10月19日(日)に開催される東京レガシーハーフマラソン2025。東京2020オリンピック・パラリンピックのレガシー(次の時代に受け継がれていくもの)として行うレースは今年で4回目となる。昨年は男子で59分52秒の大会新記録が誕生したが、今年はどんなレースになりそうなのか。大嶋康弘レースディレクターに見どころを語っていただいた。
まずは男子エリート部門から。東京2020オリンピックで10000mの金メダルを獲得したセレモン・バレガ(エチオピア)の参戦が大きな話題だ。トラックの自己ベストは5000mが12分43秒02(U20世界記録)、10000mは26分34秒93。ハーフマラソンは57分50秒、マラソンでも2時間5分15秒のタイムを持っている。
「東京世界陸上は10000mで6位に終わりましたが、25歳という若さも魅力です。今後はマラソンの本格参戦を視野に入れているようで、ロードレースの経験を積んでいきたい考えのようです。天候次第ではありますが、大会記録(59分52秒)の更新は期待したいと思っています」

トラックのスピードではバレガが抜けているが、日本の実業団に所属する外国人ランナーも優勝賞金300万円を狙っている。ハーフマラソンで59分台のタイムを持つベナード・ランガット(Honda)、3大会連続出場でコースを熟知しているビダン・カロキ(トヨタ自動車)、箱根駅伝でも大活躍したイェゴン・ヴィンセント(Honda)、2020年世界ハーフマラソン9位のべナード・キメリ(富士通)らだ。
「優勝争いはバレガ選手と日本の実業団チームに所属するケニア勢になるでしょう。そこに日本人選手がどのように絡んでいくのか。ペースメーカーはいませんが、一般参加でもハーフマラソンで59分台のタイムを持つリチャード・エティーリ選手(東京国際大)やロロット・アンドリュー選手(YKK)など強力な外国人選手がエントリーしています。彼らのペースにうまく乗ることができれば日本人選手にも好タイムが期待できると思います」
日本勢はマラソンで日本歴代6位の2時間5分51秒を持つ山下一貴(三菱重工)。それと今年4月の日本選手権10000mで3位に入っている吉居大和(トヨタ自動車)が招待選手となる。一般参加では東京2020オリンピックの男子マラソンで6位入賞を果たした大迫傑(LI-NING)がエントリーしている。なお大迫は12月7日にスペインで開催されるバレンシアマラソンに招待選手として参加予定。東京レガシーハーフマラソンの走りをステップに世界屈指の高速レースに臨む構えだ。

他にも吉岡龍一(Honda栃木)、坂本佳太(愛知製鋼)、富安央(愛三工業)、秋山清仁(愛知製鋼)らキャリア十分の実業団選手が参戦する。
それから大学勢では創価大が今年の箱根駅伝7位メンバーである山口翔輝、川上翔太、齊藤大空をエントリー。中央大も柴田大地、白川陽大、伊藤夢翔、七枝直ら主力級を登録している。他に國學院大と東京国際大の選手たちもハーフマラソンを経験して、箱根駅伝を目指していく。
女子エリート部門は東京世界陸上ケニア代表選考会の10000mで6位(31分35秒16)に入ったムワンギ・レベッカ(ケニア)、5000mで14分36秒89の自己ベストを持つメスクレム・マモ(エチオピア)、今年のぎふ清流ハーフマラソンを1時間7分37秒で制したジャネット・ニーヴァ(パナソニック)の3人が海外招待選手。国内選手ではハーフマラソンで1時間8分58秒の自己記録を持つ川村楓(岩谷産業)、昨年日本勢トップの清田真央(スズキ)が招待されている。

「かつて日本の実業団に所属していたレベッカ選手とトラックのスピードが魅力のマモ選手が引っ張っていくような展開になるのではないでしょうか。ふたりともハーフマラソンは初挑戦になりますが、条件に恵まれれば、大会記録(1時間7分27秒)を更新するようなレースになるかもしれません。それから川村選手、清田選手らがどこまで海外勢と上位争いできるのか楽しみです」
一般参加ではハーフマラソンで1時間10分台のベストを持つ中野円花(岩谷産業)がエントリー。それから東京2020オリンピック5000m日本代表の萩谷楓(佐久市陸協)も参戦する。
「萩谷さんは主催者推薦競技者というかたちでの参加になります。2023年4月末に所属企業を退社しましたが、翌年からトレイルレースに出場するなど復帰の道を進んでいます。どこまで走れるかは未知数ですが、5000mで14分59秒36の自己ベストを持っており、まだ25歳になったばかり。今大会を足掛かりに本格復帰してくれるのではないでしょうか」
東京レガシーハーフマラソンは国立競技場がスタート&フィニッシュ地点で、今年9月に開催された東京2025世界陸上のマラソンで使用したコースを走ることになる。東京マラソンのコースともかなり重複しており、東京マラソンを目指すランナーにもピッタリの大会だ。また一般エントリーでは今年から「女性ランナー先行抽選」を設けたこともあり、女性の参加者が例年の20%前後から37~38%に増加。さらに華やかな大会になりそうだ。

「私ども東京マラソン財団は2022年に第1回大会を開催しました。第4回大会となる今回で大切にしている想いは『オーセンティック(本物)』であることです。洗練された大都市・東京ならではのハーフマラソンとして新しいオーセンティックさ――『TOKYO AUTHENTIC』――をビジョンに掲げてさらに進化していきます」
世界トップクラスの選手が1万5000名ものランナーとともに東京を駆け抜ける。ハーフマラソンでも新たな伝説が生まれるだろう。