから転職し、ライター&編集者として『野球小僧』(現『野球太郎』)の編集部員を長年勤め、選手のプレーをストップウオッチで計測して考察する「炎のストップウオッチャー」を連載。現在はフリーとして、雑誌の取材原稿から書籍構成、『球辞苑』(NHK-BS)ほかメディア出演など幅広く活動している。
中畑清
1954年、福島県生まれ。駒澤大学を経て1975年ドラフト3位で読売ジャイアンツに入団。「絶好調!」をトレードマークとするムードメーカーとして活躍し、安定した打率と勝負強い打撃を誇る三塁手、一塁手として長年主軸を務めた。引退後は解説者、コーチを務め、2012年には横浜DeNAベイスターズの監督に就任。低迷するチームの底上げを図り、2015年前半終了時にはセ・リーグ首位に立つなど奮戦。今季から解説者に復帰した。
キビタ キビオ
1971年、東京都生まれ。30歳を越えてから転職し、ライター&編集者として『野球小僧』(現『野球太郎』)の編集部員を長年勤め、選手のプレーをストップウオッチで計測して考察する「炎のストップウオッチャー」を連載。現在はフリーとして、雑誌の取材原稿から書籍構成、『球辞苑』(NHK-BS)ほかメディア出演など幅広く活動している。