オランダからの助っ人ミューレン

日本プロ野球初のオランダ人助っ人ミューレン。1994年にロッテに入団した頼れる強打者である。翌年はヤクルトへ移籍。ヤクルトに在籍していたイメージが強い方も多いのではないだろうか。ロッテでは4番を、ヤクルトでは恐怖の8番として活躍したミューレン。1995年の日本シリーズで9回にオリックス平井から打った同点ホームランは、ヤクルトファンには忘れられないだろう。誰もが認める人格者だったミューレン。とにかくよく練習するし、相手チームの研究も怠らない。あの辛口の野村克也監督でさえミューレンの人格を手放しで褒めていたほどだ。しかし、その紳士で奥ゆかしい性格からとある問題に巻き込まれてしまう事もあった。ロッテでチームメイトだった年上で実績もあるメル・ホールは、ミューレンをまるで手下扱い。ジュースを買って来させる、頭をひっぱたく、カンチョーを見舞う・・・。当時のチームでも大問題になり、監督が注意をするもホールはミューレンに執拗ないじめを続けていたのだ。そんな厳しい環境にも耐え、ヤクルト退団後はメジャーにも復帰したミューレン。その後の活躍は目覚ましいものだった。

指導者として上り詰めたミューレン

2009年にAAAのグリズリーズのコーチに就任したミューレン。と同時にオランダ代表のコーチとしても登用される。AAAでの実績を買われたミューレンは、翌年サンフランシスコ・ジャイアンツの打撃コーチに就任。2013年のワールドシリーズ制覇の手腕を評価され、なんとオランダ代表の監督にまで上り詰めてしまう。さらにである。その功績を讃えて、オランダのナイトの称号を与えられるに至るのだ。「ミューレン物語」として映画になってもおかしくないほどの、凄まじい出世である。(一方メル・ホールはその後とある罪で刑務所行きとなっており、対照的な人生を歩んでいる)
そんなミューレンの現在はFacebookにて知ることができる。

ミューレンのFacebook

現在もジャイアンツの打撃コーチをしているミューレン。なんとも良い顔をしている。その人柄と素晴らしい人生を謳歌していることが、この表情から伝わってくる。そしてとにかくアップされている写真が凄まじいのだ。まずはこちら。

ジャイアンツでの栄光の記録がこれでもかというほど並んでいる。更に我々の記憶にも新しいWBCの写真が。

全員が良い顔をしている、なんとも素晴らしい写真だ。後ろにバレンティンの姿もある。更に投稿を見ていくと、あの写真も出てきた。

おそらくこれはナイトの勲章であると思われる。ワールドシリーズの指輪に勲章。これ以上の名誉があるだろうか。しかしミューレンのFacebookを見ていると、これらの華々しい写真よりもっと印象に残るものがあるのだ。

そう、ミューレンの幸せそうな笑顔だ。ミューレンの優しさがにじみ出た、家族や仲間との写真は名誉や勲章より激しく心を揺さぶられるのだ。紳士に野球と向き合い、家族と仲間を愛する男がこのFacebookから浮かび上がってくる。故郷から離れた島国で辛い思いもした。その後も決して順調ではなかった。しかしひたむきに笑顔で努力し続ければ、大きな喜びが必ずやってくる。そんな事を教えてくれるミューレンのFacebookなのであった。


ザ・ギース尾関高文