DeNAにとって交流戦の負け越しは2018年以来7年ぶり。一昨年の交流戦初優勝をはじめ、昨年の日本シリーズでのソフトバンク撃破など、このところ対パ・リーグに関しては強さを発揮してきただけに、「苦しい戦いでした」と三浦大輔監督と唇をかんだ。
交流戦最後の2カードを前に、球団としても何とか“後押し”しようというムードがあった。今季、DeNAはシーズンの結果と連動した球界初の縦型連続ショートドラマを制作。「神様、おねがい」と題した作品をTikTok、YouTube、インスタグラムといったSNSで配信し、累計200万回以上の再生を記録している。物語は、死神に魂を狙われた主人公が「ベイスターズが優勝したら生き延びる」という取引をするところから始まる。さらに、6月16日には交流戦最後の6試合に勝ち越すか否かによって主人公の先輩の運命が変わるという新たな展開で注目を集めていたが、結果は2勝4敗。“ネタバレ”は避けるが、ファンにとって、いろいろな意味でやきもきしながら推移を見守る日々が続いている。
それはさておき、なぜDeNAは得意なはずの交流戦で勢いに乗れなかったのか。原因は明確、打線の低迷だ。交流戦のチーム打率.205は12球団ワースト。強打を誇るはずのチームがこれでは、さすがに勝てない。“貧打”は交流戦後も続いており、6月27日からの巨人3連戦は3試合連続で無得点。7月4日からの首位・阪神との3連戦では3試合で2得点。阪神とのゲーム差は交流戦後の3.5から9試合で8.5まで開き、土俵際に追い詰められた。阪神も交流戦で7連敗を喫するなど低空飛行が続いていただけに、直接対決でその“幸運”を生かせなかったのは大きな痛手となった。
攻撃陣の不振とともに、大きな誤算となっているのがトレバー・バウアーの不振だ。6月22日のロッテとの交流戦最終戦では2回もたず7失点。来日最短イニングでKOされた。同12日のオリックス戦(5回2/3、4失点)、同17日の西武戦(8回1/3、3失点)に続く3連敗。開幕からなかなか調子が上がらない中、同6日の日本ハム戦では1失点完投勝利を収め、いよいよエンジンがかかってきたと期待されただけに残念な失速ぶりとなった。交流戦登板4試合は12球団最多。中4~5日でフル回転した分、逆に黒星を多く供給する皮肉な結果に終わってしまった。3勝、防御率1.50とパ・リーグ勢を圧倒し、交流戦Vを牽引した一昨年とは対照的に今季は1勝3敗、防御率5.63と苦戦。6月28日の巨人戦で六回途中5失点と崩れて4連敗を喫すると、ついに出場選手登録を抹消された。
なぜ今季のバウアーは波に乗れないのか。一昨年と今季の違いとして、データ上で目立つのがストレートの平均球速の低下だ。一昨年は151.9キロだったものが、今季はマイナス1.3キロの150.7キロ。両シーズンとも70%前後と高いストライク率を誇るが、空振りの率は一昨年が9.2%だったのに対して今季は4.6%と半分以下。その結果、被打率も.274から.333へと上昇している。一昨年は投球全体の44%を占めたストレートは今季34%まで下がっており、本人もその威力の低下を自覚しているのか、力で押す印象が強かった2年前とは投球スタイルに明らかな変化が見受けられ、変化球で交わす場面が多くみられる。
年齢を重ねれば、当然球威は落ちる。ただ、そればかりが原因とはいえない気になるデータもある。急性副鼻腔炎の症状を訴えるなど体調不良に悩まされた序盤を参考外としても、明らかに連戦の中で状態が下降線を描いているのだ。
中4~5日での登板を続けた5月27日からの5試合の球数は、それぞれ「118」→「110」→「121」→「131」→「127」とメジャーリーグで交代の基準とされる100球を大きく上回り、41球でKOとなった6試合目で大きく崩れた。6月1、6日の両試合で152キロだったストレートの平均球速は、六回途中4失点だった同12日のオリックス戦で151キロに、九回途中3失点だった同17日の西武戦でシーズン平均を下回る150.3キロに、二回途中7失点だった同22日のロッテ戦では150キロ台にも達せず149.3キロにまで落ち込んだ。
6月から30度を超える酷暑に見舞われた中、34歳の右腕が以前のように中4~5日で十分に回復できているのか、検証し見極めていく必要はあるだろう。球団OBの高木豊氏は同24日に更新した自身のYouTubeチャンネルで「この暑さだとやっぱり、難しいと思うよ」とし、その意欲的な姿勢を評価しつつも「中4日で行くんだったら、ある程度、球数制限した方がいい」と、より効果的な運用を提言している。一昨年の19登板で120球を超えたのは3試合のみ。6、7月には無傷の5連勝を飾り、最終的に10勝4敗、防御率2.76と序盤の低迷を忘れさせる快進撃を演じた。その中で、シーズン最多の128球を投げた後に5連勝が止まり、2連敗を喫しているのは注目すべきポイントだろう。ちなみに今季は15試合の登板で既に120球以上投げた試合が6を数える。
DeNAは東克樹、アンソニー・ケイ、アンドレ・ジャクソンの3本柱に加え、同21日の西武戦で完封勝利を挙げた大貫晋一、5月22日の中日戦で完封勝利を飾った石田裕太郎に加え、7月3日に待望にプロ初勝利を挙げた高卒4年目右腕の小園健太、社会人出身の3年目右腕・吉野光樹ら実力十分の先発陣を擁するだけに、何も無理してまでバウアーに球数を投げさせたり、中4日で回し続けたりする必要はない。“谷間”をつくらず、先発として計算できる6投手を常時運用できることだけでも、今のセ・リーグでは大きなアドバンテージとなるのだから。
なかなか歯車がかみ合わない、ここまでのDeNA。ただ、勝負はまだ半分を過ぎたばかり。打線のテコ入れへ、昨年のポストシーズン12試合で打率.333、1本塁打、2打点と活躍し、日本一に貢献したマイク・フォードを再獲得するなど巻き返しへの策も講じている。そして、待たれるのがバウアーの復調。サイ・ヤング賞(米大リーグ最優秀投手賞)右腕の現状を踏まえた効果的な運用が、27年ぶりの“横浜奪首”に向けた重要な鍵になりそうだ。
悲願のリーグ優勝へ土俵際の横浜DeNAベイスターズ 巻き返しのカギを握るバウアー復調の条件を探る
プロ野球は「日本生命 セ・パ交流戦」を終え、各球団がシーズンの折り返しを超えた。ソフトバンクの優勝に終わった交流戦だが、目立ったのはセ・リーグ勢の不振。全6球団が負け越し、下位6位までを占める史上初の“屈辱”を演じることとなった。7勝11敗と大きく負け越して交流戦を終えたDeNAは、巨人、阪神と上位2球団にカード3連戦3連敗を喫するなど、交流戦後も苦しい戦いが続く。

バウアーの復調が、巻き返しのカギとなる (C)共同通信