キャプテン就任もアリ
阪神史上最強助っ人といえば、これはもう誰がなんと言おうとランディ・バース。「終身名誉最強助っ人」です。
投手ならジーン・バッキーとジェフ・ウィリアムスというのが相場でした。バッキー、ジェフはともに7年阪神に在籍し、大活躍しました。
とくに、まだ記憶に新しいジェフ(といっても、引退してもう7~8年経つんですね)は、藤川球児や久保田智之らリリーフ投手を束ねて、チームを鼓舞しました。外国人であることを感じさせない、まさに"ブルペン・リーダー"の存在感でした。
ジェフから背番号「54」を引き継いだのがメッセンジャー。今やメッセが投手全体のリーダーです。今季もすでに10勝(5敗)、これで8年目にして6回目の2ケタ勝利です。先発に専念した2年目以後、ずっとローテーションを守り続けているのですから、本当に頼りになります。
抜群の成績で「背中で引っ張る」だけではありません。毎年、「自分こそ開幕投手にふさわしい」と声に出してアピール。新外国人が来日すれば、生活のアドバイスからラーメンのチョイスまで、親身になって面倒を見ます。先日は、調整日の練習を鳴尾浜で決行し、悩める藤浪晋太郎に声を掛け、若手投手たちに練習の大切さを伝えていました。なかなかできることじゃありません。
阪神のキャプテンといえば、鳥谷敬から福留孝介が預かり、負担を軽くしてあげているわけですが、どちらにしてもなんとなく物足りなさを感じます。そこへいくってえとメッセンジャーは、このような献身的な行動、勝つために団結しようという思い、チームへの愛情、そして成績と、どれをとっても満点です。間違いなく、メッセのキャプテンシーがチームを引っ張っています。来季は「日本人扱い」。投手キャプテン就任もアリじゃないでしょうか。
リリーフから先発へ!日本で急成長
しかし、来日当初のことを思い出すと、こんな日が来るとは思いませんでした。メッセンジャーは、肩の手術で引退することになるジェフに代わる中継ぎとして獲得しました。真弓阪神の1年目が終わった2009年のオフのことです。
当時メッセはメジャーとAAAを行ったり来たり。2004年から6年間はリリーフ専門で、メジャーで2セーブ、25ホールドを記録していました。
ところが、2010年、日本で投げてみると、制球があやふや。大事な場面で四球から崩れます。開幕からリリーフとして10試合ほど登板して、二軍行きの憂き目にあいました。
ところが、阪神は慌てず騒がず。これも想定内でした。二軍でじっくり時間をかけて先発調整、方向転換をしたのです。パワフルな剛球と、スライダー、フォーク、スローカーブといった多彩な変化球、そしてなにより長身から投げ下ろす角度。先発の適性ありと踏んでいたのです。満を持して7月にローテーション投手として使い始めると、あっさり結果が出ました。
日本の指導がフィットして、急激に上達する外国人選手がたまにいますが、メッセはまさにそれでした。もちろんメジャー級の力がもともとあったわけですが、自信と安定感を与えたのは、間違いなく阪神タイガースでの指導でした。
だから、メッセンジャーは、日本、そして阪神タイガースに忠誠を誓ってくれているのです。途中、メジャーから高額オファーもあったようですが、それに目もくれず、阪神に帰ってきてくれました。
運命的?な阪神タイガース入り
あらためて経歴を調べてみると、メッセは高校卒業後すぐにプロ野球選手になったんですね。出身地はネバダ州リノ(Reno)。ラスベガスに次ぐネバダ州第2の都市で、ラスベガス同様カジノをメインとした観光の街です。
いくつか面白いことを見つけました。このリノという街が発展した理由として、鉄道の開通が挙げられています。その鉄道の名前が、なんと「セントラル・パシフィック鉄道」。おおー。日本プロ野球と縁がある(笑)。
そして、もう一つ。この街は近くにあるタホ湖から流れ出る川に沿って発展しているのですが、その川の名前が、なんと!――「トラッキー川」(Truckee River)。
誰かこの衝撃の事実を、カタカナ表記の説明とともにメッセに教えてあげてください。きっと「ワオ!」と言ってくれるでしょう。言わないか。故郷を流れる川が、あの国民的マスコットキャラクターと同じ名前とは……メッセのタイガース入りは運命だったんですね(笑)。
先日のオールスターゲームでは、2年目のマテオがファン投票でサラッと出場しましたが(腰大丈夫?)、功労者のメッセンジャーは未だに出場経験なし。最多勝や奪三振王というタイトルも獲っているのに意外です。本人も出たいと言っていましたので、来年はぜひ出られるといいですね。
いや、それより何より、これだけ長い間チームを支えてくれているエースと一緒に優勝しましょうよ。バッキー、ジェフはチームを優勝に導いています。「最強助っ人投手」の称号のためにもね。
そして、あの巨体を胴上げしてあげましょう。きっと涙を流して喜ぶことでしょう。そんなメッセが見たいんや!