長期ロード、今年も快調に乗り切った!

夏のロード最終週、下位にいるヤクルト、読売との対戦なので、勝ち越して終わりたかったところですが、3勝3敗の五分。小野泰己、青柳晃洋、藤浪晋太郎といった、現時点ではなかなか「勝つイメージ」が定着しない投手を先発させないといけないところに苦しさがあります。
逆に言うと、五分の戦いをしながら、勝つための「修行」ができているのですから、上出来かもしれません。藤浪も復活への足がかりを見つけたでしょう。

ともかく、1カ月にも及ぶ夏の長期ロードを16勝10敗1分と、5年連続の勝ち越しで切り抜けることができました。
「死のロード」と言われたのは過去の話、むしろドームが多くなるので「夏はロードに限る」という感じです。

古巣中日戦での移籍初ヒットから立て続けに

そんな前週、密かに「旬」を迎えていたのが「いぶし銀」森越祐人です。いずれも代走や守備固めという途中出場でしたが、6試合のうち4試合に出て、6打席4打数2安打、1四球、1犠打。
23日のヤクルト戦では、西岡剛に代わってセカンドの守備固めで入り、9回に第2打席が回ります。ここでヤクルトのリリーフ左腕・中澤雅人からレフト線への二塁打。
これは20日の延長11回、古巣・中日の岩瀬仁紀から放ったレフト前ヒットに続く今季2本目、出場2試合連続ヒットでした。
さらに翌24日、ロジャースの代走から上本博紀に代わってセカンドを守り、8回一死で打席が回るとライトへの二塁打でチャンスを作りました。
26日の読売戦では、6回無死一塁で能見篤史への代打として登場。見事に送りバントを決めます。8回の第2打席では、先頭で四球を選び、ダメ押しのホームを踏んでいます。

まあ、「それだけのこと」と言ってしまえばそうなんです。でも、森越にとってはとてつもなく大きい1週間でした。
阪神に移籍して去年までの2年、出場はわずか9試合、打席には9回入っていますがヒットはありませんでした。
さかのぼれば、中日時代も一軍の試合出場は40試合しかなく、22打席立って打ったヒットはたったの2本のみ。
ですから、過去6年のプロ生活で打った2安打を越える、3本のヒットを打ったのがこの1週間だったのです。しかも、今まで打ったことがなかった長打を、2本も打ちました。
プロとして、そんなことで大騒ぎをするわけにはいきませんが、森越の心の中ではもう盆と正月が一緒に来たような、お祭騒ぎだったに違いありません。やったね!

思わず応援したくなる苦労人

森越は1988年8月生まれ。田中将大、前田健太、柳田悠岐、秋山翔吾、坂本勇人……あの黄金世代の一員です。
阪神にやってきたのは、2014年のオフ、鳥谷敬のメジャー挑戦に備えてのことでした。結果的に鳥谷は阪神に残り、昨年、一昨年はほとんど出場のチャンスがありませんでした。このままではヤバイという意識は当然あったでしょう。

そして今年、森越にようやくチャンスがやってきます。糸原のケガ、さらにセカンド守備固めが不可欠というチーム事情の中で、8月3日に一軍登録。移籍3年目にして、やっと順番が回ってきました。
そして、「セカンドの守備固めなら森越」の評価を固めるプレーを見せつけました。8月11日のDeNA戦、7回一死一塁で飛び出した6-4-3のダブルプレー。ショート大和が三遊間のゴロに追いついてジャンピングスローで二塁送球、素速いピボットから正確な一塁送球で6-4-3の併殺完成。
試合後、大和は謙遜しながら、「あれは森越でしょう」とセカンド森越の素速い送球をたたえました。
自主トレ、春キャンプとコンビネーション練習を重ねてきた二人による本当に美しい、ムダのないゲッツーでした。

移籍初ヒットを打った日、中継では「指導してくれたバッティングコーチに感謝しています」というような森越のコメントが紹介されていました。
多くのコーチが、森越の真面目でひたむきな練習態度を褒めているのも聞いたことがあります。みんなから応援されている選手だというのが伝わってきます。戦力外も乗り越えた苦労人ですから、ファンとしても思わず応援したくなる選手です。
これは私のなんとなくのイメージでしかありませんが、森越は将来いいコーチになれるのではないでしょうかね。

バッティングでも結果が出てきましたし、ぜひスタメンも狙ってほしいところではありますが、まずは勝ち試合できっちり仕事をするのが一番。
リードを守るという点では、セットアップマンやクローザーと同じです。森越が活躍する場面が多いということは、チームの状況がいいということ。
試合終盤の超美技がたくさん飛び出すことを願っています。


鳴尾浜トラオ