王貞治氏に並ぶ連続試合四球の日本記録

4月終了時点の成績は打率.236、2本塁打、3盗塁と開幕からしばらくは調子が上がらなかった柳田だが、そのなかでもひとつの記録を残した。開幕から4月19日のロッテ戦まで18試合連続で四球を選んだが、これは1970年に残した巨人の王貞治(現ソフトバンク球団会長)に並ぶプロ野球タイ記録だ。
ただ、同じ連続試合四球の記録でも中身は少し違う。王氏は期間中、29四死球を記録したが、敬遠6個を含めストレートの四球(初球から4球連続ボール)が15個もあった。一方、柳田は選んだ25四球のうち敬遠は1個で、ストレートの四球は3個。フルカウントから選んだ四球が15個もあった。
開幕から4月7日までの11試合は、36打数7安打17四死球、打率.194だったが、9日からの7試合は24打数9安打9四死球で打率.375。開幕当初は勝負を避けられた影響からか、打撃の調子が上がらなかったが、徐々に安打を増やしていったのはさすがである。
ホームランバッターでありながらゴロアウトが多い柳田

ところで、一般的に柳田はホームランバッターと言われるが、他のホームランバッターとは違い、ゴロが多いという特徴がある。昨季、パ・リーグのホームラン上位5選手のゴロアウトとフライアウト(犠飛含む)の比率は以下の通りだ。(図1参照)

このなかで、フライアウトよりゴロアウトのほうが多いのは柳田だけで、2倍以上ゴロアウトのほうが多い。そして、外野への飛球85本のうち、34本がスタンドインと外野へ飛べば3分の1以上はホームランになっている。今季も6月21日現在、柳田のゴロアウトは76、フライアウトは31(内野8・外野23)とゴロアウトのほうが2倍以上多くなっている。普通であればゴロよりもフライやライナーのほうが長打になりやすいが、柳田は異色のタイプと見ることができる。
昨季と今季でBABIPの数値に明らかな変化が

ところで今季、柳田が打席に立ったときに相手球団が“柳田シフト”を敷いている場面を目にしたことがあるだろう。サードが三遊間寄り、ショートが二塁の後ろ、セカンドが一塁寄りと全体的に右へ寄っているシフトだ。柳田の打球は右方向とゴロが多いという傾向から編み出した作戦だろうが、実際にシフトの網にかかった場面も何度かあった。
セイバーメトリクスのなかに「本塁打以外でフェアグラウンドに飛んだ打球の安打になる割合」を示す「BABIP(※)」という指標があるのだが、シフトの影響もあってか、昨季と今季でBABIPの数値に明らかな変化が見られる。昨季、柳田のBABIPはパ・リーグトップの.402だったが、今季はリーグ9位の.345まで下がっている。シフトの影響だけでBABIPの数値が下がっているわけではないが、昨季と比べて安打になる割合が減っていることは確かだ。
(※)BABIPの計算式
(安打数-本塁打数)÷(打数+犠打飛-本塁打-三振)
RC27の数値は今季もリーグトップ!

では、昨季より打率が下がり、本塁打も減っている柳田は、チームへの貢献度も下がっているのだろうか。
セイバーメトリクスのなかに「RC27」という指標がある。ある特定の選手ひとりで打線を構成した場合に9イニングで平均何点取れるかを算出するものだが、昨季、柳田のRC27はパ・リーグでダントツの11.39だった。1番から9番まで柳田が打った場合、理論上では約11点取れるということになる。今季はRC27の数値事態は9.17に下がっているが、それでもこの数字はリーグトップだ。打率や本塁打の成績が悪いため、昨季より物足りなく見えるが、得点を生み出す力に大きな変化はない。
開幕から厳しいマークに遭い本調子とは言えないなかで、四球を選びながら調子を整えてきた柳田。現状、打率は3割を切り、本塁打も10本にとどまっている。だがしかし、セイバーメトリクスの数値で見る限りチームへの貢献は昨季と変わらない。打率や本塁打の数字だけで不振と決めつけるのは早計であると言えよう。
また、昨季の柳田は7月こそ打率.261だったが、8月は.364、9月は.395とシーズン終盤につれて調子を上げた傾向がある。今季も、相性のいい夏に打率が上がるかどうかが大きなポイントとなってきそうだ。
著者:京都純典
1977年、愛知県生まれ。出版社を経て独立。主に野球のデータに関する取材・執筆を進めている。『アマチュア野球』(日刊スポーツ出版社)、『野球太郎』(廣済堂)などに寄稿。