「マルハンGIVERS」、全国の舞台を目指す

 その「都市対抗」への出場を駆けた戦いに今年から参戦するチームが元ヤクルトスワローズの館山昌平氏が指揮を執るマルハン北日本カンパニー硬式野球部「GIVERS(ギバーズ)」だ。昨年2月に第1回セレクションを行い、今年4月より宮城・仙台を拠点に本格始動した。

 先月24日に仙台市内で行われた発足会見では「3年間で全国ベスト4を目指し、5年間で都市対抗ならびに日本選手権で優勝するチームを目指していきます」と大きな目標を掲げた。

 選手たちは、ほとんどが今年春に大学を卒業し、社会人生活をスタートさせたメンバーで構成されており、日中はマルハン店舗でパチンコ店員として働きながら野球と両立していく。本間正浩GMは「試合以外の日は、練習が3〜3.5時間、店舗業務3時間の6.5時間を勤務としてカウントしています」と説明した。

仙台市内の発足会見に出席した本間正浩ゼネラルマネージャー ©マルハン北日本カンパニー硬式野球

 さらにGIVERSを盛り上げるため、選手たちが勤務する仙台市内のマルハン店舗にて「GIVERS STUDIO(ギバーズスタジオ)」が設置される。プロ野球で17年間活躍した館山監督に関するモニュメントや、チームユニホームが展示されるほか、今後はファンイベントやYouTube収録などGIVERSの情報発信拠点として活用される予定だ。

選手が勤務するマルハン店舗に設置されている「GIVERS STUDIO(ギバーズスタジオ)」©マルハン北日本カンパニー硬式野球

試合経験の差が明暗を分ける

 先月21日には、今年1月に16年ぶりに活動再開を果たした日産自動車硬式野球部(以下、日産)との創設記念試合が行われたが、結果は4対16と大敗を喫した。

 日産は、都市対抗や日本選手権での優勝経験を持ち、数多くのプロ野球選手を輩出してきた名門チームだったが、リーマンショックによる経営不振で2009年に休部を余儀なくされた。現在も巨額の赤字見通しや経営統合の協議が破談となるなど厳しい逆風の中、野球を通して多くの人たちの“心から喜ぶ姿”をもう一度みたいという想いのもと、2023年に野球部復活が決定。2025年シーズンから本格的に再始動している。

 記念試合は、確かに歴史ある名門との対戦ではあったが、GIVERSと同様にゼロから選手を集めてスタートしたチーム同士であり、その中で両者の差が顕著に現れる結果となった。

 GIVERSと日産の大きな差の一つは、選手たちの試合経験にある。日産の選手は、大学時代にチームのレギュラーとして出場していた選手が多く在籍する。GIVERSは、大学時代に硬式野球部に所属していながらも公式戦への出場が数試合といった選手がほとんど。初代主将を務める安保勇咲選手(以下、安保選手)も亜細亜大学で公式戦2試合の出場に留まっている。まずは、試合数をこなし試合感覚を取り戻していくことが最優先事項だ。

 安保主将も「選手23名のうち21名が22歳と若いチームですが、その若さを活かして常に挑戦し成長していきたい」と意気込んだ。

 本格始動後、初の公式戦「第67回JABA選抜新潟大会」では惜しくも予選リーグ敗退となったが、日立製作所相手に6対4と勝利し、企業チームから初白星を飾った。さらに、読売ジャイアンツ(三軍)との一戦では8対11と健闘し、着実にチーム力が上がってきている。

 そんな新生GIVERSの注目選手はこちら。

 まず1人目は、石川慧亮選手(外野手)。石川は、中日ドラゴンズの石川翔選手の弟で、青藍泰斗高時代からプロのスカウトに注目されている選手だ。

 力強いスイングを持ち前に、昨年までは栃木ゴールデンブレーブスでプレーし、BCリーグで2年連続('23年、’24年)の打点王に輝いている。試合経験の少ない選手が大半を占めるチームにとって実績のある石川はチームに欠かせない存在となっているはず。これからチームの中心選手として活躍することに期待がかかる。

 2人目は、千代松広大選手(内野手)。千代松は、桜美林大学で主軸として活躍し、2024年首都大学春季リーグで一塁手としてベストナインに選出されている。今大会のJABA選抜新潟大会でもチームの中でトップの打率.500をマークし、チームの主軸としてこれからの成長が楽しみな選手だ。

初の都市対抗へ挑む。館山監督の采配にも注目

 いよいよ5月24日から都市対抗野球一次予選がスタートする。まずは宮城県内10チームがトーナメント方式で対戦し、うち4チームが次のステージである二次予選へと駒を進める。二次予選は、東北6県の各予選を勝ち上がった12チームが、2枠の本戦出場権をかけて戦いを繰り広げる。東北には、前回の都市対抗で準優勝を果たしたJR東日本東北やベスト4入りの実績を持つ七十七銀行、都市対抗に3度出場している日本製紙石巻といった社会人野球をリードする強豪チームがひしめいており、本戦出場への道は決して平坦ではない。

「私が監督を務めますが、選手、スタッフ全員が主役のチームです。皆で話し合いながら、歴史に残るようなチーム、誰もが目指すようなチームに大きく羽ばたいていけるようチームを創っていきたい」(館山監督)

力強く抱負を語る館山昌平監督 ©マルハン北日本カンパニー硬式野球

 まだ発足間もないチームであり、手探りの部分も多いと予想されるが、プロの世界での指導経験を持つ館山監督の選手起用や戦術など、選手のポテンシャルを最大限に引き出す采配にも注目だ。


VictorySportsNews編集部