交流戦の中盤から1、2番に定着した西川遥輝

投げては10勝、防御率1.86。打っても打率.322、22本塁打。史上初の10勝100安打20本塁打というとてつもない記録を残した大谷翔平。規定投球回、規定打席数に達していないが、プロ野球史上に輝く偉業であることに変わりはない。

 打線では4番・中田翔が打率.250と苦しんだが、自己最多の110打点で2度目の打点王を獲得。大谷が投打、中田は打線の中心でチームをけん引したのは確かだが、日本ハムの強さを表す選手は他にもいる。

 まずは、パ・リーグ2位の打率.314、同3位の41盗塁を記録した西川遥輝だ。シーズン当初は下位でのスタメン出場が多かったが、交流戦の中盤から1番、もしくは2番に定着した。7月以降の成績は263打数93安打、打率.354と高打率を残してチームをグイグイと引っ張った。開幕から6月末まで、西川が1打席も出塁できなかった試合は12試合あったが、7月以降の試合ではたったの4試合しかない。上位を打つ西川の調子が上がることに合わせるように、チームも一気に浮上したと言える。

単独でのニ盗失敗は、なんと1回だけ!

西川の持ち味はなんといってもそのスピードである。本塁から一塁まで3秒後半で到達し、41盗塁と数が多いだけでなく成功率も89.1%と非常に高い。この成功率は、10盗塁以上記録した選手のなかでリーグ3位である(1位はソフトバンク・柳田悠岐の25企図23成功、92%)。

 西川が最後に盗塁失敗したのは7月20日の楽天戦。それ以降20回連続で成功し、クライマックスシリーズも加えれば21回連続成功中と脅威の盗塁成功率を見せている。
 
 そんな西川は、相手投手の何球目で盗塁を仕掛けることが多いのだろうか。41個中、牽制で誘い出されながらも成功した盗塁が1個。初球に16回走ってすべて成功。2球目でも9回走り8回成功と、2球目以内で走ったときは1回しか失敗していない。

 失敗した5回の内容を見ると、牽制で誘い出されて刺されたのが2回。ダブルスチールでの三盗失敗が1回。フルカウントでスタートを切って三盗失敗したのが1回。単独でニ盗を試み失敗したのは4月13日オリックス戦の1度だけだ。7回表2アウト一塁から、塚原頌平-山崎勝己のバッテリーに刺されただけである。相手バッテリーからすれば西川に走られたらほぼ諦めるしかなく、とにかく出塁させないように抑えるしかない。

すべて6番以下で本塁打を打った初の本塁打王

機動力でかき回したのは西川だが、一発長打でチームに貢献したのはブランドン・レアードだ。来日2年目を迎えたレアードは、4月までは打率.222と調子が上がらなかったが、5月に打率.326、12本塁打を記録し月間MVPに選ばれた。その後、夏場は調子を落としたが、ペナントレースが山場を迎えた9月に打率.295、9本塁打と盛り返した。

 39本塁打を放って本塁打のタイトルを獲得したが、主に6番や7番を打つことが多かったレアード。クリーンアップを任されたのは10試合(すべて5番)しかなく、クリーンアップでの本塁打は1本もなかった。

 2リーグ制後の本塁打王が、最も本塁打を記録した打順で多いのは4番で80人。3番の43人、5番の12人と続き、6番以下は7人しかいない(6番6人、7番1人)。ただ、この7人はいずれも5番以上での打順での本塁打も含んでおり、レアードは史上初めて6番以下ですべての本塁打を放った本塁打王となる。

すべてのボールカウントで本塁打を打っているレアード

 外国人打者と対戦する際、「初球やファーストストライクの取り方に注意」とよく言うが、レアードもまた、初球やファーストストライクで好成績を残している選手だ。

 カウント別成績を見ると、初球が打率.348、4本塁打。ファーストストライクを打った時の打率は.362。パ・リーグの規定打席に達した選手のファーストストライク時の平均打率.295を大きく上回っている。

 レアードがファーストストライク時に打った本塁打は16本で、西武のエルネスト・メヒアと並びリーグ最多。2ストライクに追い込まれたら打率も.202まで下がるが、本塁打も10本打っており、追い込んでも安心はできない打者であることを物語る。

 また、レアードは12種類あるボールカウントのすべて本塁打を打っているが、これはレアード以外にメヒアしかいない。どのカウントでもフルスイングする両選手の特徴が表れていると言えよう。また、今季、1試合2本塁打を5回、3本塁打も1回記録しているレアードは、3試合連続本塁打が2回、2試合連続が3回と一度打ちはじめたら止まらない傾向もある。


京都純典(みやこすみのり)