次は「20秒ルール」がやってくる?
当連載もこれが今年最後の更新。「まったり」やっておりますが、こんなんでいいのでしょうか? ダメと言われても困るんですけどね(笑)。
さて、今日は「時短」について考えることにします。MLBで導入された、監督が意思表示すれば、投げずして敬遠四球が成立するというルールは、とくにNPB選手会から反発なく、すんなりと輸入されることになりそうです。
しかし、MLBの時短への挑戦は、これに留まりそうにありません。どうやら近いうちに「20秒クロック」という、バスケットボールのショットクロック的なものが導入されそうです。投球間隔を20秒以内にするというもの。数年前からマイナーリーグでは実証実験が済んでいて、MLBにも1年前に導入予告済み。選手会の反対でMLBには導入していませんが、予告期間を置けば、ルール上は機構の一存で導入できるということです。
この20秒ルールに対しては、選手だけでなく、ファンからも反対意見が多く寄せられているようです。「野球は間のスポーツであり、この時間にいろいろと考えをめぐらせるのが面白いのだ」というのが、ファンの声。日本の野球ファンも「そのとおり!」というところではないでしょうか。
「時短は新たな野球ファン獲得のため」は本当か
もちろんMLBのコミッショナー、ロブ・マンフレッド氏だって、選手やファンが「時短」に賛同していないのは百も承知。それでも進めなければいけない理由があると考えているのです。
それはすなわち、試合時間が長すぎるため、他のエンターテインメントに比べて不利となり、そのせいで新しいファンが増えていないというもの。カネも力もあるMLBの事務局なので、確かなマーケットリサーチがあって、そう言っているのだと思います。
今現在野球が好きなファンにとっては、試合時間が長くても大きな問題はありません。野球が面白くて、大好きなんですから、長い試合だって「いいぞーもっとやれー」てなもんです。むしろ、楽しみにしていた野球観戦が、ホイホイホイホイと貧打戦で2時間ほどで終了してしまったらガッカリする人が多いでしょう。
既存のファンはともかく、試合時間を短くしたら、本当に新たな野球ファンが獲得できるのでしょうか。試合時間短縮は、その仮説に基づいて行われているのですが、どうもNPBの場合は、そうとも言えないような気がします。長時間であることで、避けられてしまうという要素はあるかもしれませんが、そこが核心だとは思えません。
アメリカ人が考案する仰天「時短ワザ」の数々
プロ野球からちょっと離れるのですが、私は「アメリカ人と時短」に関する話を知っています。軟式野球がないアメリカでは、草野球といえばスローピッチソフトボールだという話は以前もこちらに書きました。私は、アメリカ人たちがやっているリーグで一緒に遊んでいるのですが、そこのルールには、いろいろ面白い「時短ワザ」があるのです。
1面のみのグラウンドで、7回までの試合を1日で6試合こなすために編み出されたさまざまな工夫。敬遠が一声で終わりなのは当たり前、柵越えのホームランが出たら、ダイヤモンド1周などせず、1塁まで行ったら終わり(笑)。
画期的なのが、カウント1ストライク1ボールから打席が始まる「1-1ルール」。スローピッチは2ストライクからファウルを打つと三振というルールなので、みんなストライクはガンガン振っていきます(笑)。
さらにイベントなどでもっと試合数を増やしたいときには、「1ピッチゲーム」という特殊ルールもあります。ピッチャーはホームラン競争みたいに攻撃側から出します。勝負は1球、つまり各打者の打席は2ストライクから始まり、見逃せばどんな悪球でもストライクというルールです。当然、試合はどんどん進んでいきます(笑)。
遊びのローカルルールですから、いろんな工夫が出てくるわけです。直接プロ野球とは関係なくても、こんなゲームをやっている人たちなので、比較的「時短ルール」の導入には抵抗がないのかもしれません。
40年間で40分間、試合時間はのびていった
ここしばらく、MLBが次々とルールの改革を打ち出し、1年遅れでNPBも導入するというパターンが続いています。このままいくと、アメリカの時短ワザが日本でもどんどん採用されるハメになる予感があります。でも、日本プロ野球の面白さを損ねてしまうことも考えられるわけで、ここは独自の時短ワザも考えたいところ。
今でもよく覚えているのは、「今、試合開始から3時間を越えました。長い試合になりました」という実況アナのセリフ。そして、「3時間を越えましたので、延長戦はこれより先のイニングには入りません」という「3時間ルール」です。セは1974年~1981年、パは1974年~1987年。その前後には3時間20分ルールもありました。
当時の平均試合時間はどれくらいだったのでしょう。2時間30分くらいだったのでしょうかね。約40年かけて、試合時間が約40分のびたので、毎年1分ずつのびた計算ですね。
よく投球間隔が問題と言いますが、打者がバッターボックスに入るまでも時間がかかっています。昔だったらネクストサークルからトコトコとバッターボックスに入りましたが、今は出ばやしが鳴って、MCのコールとビジョンの演出に迎えられて、カッコよく登場します。足元を入念に固めて、打撃手袋をきっちり巻き直して、いろいろルーティーンをやって……。それがまたファンにとっては楽しい時間なんですけどね。
「キャッチボール」で動機付け!リメンバー高校球児!
最後に私から提案です。
時短のためには、「動機付け」が必要。なんとかして、今より20分(できたら30分)、試合時間を短くして、その分、20分遅れで試合開始できるようにできたらいいと思います。そうすれば、仕事帰りで遅くなって、試合開始直後のシーンを見損ねることが少なくなりますし、球団は弁当やビールをたくさん買ってもらいましょう。
で、前座として「子どもイベント」をやったらいいと思うのです。今、選手会が力を入れている「キャッチボールクラシック」なら、外野スタンド前の芝生でできるのでグラウンドを荒らさずにできます。お客さんの目の前で、盛り上がると思います。あれなら短時間で、たくさんの子どもたちがいっぺんに参加できますし、予選&決勝のようなゲーム性も高い。
今は、野球チームごとに参加するパターンが多いみたいですが、できれば「大なわとび」とか「30人31脚」みたいに「小学生クラス対抗」にしたらどうでしょう。そうしたら、休み時間にキャッチボールの練習をする子が増えるんじゃないかな。そしてプロ野球のグラウンドでキャッチボールした思い出とともに、プロ野球ファンを増産していく……いいんじゃない? これ!
問題は「どうやって試合時間を短くするか」ですよね。でも、これもよく言われることですが、高校野球の時代には1試合2時間足らずで9回まで試合していたんですよ。高卒ルーキーにいたっては、ついこないだまでそんな野球をしていたんです。だから、2時間半とか2時間40分の野球をやろうと思えばできないことはないはず。
未来のお客さんを呼び込むために、試合前に「小学生クラス対抗キャッチボールクラシック」をやる。そのためには、高校球児のときを思い出して、キビキビと試合をやる。それがいいと思いまーす!