インタビュー・文/石塚隆

西武の躍進を支えるエグい打線

――7月後半から13連勝を遂げた埼玉西武ライオンズがパ・リーグの台風の目になっています。

中畑 西武は驚くほど一気に変わったよね。昨年はリーグ最多の失策(101個)をして、誰が監督をやるのかと思ったら現役時代守りのスペシャリストだった辻発彦が就任し、ミスの少ない野球になった。野球はまずは守備なわけだけど、かといって攻撃力が弱くなったわけじゃない。安打製造機の秋山(翔吾)に走攻守そろった浅村(栄斗)、ホームランアーティストのおかわり君(中村剛也)、そしておかわり君に匹敵する長打力を誇る山川(穂高)がハマって、迫力のある、観ている人がワクワクする野球になった。

――8月5日の試合で先発をしたソフトバンクの千賀滉大投手は西武打線を「エグい打線」だと言っていました。

中畑 あのエグいボールを投げる千賀が言ってんだから本物だよ。ここに来て西武が台頭したことで、『力対力』のパ・リーグの野球がより鮮明になって楽しさを感じてならない。格好いい野球だと思うし、掛け値なしに面白いよね。

――ここまでの戦いはもちろん、今後のペナントを見据え西武のキーマンになる選手は誰だと思いますか。

中畑 不振のメヒアに代わってファーストに入った山川の存在は勢いをつける要因になっていると思うけど、やっぱりルーキーながらショートの定位置を確保した源田(壮亮)の存在が大きいよね。守備も上手くて、脚がある源田が2番に入ったことで、他のチームメイトに対する相乗効果が生まれていると思う。ここまで3塁打を7本(以下データは8月7日現在)打っているなんて信じられないよ。ホームラン7本打つよりも難しい。

源田のエラーには深い意味がある

――源田選手を、1980年代後半の最強西武を2番ショートとして支えた辻監督とタブらせる人も多いですね。

中畑 そういう意味で源田はいい指揮官と出会えたし、野球を早く知ることができたんじゃないかな。実際、源田と会って話してみるとルーキーにも関わらずプロの世界で10年ぐらいメシを食ってきたような雰囲気がある。職人肌の選手だし、西武の野球やチームの空気を変えたシンボル的な存在だと思う。13のエラーがあるけど、辻監督は防げないエラーもあったし、その経験の中には成長とか色んなものが含まれていると言っていた。決して無駄なエラーではないといったこの発想も辻監督のチーム変革の一環だと思う。

――フロントは先を見ることで辻監督を選任し、ショートという弱点を源田選手で埋め、チームを変えたということですね。

中畑 そう、将来を見据えたビジョンがはっきりしていたと言うこと。それがないのが今のジャイアンツだよ。まあ、その話は別の機会でいいか(笑)。ドラフトで守備において計算のできる即戦力を取りに行き、想像以上に攻撃力があったというのも嬉しい誤算だったと思う。
源田と話してみて分かったのは非常に頭が良くて、人間性も優れている魅力的な選手だということ。まあ顔は鉄仮面みたいで地味だけどな(笑)。他のチームメイトに源田のことを聞いても誰も悪口とかを言わずとにかく評判がいい。あの全体を見る目のあるベテランの渡辺直人さえ凄い選手だと言っていたからね。直人はめったに人を褒めないし、そういう意味ではすでにチーム内では認められた存在になっているということだね。

――源田選手が今後の西武のカギになりそうですね。

中畑 ショートという内野で一番難しいポジションで楽しそうにプレーしているし、ルーキーイヤーから出場しつづけ結果を出しているところに目に見えない凄さを感じる。プロ野球界にはこういった魅力と存在感のある選手が必要なんだ。そういう意味では西武は今、源田にかぎらずキャラクターがしっかりとした選手が増えてきて良いチームになりつつある。まだ上位にはソフトバンクと楽天がいるけど、打線は言うまでもなく投手力も安定しているから、昨シーズンの日ハムのような逆転リーグ優勝もあるかもしれない。それぐらい魅力的な野球を今の西武がやっているのは間違いないね。


Ishizuka Takashi