初めてのセ・リーグからのオファー
今回は色とパターンについておはなしをひとつ。
楽天イーグルスが初の日本一に輝いた2013年の年末、新たな球団からユニフォームデザインのオファーをいただきました。東京ヤクルトスワローズです。自分としては、はじめてのセ・リーグ球団からのオファーだったので、大変うれしかったのを覚えています。本拠地である神宮球場は、人生で訪れた回数が一番多い球場だと思います。今でもすぐ横の軟式野球場を草野球で使っているので、縁があるんですよ。
スワローズさんからのオファーは、当初は2014年の企画ユニのデザインをオファーしていただいたのですが、納期まであまり時間がなく、満足いくデザインをするには時間が足りないと思ったために、お断りをさせていただいていたんです。ただし、「2015年のものであればぜひやらせていただきたい」とお伝えし、あらためてデザインさせていただくことになりました。
オファーをいただいたのは、“CREWユニ”と呼ばれるファンクラブユニフォームと、胸に「TOKYO」の文字を配した“燕パワーユニフォーム”の2種でした。当時のヤクルトは、企画ユニに緑のユニフォームを着用し始めており、『緑を活用した新ユニフォーム』というのがオーダーでした。
緑は、現在の12球団でも、メインカラーとしては使用されていなない色です。ただし、青よりのものや、明るいライトグリーンなど色味の幅が広く、最初のコンセプト決めが非常に難儀でした。
※ひとくちに緑といっても、非常に種類が多いんです。左から、南海ホークス風、メキシコ代表風、シアトルマリナーズ風を並べてみました
採用されたカラーは少し明るめの爽やかな色味のもの。実際には翌2016年にまた少し色味が変わったのですが、基本的にはポップなイメージになるように仕上げさせてもらっています。
ユニフォームはシンプルに。
このカラーを使って、2015年のCREWユニ、燕パワーユニの2種、さらに翌年以降も同じく企画ユニフォームをデザインしていくことになります。同系色を作ってのパターン出しって、なかなか大変なんです。私的には、ユニフォームはシンプルなものが一番カッコ良いので、奇抜な事をやって無理やり種類を増やすことはあまりしたくないんですよね。なので大きく分けて、メインカラーを全面に敷いて使うか、差し色のようにして使うかの2パターンで、デザインを組んでいかなくてはいけません。下の画像で、メインカラーをイカしたデザインパターンを揃えて見たので、見てみてください。
©︎大岩Larry正志※僕がやらせてもらった歴代のユニフォームです。年度は胸の番号通りになっています
そうして完成したのが、2015年のデザインでした。この年、ヤクルトは2年連続最下位から見事リーグ優勝を果たします。チームの優勝の力に少しはなれたのかな、と思っています。
仕上げに、遊びも少々
ちなみに、2016年にはホーム・ビジターのユニフォームもデザインさせてもらうことになりましたが、袖と襟に“リブ”という縁(ふち)を配置させています。4つ全てのユニフォームが同じコンセプトで作られている、という見え方をさせるアイデンティティとして、企画ユニにも同じようにリブを配置しています。基本的にできるだけ少ない要素で、シンプルにデザインすることを心掛けている中で、紺と赤や紺と緑というポップなイメージを持つこの球団のカラーに、この3色のリブはうまくハマったと思います。「ユニフォームを街着に」という僕のモットーにも沿った“パーツ”ですね。そんな“遊び”も入れるようにするのが、僕の小さなこだわりのひとつです。
■プロフィール
大岩Larry正志(おおいわ・らりー・まさし)
1975年生まれ。滋賀県出身。デザインオフィスONE MAN SHOW代表。
『野球とデザイン』をテーマに制作活動を続け、2008年には西武ライオンズ(当時)の交流戦用、09年に福岡ソフトバンクホークス『鷹の祭典』のユニフォームとグラフィックを。2012年からは楽天イーグルス夏季用ユニフォームや優勝ロゴ、同時に2015年からは、東京ヤクルトスワローズのユニフォームやグラフィック、ロゴのデザインを毎年手掛けている。
また、アニメ『The World of GOLDEN EGGS』のボイスアクターなどとしても活躍をしている。