前田健太退団のダメージを得点力で埋め合わせている広島

 以下、各球団における数字は、各指標の「値」とリーグ平均との「差」、リーグ内での順位を並べている。打撃で登場するISOは長打率から打率を引くことで、単打による数値の上昇分を取り除いた純粋な長打力を示す数字だ。

 投球で登場するK/9、BB/9、HR/9は登板9イニングあたりに換算した、奪三振数と与四球数、被本塁打数となる。守備の箇所のDERは、フェアグラウンドに飛んだ打球(ファウルと本塁打を除いた打球)のうちアウトになった打球の割合。ヒットになったり失策したりして出塁を許したケースの頻度から野手の守備力を推定する数字だ。

では早速、セ・リーグ、パ・リーグの順に見ていこう。

 前田健太の流出による戦力ダウンで苦しい戦いになるかと思われた広島だが、出塁率と走者を返す長打力をとらえるISO(長打率-打率)がともにセ・リーグ1位。丸佳浩や菊池涼介、ブラッド・エルドレッドの活躍により、確実性とパワー両面に支えられた盤石な得点力でディフェンス力をカバーし上位で戦っていることが数字から見えてくる。投手は三振がとれず四球も決して少なくないのだが、被本塁打の少なさに救われ、失点はそこまで増えていない。投手陣がこのレベルを夏場以降も保てるか――それがAクラス入り、さらに優勝を目指す上でのカギになる。 (図1参照)

 しぶとい戦いを見せてきた巨人だが、得点力がいっこうに上がらないまま。坂本勇人、ギャレット・ジョーンズ、村田修一らが長打力を見せてきたが、走者をうまく溜められていないことがその要因で、出塁率は平均を2分1厘も下回っている。これは打力がない小林誠司を正捕手に据えている状況や、立岡宗一郎らの不調が響いた結果。また、ルイス・クルーズや長野久義の四球率の低さも響いているようだ。投手は昨年ローテの軸のひとりだったマイルズ・マイコラスを欠きながら菅野智之の突出した働きなどでカバーし、平均レベル以上の成績を残している。ディフェンスが生命線であるため、菅野の状態がどこまで維持できるかが生き残るためのポイントとなる。 (図2参照)

 中日はほとんどの成績が平均レベルにある。得点の入りにくいナゴヤドームを本拠地にしていることを考えると、打者の貢献がやや大きく、それに支えられた状態と言えるだろう。先発投手はケガ人が相次ぎ、規定投球回に到達しているのは若松駿太のみ。それでも外国人3投手の活用で試合をつくり、田島慎二を筆頭に力を見せるリリーフ陣につなぎ勝ちを拾えた。決して十分な戦力ではないにもかかわらずふたつの貯金を確保できたのは、このあたりのマネジメントがうまくいったからだろう。ここからは、離脱していた大野雄大らの復帰など上積み要素はある。打線を支えるダヤン・ビシエドの勢いが持続できれば、Aクラス争いへの参加の道も開けてきそうだ。(図3参照)

投手が急成長を見せるDeNAは夏場以降もこの調子を維持できるか?

 得失点はほぼ平均だったが、それらとつながりの強い各種成績にはバラつきがあった。得点絡みでは、平均的な出塁能力に対し長打を打つ力が平均を大きく割っている。これは本拠地の甲子園の特性とマウロ・ゴメス(ISO.231)以外に安定して長打が出るレギュラー選手が見られなかったことが影響している。投手については、9イニングあたりの奪三振数ではリーグトップだったのに対し、同与四球数では最下位。ここには、藤浪晋太郎やリリーフ勢の成績が反映されている。打球処理に関する数字であるDERもリーグで最も低く、他球団に比べ安打が生まれやすい状況で戦っていたようだ。得点の大幅な増加は見込みにくいので、失点をいまより減らすことで勝利を増やしていくのが浮上のポイント。もう少し守備力を意識した布陣の検討も必要なのかもしれない。 (図4参照)

 投手力と守備力の安定によって、失点をリーグで一番少なく抑えることができた。四球を与えるペースがかなり低く、三振も阪神に次ぐペースで奪っている。これは今永昇太、石田健大ら若手やギジェルモ・モスコーソなどの先発投手が牽引した結果の数字だ。一方で得点力は低く、出塁・長打の両面でリーグ平均を割っている。外国人選手の不振に加え、安打で出塁できる打者は四球が選べず(倉本寿彦など)、四球を選べる打者は安打が少なめという(筒香嘉智など)アンバランスが生じている。若手先発陣がこのまま夏場を超えていけるかどうか、また、補強も含めた打撃成績の改善の成否次第で、大きな浮上・低迷どちらもあり得そうだ。 (図5参照)

 失点がセ・リーグで飛び抜けて多い状況にある。また、三振をとれず四球も多い。さらに被本塁打も多く、溜めた走者を一発で返されがちだった状況が伺える。このバランスは本拠地の神宮球場の狭さも影響しておりヤクルトの宿命とも言えるが、昨シーズンは得点力でカバーできる範囲に抑え込んだ失点が今シーズンはそれを超え膨らんでいる。これが最下位に沈むことになった原因。実績のある打者の多いヤクルトなら、ここから得点力をさらに圧倒的なものにして打開する形もないとは言えないが、なんらかの方法で失点のコントロールを図るのがまずは取り組むべき課題になる。(図6参照)

ほころび見えないソフトバンク ロッテはややでき過ぎ?

 貯金12を143試合あたりに換算すると41となり、これは昨シーズンと同じ数。順調という他ないが、成績の中身を見ても盤石だ。パ・リーグ2位の得点力はバランスのよい出塁率とISOによって支えられている。李大浩は抜けたが、指名打者を務める長谷川勇也がここまでに5本塁打するなどして長打力を支えている。投手は攝津正の不調はあったものの、千賀滉大、和田毅や東浜巨らによって何事もなかったかのようにカバー。ホームランテラスの影響で被本塁打こそかさんでいるが、出塁を抑えられているので失点の増加にはつながっていない。 (図7参照)

 中身を見ると派手な成績ではないが、結果的に得点ではパ・リーグトップにある。ディフェンス側を見ても同じで、四球をできるだけ出さず、一定レベルで打球の処理を図ることで失点を平均レベルに抑え込んでいる。ほぼ完成された戦力で、妥当な結果を出すソフトバンクとは対照的だ。ただ、さすがに内容に対して得点が入り過ぎている、つまり巡り合わせがよかった可能性があるのだ。もし得点が落ちこんでくれば、現在の平均的な投手力でさらに上に登るのは難しそうだ。現実的には、いまの全員野球状態を最後までキープし、確実に3位に入っていくことを目指すというのが目標になるだろう。 (図8参照)

 打撃、投球、守備のバランスがよく、安定した力を発揮している。ISOが平均レベルで長打力のインパクトに欠けているが、今シーズン本塁打が出ている大谷翔平の成績を含めてこの数字であると考えると、大谷が打席に立たない試合の得点力は、少し苦しい状況にあると見るべきだ。大谷が投手として勝ち星に恵まれないのも、本人の調子に加えそうした事情が影響しているのかもしれない。投手陣は三振がよく獲れている。新外国人投手のクリス・マーティンや今シーズン頭角を現した高梨裕稔、井口和朋ら奪三振能力のある救援投手の存在が影響していると見られる。(図9参照)

ブランコ、クラーク、金子千尋に懸かるオリックス浮上の可能性

 とにかく、低い得点力に苦しんでいる。出塁できず、走者返す長打力も足りていない状況だ。長打力に関しては、目を覚ましつつあるトニ・ブランコ、補強したマット・クラークの外国人選手や、調子を上げてきたT-岡田らによって改善の余地がある。出塁については、打率と四球を選ぶ割合両方でリーグ最下位にあり問題は根深い。長打力主導での得点力回復が目指す形が理想か。ディフェンスでは四球の多さが目立ち、9イニングあたりで平均よりも約1個多い。打球の処理もあまりうまくいっていないようで、守備が投手の足を引っ張っている可能性がある。2年続けて厳しい序盤戦となったが、それでも金子千尋がエースとしての存在感を取り戻すなど光明はあり、昨シーズンに比べれば傷は浅そうだ。 (図10参照)

出塁できて長打も出ている状況ながら、得点はパ・リーグ平均レベルに留まっている。効率よく得点できていないようだ。ディフェンスは結果も中身も総じていまひとつだが、被本塁打だけはかなり少なく抑えており、パ・リーグでトップの数字を残している。これは投手が力のある球を投げているか、大きなフライが飛んだ際の風向きや球場のサイズなどとの巡り合わせでスタンドインせずに済んだ打球が多かった可能性、両方があり得る。もしこれが巡り合わせによるものであれば、今後西武のディフェンスはもう少し悪化する可能性大。得点面、失点面ともに、今後少し動きが出る可能性があるチームと言える。 (図11参照)

 開幕直後は高い得点力でリードする形での好調期間があったが、いつしか落ち着き、同時に失点もかさんだ結果最下位に沈んでいる。打撃の調子のよい岡島豪郎や四球をよく選ぶ嶋基宏らによって出塁率が高まったが、それを返す長打力の担い手がおらず得点効率が落ちている。ISOは平均を.018も割っており、楽天にとっての長年の課題が、今シーズンも露呈した格好だ。投手はパ・リーグ平均を0.7点も上回る平均失点を記録している割に中身は悪くない。三振もある程度獲り、四球も制御している。恐らくこれは救援陣が短いイニングで打ち込まれ失点を増やしていることが影響した現象と見られる。長打力の補完とブルペン整備が喫緊の課題だ。 (図12参照)

 チーム間の力関係はおおむね昨シーズンを踏襲しているが、各球団の戦力もまた、大きな変化を見せていないようだ。補強によって著しく戦力を高めたり、想定外の事態で戦力を大きく落としたりしている球団はあまり見られない。強いて挙げるなら広島、中日が打撃で、DeNAが投球で数字を改善したくらいか。

 ケガ人の出方や補強の成否など、不確定要素は多くあるため、今シーズンの戦いがこのまま昨シーズンをトレースするかは分からないが、素地にあるのは、昨シーズンに近い状況である。交流戦を目の前に控え、それが過ぎれば苦しい夏の戦いが控えているペナントレース。最後に笑う球団はどこだろうか。
※数字は2016年5月22日終了時点


山中潤

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