多くの感動を呼んだ第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)から2年。第6回大会をおよそ1年後に控え、3月21日に東京・大手町で「2026 World Baseball Classic®︎ Tokyo Pool」メインスポンサー発表会が行われ、人材サービス企業のディップ株式会社がメインスポンサーになることが発表された。これにより東京で開催される第6回WBC1次ラウンドの名称は「2026 World Baseball Classic Tokyo Pool Presented by dip」に決まった。
「WBCに関しては非常に思い入れがございます。2009年に初めて広告を出させていただく機会がございまして、伝説のイチローさんが決勝タイムリーを打った大会(決勝戦)をロサンゼルスのほうに観に行きまして、たいへん感動致しました。僕もいつかはこの世界中を熱狂させる大会のメインスポンサーになりたい、そのために頑張ろうというふうに思ってやってきました。2023年の(前回)大会は、僕は大谷さんの大ファンでマイアミまで観に行って、再度その思いを強くして今回に至ったということでございます」

発表会のオープニングで、WBCに対する思いを切々と語ったのは、ディップ株式会社代表取締役社長兼CEO(最高経営責任者)の冨田英揮氏。大谷は2023年から同社のブランドアンバサダーを務めており、冨田氏は「先日終わったメジャーリーグの開幕戦、これも本当に盛り上がって僕も全試合観戦させていただいたんですが、ちょっと『大谷さんロス』になっています。日本中が『今度はいつ生で見られるんだろう?』と期待していると思いますけど、2026年(WBCに)また大谷さんに、そして多くの選手にも参加していただいて、素晴らしい大会になればというふうに期待しております」と、来年3月に行われる第6回大会への思いも言葉にした。
冨田氏とともに登壇し「とても嬉しかったのは冨田さんが素晴らしいパッションをビジネスに対して、そしてベースボールに対しても持っているということ」と話したのはWBCプレジデントのジム・スモール氏。「彼が愛知県で始めたドリーム(夢)、アイディア、パッション(情熱)という考えは、WBCの成長とも合致している。日本中にいる何百万人ものファンにWBCを届ける上で、冨田社長とディップ以上のパートナーはいない」と、新たにタッグを組むパートナーへの厚い信頼を口にした。

その後は選手、コーチとして日本代表のWBC優勝を支えた経験を持つ里崎智也氏と白井一幸氏を交えてのトークセッション。捕手として世界一に貢献した2006年の第1回大会チャンピオンリングを指に登壇した里崎氏はその第1回大会、白井氏は三塁ベースコーチを務めた前回、2023年の第5回大会からの“秘話”を披露した。
「当時のアメリカ代表は(デレク・)ジーター、ケン・グリフィー・ジュニア、チッパー・ジョーンズ(いずれも米野球殿堂入り)といったスーパースターばかり。そのアメリカとの試合前にイチローさんが『アメリカ代表って言っても大したことない。だから臆することもないし、勝てない相手でもないから大丈夫』って言って、先頭の1打席目で(ジェイク・)ピービー(2007年サイ・ヤング賞)からホームランを打ったんですよ。たぶん狙ってたと思うんですよ、日本代表のみんなが臆することなくメジャーリーガーと戦えるように。自らバットで結果として示して、一気にチームが盛り上がったっていうのは、もう忘れもしない一打ですね」(里崎氏)

「(アメリカとの)決勝戦の前に、大谷選手がチームメイトに向かって『憧れるのはやめましょう』って言いましたよね? 準決勝でメキシコに劇的なサヨナラ勝ちをして、3大会ぶりに決勝戦に進むことができたので、ちょっとチームに安堵感とか達成感というのが生まれてたんですよ。そしてあのアメリカのスーパースター軍団と試合ができるということでちょっと喜びに浸ってるところでね、大谷選手が『彼らを超えるためにやってきたんだから、勝つことだけを考えてプレーしましょう』って言った時に選手がハッと気づいて『よしやろう!』って思ったんですけど、実は侍ジャパンの選手は『憧れてるのは君(大谷)にだ』ってそういう気持ちでしたね(笑)」(白井氏)

これに対し「来年の大会では日本を倒そうという他のチームが、イチローや大谷がしたような話を日本に対してすると思う」と言うのはスモール氏。「日本はこれまで5回の大会のうち3回、つまり60%優勝している。今は誰もが日本が世界一だと思っている」と、WBCにおいては今や日本が「憧れ」の的になっているとの見方を示した。
トークも後半に差し掛かり、前回のWBCでの活躍を目の当たりにして「まさに夢とアイディアと情熱の人だなと。だったらピッタリじゃないか」と大谷にブランドアンバサダー就任を依頼したという冨田社長の話から、巷で噂になっている「ラッキーディップ」の話題に。これは昨年、大谷がメジャー史上初の「50-50(シーズン50本塁打&50盗塁)を決めた50号本塁打を放った際など、球場バックネットの回転広告に同社が掲出されたタイミングでよく打ったことから名付けられたものだという。
「ちょうど大谷選手とお会いする機会があって、ウチは『ラッキーバイトル』だから、ウチの看板が出たらラッキーと思ってくださいと言ったら、そのとおりに翌日(読売ジャイアンツとのプレシーズンゲームで)ホームランを打っていただきました。(昨年の)ワールドシリーズ優勝の時の得点もすべてウチの看板の時に取っていただきましたし、今回のスポンサーもさせていただいて(WBCでも)優勝できるんじゃないかと思っております」(冨田社長)
そのWBCは、2006年の第1回大会から来年でちょうど20年の節目を迎える。「そう考えると、子供の時にWBCを見てこれに出るために頑張ってきた全世界の少年たちが、今や母国の国旗を着けて出る大会に成熟していってると思う」と話したのは、第1回大会に出場した里崎氏。「(前回)優勝したその後、すぐに『次も世界一になろう。そのためにオレはもう一度、このチームに戻ってくる。みんなも次も一緒に戦えるように、選ばれるように一生懸命野球に取り組んでいこう!』と(ナインに)言ったのが大谷選手。ということは大谷選手もより成長していくでしょうし、日本の選手も『大谷選手ともう1回、一緒にプレーがしたい。世界一になりたい』という気持ちになったと思います。次回大会が楽しみです」とは、前回コーチを務めた白井氏。
最後は冨田社長が『ディップはメインスポンサーとして2026年のWBCを盛り上げていきたいと思いますし、僕もWBCを見て、プレーヤーじゃないですけど夢を持って、その夢に向かって頑張ってまいりました。たとえば来年の決勝戦を現地で応援したい、そのために頑張るぞとかですね、皆さん夢を持って頑張っていただければなというふうに思います』と、発表会を締めくくった。
「2026 World Baseball Classic®︎ Tokyo Pool Presented by dip」開幕まであと342日。メジャーリーグがアメリカ本土で開幕を迎え、日本でもペナントレースの火ぶたが切られたばかりだが、その裏で日本の連覇がかかるWBCへのカウントダウンは、もう始まっている。