外国人選手に依存している本塁打
チーム打率は.257、本塁打は101本でともにパ・リーグ4位、544得点はリーグ5位。リーグ最少だった昨季の463得点より80点近く増やしたが、それでもまだリーグ下位の得点力だった。
今季の楽天打線は、外国人選手が主な得点源になった。打線の中心、4番に座った選手もゼラス・ウィーラーが最多の126試合。ジャフェット・アマダーが8試合、カルロス・ペゲーロが4試合。日本人で4番を打ったのは5試合で務めた枡田慎太郎だけである。外国人選手だけでクリーンアップを組んだ試合も3試合あった。
途中入団を含めて5人の外国人野手を一軍で起用し、合計985打数254安打52本塁打155打点。外国人選手の本塁打、打点は12球団最多である。楽天のチーム本塁打101のうち日本人選手が打ったのは49本。外国人選手が打ったのは52本。チーム本塁打の半分以上を外国人選手が打ったのは12球団で楽天のみ。日本人選手の最多本塁打は島内宏明の9本。2桁本塁打を打った日本人選手がいなかったのは楽天とロッテの2球団だった。

生え抜きでシーズン2桁本塁打を記録した選手は0

楽天の日本人選手の本塁打が少ないのは今季に限った話ではない。球団創設以降、日本人野手でシーズン2桁本塁打を記録したのは、山﨑武司、礒部公一、吉岡雄二、鉄平、中村紀洋、松井稼頭央の6人。山﨑以外は20本塁打以上を打ったシーズンがなく、15本塁打以上も2005年の礒部だけ。山崎が退団して以降、2桁本塁打を記録しているのは松井稼しかいない。つまり、楽天がドラフトを経て獲得した選手で2桁本塁打を記録した選手はひとりもいないのである。
チームを編成するうえで一発長打を外国人に頼るのもひとつだが、和製大砲がひとりでもいればかなり楽になる。2013年ドラフト3位の内田靖人が今季二軍で13本塁打、2014年ドラフト4位のルシアノ・フェルナンドも二軍で14本塁打と長打力を発揮している。来季以降、彼らのさらなる成長に期待したいところだ。

日本人選手の長打力不足以外に気になるのは、盗塁の成功率が低いことだ。昨季、大久保前監督の方針で積極的に盗塁を仕掛け、リーグ2位の118盗塁を記録した。だが、成功率はリーグ3位の66.3%でリーグ平均を下回っていた。今季は、盗塁数56、成功率60.2%とさらに下がり、いずれもリーグワーストだ。
2桁盗塁を記録したのはルーキーの茂木栄五郎と島内のふたり。茂木は成功率73.3%、島内も83.3%と比較的高いが、岡島豪郎は16回企図し成功は7回、オコエ瑠偉も8回企図し成功は4回と成功率が低かった。
球団創設以降、楽天の盗塁成功率がリーグトップだったのは2008年の一度だけ。リーグ平均を上回ったのも、成功率が70%を超えたのも3回だけだ。歴史の浅い球団とはいえ、盗塁のうまい球団とはお世辞にも言えない。

※黄緑の成功率は、リーグ平均以下
驚異的な盗塁成功率を誇る松井稼頭央から学べ!
チームの盗塁成功率が低い楽天だが、そのなかに驚異的な成功率を誇る選手がいる。来季でプロ23年目を迎える松井稼頭央だ。今季までNPB通算の盗塁数は歴代15位の362。現役では荒木雅博(中日)の373盗塁に次いで多く、MLB7年間での102盗塁を加えればプロのキャリア通算464盗塁。今季は3盗塁と数こそ少ないが、失敗は一度もない。NPB通算での成功率は82.1%だ。荒木の成功率76.9%よりも高く、今季限りで引退した鈴木尚広の82.9%に匹敵する成功率である。
盗塁を成功させるために脚力が必要なことは言うまでもないが、それだけで成功率が上がるわけでもない。スタートの良さや、相手バッテリーの配球を読む力など経験も重要だ。その点、松井は格好のお手本になるはず。楽天の若手選手は、松井から少しでも多くの盗塁技術を盗み、成功率アップを目指してほしい。

野手とは逆に外国人がパッとしなかった投手陣
投手陣は、チーム防御率がリーグ5位の4.11。外国人選手に依存していた野手とは逆に、投手陣は外国人選手があまり貢献できなかった。目立ったのはセットアッパーとしてチーム最多の23ホールドを挙げたキャム・ミコライオくらいで、勝利を記録したのも5勝のミコライオだけだ。
外国人投手の勝利数はオリックスに次いで少なく、投球回は12球団で最も少なかった。安樂智大や釜田佳直といった若手投手の台頭、FAで入団する岸孝之の加入などは来季への希望となるが、現状のコマ数を見る限り助っ人が助っ人らしい成績を挙げないと上位進出も厳しいだろう。先発陣にひとりでも頼りになる外国人選手が入れば、それだけでチームの成績も変わるはずだ。

野手は外国人の長打力、投手は日本人の奮投が目立った今季の楽天。前述の安樂やクローザーの松井裕樹以外にも、惜しくも新人王は逃したがショートで大きく貢献した茂木や、ルーキーながら多くの試合でマスクを被った足立祐一など近年のドラフトで指名した選手が着実に一軍戦力となりつつある。日本人か外国人のどちらかに依存するような傾向から脱し、バランスよいチーム作りを実現させることが、チームを上昇に導くはずである。
(プロフィール)
京都純典
1977年、愛知県出身。出版社を経て独立。主に野球のデータに関する取材・執筆を進めている。『アマチュア野球』(日刊スポーツ出版社)、『野球太郎』(廣済堂)などに寄稿。