「BE A TEAM, WIN IT ALL」をチームスローガンに掲げ、相川新監督を迎えて臨んだ今季のベイスターズ。「チームをまとめ上げて必ず達成したい」。28年ぶりのリーグVへ、そう意気込んで開幕戦に臨んだ指揮官だが、4月までで13勝13敗の勝率5割。ゴールデンウィークの9連戦を4勝4敗1分けで終え、首位阪神、2位ヤクルトに4.5ゲーム差と、なかなか勢いに乗りきれていない。
最初の誤算は、下馬評の低かったチームを首位争いするまで波に乗せるきっかけにもなったヤクルトとの開幕カード(横浜)での3連敗だろう。特に3戦目は七回までリードしながら先発の石田裕が八回に崩れて5点を奪われ、痛恨の逆転負け。シーズン初登板で球数以上の疲労もある中で、石田裕を103球まで引っ張った相川監督は「(継投は)僕の責任。また一つ、僕自身勉強になりました」と責任を背負った。
確かに序盤の采配には迷いが見られる場面もあった。4月3日の巨人戦(東京ドーム)では、八回の打席に立った先発の東をその裏に交代。試合は3-1で逃げ切ったものの「単純に(続投か継投か)迷っただけの話。もうちょっと早く判断をしていきます」と、やや後手に回ったことを認めた。
過去にヤクルトでセ・リーグ制覇を達成した監督経験者は「試合中の監督の仕事というのは想像以上に多い。攻撃も投手起用も全て一人でやろうとすると判断が追い付かないことがある」と証言する。データの精査などチェックするポイントが多岐にわたる現代野球で、コーチに委ねることなく全ての判断に主体的に関わろうとすると、どうしても行動が間に合わないことがあるという。
就任5年目の三浦前監督のもと4月を終えた時点で10勝13敗2分けの借金3と、昨季も序盤は苦しい戦いが続いた。過去を見てもスロースターターな傾向(コロナ禍で開幕が遅れた2020年を除く過去10年の3・4月終了時に貯金があったのは2度のみ)にあるベイスターズにとって“通常運転”であり、昨季も最終的に71勝66敗6分けのリーグ2位となったことを考えれば、まだ采配が確立されていない新体制のもと、勝率5割で最初の1カ月を終えたのは、上々のスタートともいえる。判断のスピード、役割の明確化は経験を積むことでおのずとブラッシュアップされていくもの。その部分では伸びしろもあるといえる。
期待感を高めるのは、実際に采配の柔軟性が明らかに増している点だ。データ重視のセイバーメトリクスの観点から「一番いい打者を1番に置く」とし、賛否ある中で開幕18試合まで牧の「1番」での起用にこだわってきた相川監督だが、上半身のコンディション不良で長打力のある筒香が離脱したのをきっかけに、4月21日の阪神戦(横浜)から牧を「2番」に配置転換。すると、同戦では牧が3安打3打点と起爆剤になり、ともにその時点でシーズン最多となる14安打16得点と強力打線が爆発し、6連勝へとつながった。結局、牧が4月24日の試合で右太もも裏を痛めて離脱し、3試合のみの採用となったが3戦3勝と打順変更の効果は結果に表れた。
この前後には、レギュラー候補として期待されながら不調が続いていた梶原、石上を2軍再調整とし、ファームで好調だった野手を上げてスタメンに抜擢するフレキシブルな起用も目立つようになった。その象徴が東京・日大三高から入団8年目にしてブレークを果たした勝又だろう。4月21日の阪神戦では3安打4打点と活躍するなど、先発起用された試合は9勝5敗(5月7日現在、以下同)。18試合の出場で打率.393(56打数22安打)、10打点と好調を持続している。
ほかにもドラフト3位ルーキーの宮下(東洋大)は4月12日の広島戦(横浜)でプロ1号を放ち、5月5日の広島戦(横浜)では同5位ルーキーの成瀬が3点二塁打を放つなどしてチームに貢献。三森のセンター起用、度会の三塁起用など、昨秋のキャンプから準備してきた思い切った配置も目立つようになっており、まさに“積極采配”で筒香、牧という二枚看板の不在を感じさせないだけの活性化を攻撃陣にもたらしている。これは昨季までの三浦体制とは明らかに異なる部分。ここまでのチーム打率は首位阪神に次ぐ.259で、136得点もリーグ2位。牧や筒香は既に2軍施設で復帰に向けた調整を始めており、攻撃面での不安は少ない。
一方で、今後に向けて不安が大きいのは投手陣だ。チーム防御率3.68はリーグワースト。ケイ(ホワイトソックス移籍)、バウアー(米独立リーグ移籍)、ジャクソン(ロッテ)の外国人3投手が抜けた先発陣は、予想通り苦しい状況を強いられている。
先発防御率はリーグ唯一の4点台となる4.09。それでも勝率5割前後を維持できているのは、ひとえに救援陣の頑張りがあってこそだ。救援防御率3.12は、ヤクルト(2.42)に次ぐリーグ2位。日本プロ野球名球会入りの条件となる通算250セーブの達成が間近に迫る山崎が17試合の登板にとどまった昨季を経て守護神に返り咲き、新外国人のルイーズ、レイノルズも救援で安定した投球を見せるなど機能。この3人による「勝利の方程式」が確立されていることは何よりの強みとなっている。
ただ、“リリーフ頼み”の構図は、同時に不安点にもなる。先発の平均投球回5.16は、リーグどころか12球団で最少。パ・リーグ最少のロッテが5.46、セで5番目に少ない巨人が5.51とベイスターズとは大きな差があり、救援投手の起用数も巨人の3.58に次ぐ多さの3.53と、大きな負担が救援陣にかかっているのは数字を見ても明白だ。
先発の平均投球回がリーグで上から1、2番目に多い中日(6.17)、広島(5.90)の両チームが5、6位に低迷しており、このままベイスターズに運用面の改善が見られなければ、上位進出どころか、終盤で救援陣が息切れし、投手運用で余裕のある中日や広島といった下位チームに飲み込まれる可能性すらある。先述した石田裕の交代機とは矛盾する部分もあるが、時には先発投手の交代をどこまで遅らせられるかが問われるところ。中盤戦に向けて、「我慢」が重要なポイントになる。
新外国人左腕コックスは来日初登板で勝利し、期待が高まっていた中で左肘の手術を受けたため今季復帰が絶望となった。阪神から移籍のデュプランティエも上半身のコンディション不良で離脱し、新戦力が機能していないのは苦しいところ。木村洋太球団社長兼チーム統括本部長は、新たな戦力の補強に前向きな姿勢を示しており、トレードも含めた先発投手の獲得は急務。東が3勝、防御率1.89とエースの役割を果たし、石田裕も2勝、防御率2.45と及第点の活躍を見せているだけに、2年目で初勝利を挙げた篠木をはじめ、5年目の深沢や小園、ドラフト2位ルーキー島田(東洋大)、同4位・片山(Honda)といった若き先発候補から独り立ちする投手が現れることも期待される。
柔軟性のある采配で、まずは着実に結果を出している相川ベイ。4年目の吉野は5月5日の広島戦(横浜)の延長十二回に3者連続三振をマークし、26歳の中川虎も10試合無失点と、救援陣の一角として存在感を見せ始めており、リリーフの陣容はリーグ屈指といえるだろう。あとは、シーズン終盤を見据え、いかに救援陣の負担を減らしながら勝利を重ねていけるか。難題ではあるが、投手運用の抜本的な対策や若手の抜擢、自慢のデータ解析を含めた最適解を見出せずして、28年ぶりの歓喜はあり得ない。
今年こそ横浜DeNAベイスターズは優勝できるのか 相川新体制に問われる「我慢」
プロ野球は開幕から1カ月半ほどが過ぎ、30試合超を消化して各チームの状況や勢力図が明確になってきた。昨季をセ・リーグ2位で終え、28年ぶりのリーグ優勝を目指して相川亮二新監督を迎えた横浜DeNAベイスターズは、5月のゴールデンウィーク9連戦を終えたところで32試合を消化して15勝16敗1分けと、5割前後を抜け出せない状況が続いている。ここまでの戦いを振り返り、今後の浮上に向けたポイントや課題を分析する。
4月26日巨人戦にて 連敗を喫し引き揚げる相川監督 (C)共同通信