果たして、ドラフト指名選手はどれだけ活躍しているのか?
いよいよ、ドラフト会議が迫ってきた。本格派右腕・田中正義(創価大)を筆頭に、今井達也(作新学院)、寺島成輝(履正社)、藤平尚真(横浜)、高橋昂也(花咲徳栄)らの高校生投手勢、社会人ナンバーワン右腕の山岡泰輔(東京ガス)に佐々木千隼(桜美林大)、柳裕也(明治大)らの実力派大学生投手などなど、今年は投手豊作の年。どのように各球団の指名に反映されるかが、いまから楽しみである。
ところで、ドラフト会議は有望選手たちの進路が決まるドラマの一方で、各球団の戦力編制をもとにした戦略やスカウト眼がうかがえるという意味でも興味深いものとして見ることができる。ドラフト時は大物と騒がれていてもプロでは通用しない致命的な欠点があったり、あるいは戦力バランス的にチームにミスマッチだった結果、不本意な成績のままユニフォームを脱いだり……二軍でくすぶったりするケースも多々ある。ドラフト会議は他球団の指名やクジなど運も左右するので、なかなか理想通りいかないので責められない面もあるが、それでもドラフト指名にはやはり球団によって上手い下手があるのも確かだろう。
そこで今回は、過去5年のドラフト会議で指名した各球団の選手たちが、今季、どのようにチームに貢献していたかを調べてみた。もちろん、大ケガの治療中だったり、エアポケット的な不調に陥っている選手もいる。あるいは、高校生指名選手を中心に、いま、まさに伸び盛りでそろそろ一軍をうかがおうとする選手もいれば、現在、まさにチームが絶頂期ゆえに試合に出にくい状況の選手もいるかもしれない。つまりは、今季だけの成績で評価できないのも確かなので、それを踏まえあくまで“参考”としてのデータとなる。
各球団における「一軍戦力」となった過去5年の指名選手数
まず「今季、一軍選手として一定の貢献をチームにしたか」というということで、投手は「5勝」「30試合登板」「10セーブ」のいずれかをクリアした選手を、野手は「100試合出場」と全試合の約半分「70試合出場」をクリアした選手をそれぞれピックアップ。そのうち2011年から2015年のドラフトで指名された選手が何名いるかを調べた。

過去5年のドラフト指名選手がレギュラー野手の約半分を占めるDeNA
クリア選手の総数に球団間でそれほど大きな差がつかなかったのは、いわゆる「一軍選手」の数の目安のようでなかなか興味深い。だが、今回は別テーマだ。注目するのは過去5年のドラフト指名選手である。12球団中、クリア選手のうち2桁を超えたのがDeNA(11人)とロッテ(10人)。ただ、野手に絞るとDeNAは11人中6人、ロッテは12人中3人。すなわちロッテは一軍主力選手のうち過去5年のドラフト指名選手で締める割合が1/4なのに対し、DeNAは一軍主力野手の半分以上が該当。さらにDeNAは、「100試合以上出場」選手に絞るとロペス、梶谷隆幸、倉本寿彦、戸柱恭孝、筒香嘉智、桑原将志、宮﨑敏郎の7人中、倉本、戸柱、桑原、宮﨑4人が該当することになる。この割合は12球団中1位であった。
投手に絞ってもDeNAの11人中5人(*45%)は、セ・リーグでは巨人と並び同率1位で12球団でも3位。先発を担った石田健大、井納翔一、今永昇太、セットアッパーの一角・三上朋也、そして守護神・山﨑康晃らいずれも投手陣の貴重な戦力となっている。ちなみに投手に絞った12球団トップは日本ハムとロッテ(ともに13人中6人*46%)である。
DeNAの場合、もともと低迷していたチームということが若手選手を起用しやすい環境につながった事情はある。しかし、いくら指名選手を積極的に起用しても能力や適性がなければ活躍はできなかったはずだ。実際、オリックスなどは12球団中、投手で5位、100試合出場野手で2位につけたがチーム成績自体はリーグ最下位である。成績今季の球界を盛り上げたDeNAのクライマックスシリーズ進出、その要因のひとつに、近年のドラフトを上手に生かしたことは加えていいだろう。
オリックス、広島は活躍しやすい可能性がある?
さて、これを踏まえると今年もDeNAがどんな指名、どんな選手を狙ってくるかはなかなか興味深い。また、前述したオリックスは成績こそ奮わないものの、いまのところ現場は指名選手の起用には積極的。特に野手は西野真弘や小田裕也がドラフト下位指名にも関わらずルーキーイヤーから起用され、西野は今季、全試合出場を果たした。「とにかくプロの試合に出場して活躍したい」という選手には案外、オススメの球団かもしれない。
一方、投手では意外かもしれないがセ・リーグ優勝を果たした広島が面白い。実は投手陣のクリア選手8人のうち過去5年のドラフト指名選手は大瀬良大地の故障もあって野村祐輔ただひとり。また8人中3人は去就や長期契約が読みにくい外国人投手で、ひとりは大ベテランの黒田博樹。近い将来の投手陣に若手が割って入るスキは意外にある。もちろん前述の大瀬良に加え、九里亜蓮や岡田明丈、藪田和樹、戸田隆矢、オスカルなどが一軍主力定着をうかがっているが、まだ決定打はない。競争できる余地は十分にある。
田中広輔、菊池涼介、鈴木誠也など野手は新規選手がレギュラーをつかみ、優勝の大きな原動力になった広島、若手積極起用の機運はあるはず。次は投手の抜擢、活躍の番かもしれない。
プロ野球選手は試合に出てナンボ。ドラフト会議は球団戦力編制やチーム状況とのマッチング具合も踏まえてウォッチングするとさらに楽しくなる。
(著者プロフィール)
田澤健一郎
1975年、山形県生まれ。大学卒業後、出版社勤務を経て編集・ライターに。主な共著に『永遠の一球』『夢の続き』など。『野球太郎』等、スポーツ、野球関係の雑誌、ムックを多く手がける元・高校球児。