技と力で三振奪う新鋭のスターター
まず、活躍が光っているのは阪神の岩貞祐太。素材の見極めには定評のある日本ハムとの抽選に勝って阪神が獲得した期待の大卒左腕が、3シーズン目で覚醒の兆しを見せている。先発ローテーションの一角としてここまで4試合に登板、勝ち星こそひとつにとどまっているが十分な働きだ。(図1参照)

奪三振数38個は、セ・リーグトップ。登板試合数が1試合少ないにもかかわらず、パ・リーグの則本昂大(楽天/47個)や大谷翔平(日本ハム/38個)など奪三振力で鳴らす“剛腕”にも負けていない。ストレートは時速140キロほどだが、低めにコントロールされたチェンジアップなどの変化球を織り混ぜ、空振りがうまく取れている。制球面で成長も著しく、四球についてもここまでたったの4個と極めて少ない。
打たれる打球は、ゴロよりフライが多いようなので、ここまで0本の被本塁打は増える可能性が高い。大崩れしないためには、走者をためないこと、そしてスタンドに運ばれても自分のペースを崩さないことなどが大事になってきそうだ。
岩貞は、時折見かけるタイプにある、若手選手が結果に恵まれ続けて勝ちが舞い込んだのとはわけが違う、内容の濃いピッチングを見せている。ベテラン中心の阪神の先発投手陣が完全に力を落とす前に、岩貞が新たに軸を担うレベルに至れば、スムーズに次の時代に入れるかもしれない。
育成ドラフトでの指名から5年半、とはいえまだ23歳のソフトバンク・千賀滉大も先発ローテーションに入り、4試合で2勝を挙げている。救援投手としては3年目の2013年に一軍で活躍を果たしているが、この2年間は身体を鍛えながらチャンスを待ち、巨大戦力に風穴をあけ花形ポジションを手にした。(図2参照)

千賀も空振りを奪っていく投球で、32個の三振を奪っている。岩貞とは違い、時速150キロに届くことも多いストレートとフォークボールを生かす“力の投球”が特徴。救援投手時代に比べるとさすがに三振を獲るペースは落ちているが、落ち幅は最低限に抑えることができているようだ。この2年間のトレーニングの賜物だろう。
4戦未勝利も抜群の三振奪取力が光る今永
DeNAのドラフト1位ルーキー左腕、今永昇太は97人の打者と対戦し29個の三振を奪っている。29.9%というこのペースは大谷以上というもの凄い数字だ。ストレートの速度はないが、チェンジアップは打者がタイミングを合わせにくい独特なボールなようで、ミートを許していない。オリジナリティのあるボールを丁寧にコントロールすることが結果につながっていると見られる。四球もここまでわずか2個と制球力も抜群だ。(図3参照)

4試合未勝利と運に恵まれていないが、内容的には申し分ない。岩貞と同様にフライを打たれがちであるため、今後は被本塁打の増加とどう折り合いをつけられるか。アレックス・ラミレス監督による配球の指示もハマれば、ルーキーの躍進を支えるかもしれない。
シーズンを通してローテーションを回すだけのタフさを備えているかは未知数だが、1年目ということもあり本人はがむしゃらにやらざるを得ない。球団側のケアや起用面の配慮にかかっている部分もあるだろう。
その他にも、中日の若松駿太は4度先発して3勝、DeNAの井納翔一も巨人相手に完封勝利を挙げるなど凄みを増しつつある。先に挙げた3人と比べると新鮮味はないかもしれないが、今シーズンはチームの顔と呼べるレベルに昇格するチャンスかもしれない。 (図4参照)

投手のエラーである四球を出さずローテに食い込む投手たち
ここまで名前を挙げてきた投手は奪三振力に長けた華のあるタイプだが、細やかな制球力を生かして渋くローテーションに入り込んでいる新鋭たちもいる。 (図5参照)

育成出身3年目のDeNAの砂田毅樹は、エース・山口俊のアクシデントの影響を受けてではあったが、開幕から2試合の先発機会を得た。昨年に比べ四球を大きく減らし好投。現在は二軍に落ちているが、再びチャンスは訪れるだろう。
チームメイトで同じくローテーション定着を狙う石田健大も、比較的四球が少ないタイプ。狭い横浜スタジアムでの大量失点を避けるために、四球の少なさについて他球団以上に重きが置かれていても不思議ではない。
巨人の田口麗斗も4試合に先発。未勝利だが22イニングで四球は3個。多少ヒットを打たれたとしても、首脳陣もチャンスを与えたくなる制球力だ。3年目のロッテの二木康太は、4月12日に楽天から完投で初勝利を挙げた。4試合25回を投げてここまで四球は4つ。この投手もまた、コントロールが光っている。
信頼して試合を託せる先発投手は、どの球団も常に必要としている“宝”だ。紹介した面々は、ラッキーでは片付けられない“明確なる強み”を持っており、そうしたポジションにかなり近づいていると見ていい。もちろん、シーズンを通してローテーションを守ることの難しさを知ることになる投手も出てくるだろうが、このなかの何人かは“誰もが知っているスター投手”への階段を上がるシーズンとなるはずである。
山中潤