ついにきたホーム&ビジターユニ
今回は、2015年の限定ユニフォームからデザインをさせていただいている東京ヤクルトスワローズさんとのお仕事についてです。2015年の開幕直後、早速翌年のお話をくださったのですが、なんとそれは限定ユニフォームのみならず、ホーム・ビジターを含めた4種類全てのデザインをしてほしい、というおはなしでした。過去に期間限定ユニフォームは何着も担当させていただいてきましたが、“チームの顔”とも言えるホーム・ビジターのユニフォームは初めてのこと。それが、自分自身も小さなころから見ていた、歴史ある球団のものでしたので、格別の嬉しさでした。
この年、東京ヤクルトスワローズは優勝争いを繰り広げていました。その激闘を横目に、翌年に向けた作業は進んでいました。例えば…
「ホームユニフォームにはストライプは残すのか?」
「ベース色は従来どおりの白・赤・紺か?それとも何か他の色か?」
「ビジターのYAKULTの書体は継続?それとも新規デザインなのか?」
などなど、ホーム・ビジターのものとなると、いつも以上に考えることは多くなります。歴史と伝統を加味しながらも、あらゆる新しい可能性を提案し、最終デザインに近づけていきます。
その中でもこだわったひとつがホームユニフォームに代表される“ストライプ”についてです。
こだわりのストライプバランス
いろいろと案を提案した結果、ホームの赤のストライプは継続することになりました。ここで、一度サンプルを作って検証をすることになります。それはその“ストライプ”の太さや間隔についてです。細い線が連続して並ぶ、いわゆるピンストライプではあるのですが、そのバランスは無限にあります。ミリ単位の違いで、イメージもけっこう変わるんです。メジャーリーグにもピンストライプのユニフォームのチームはいくつかありますが、同じように見えて実は全て、その太さや間隔が微妙に違います。
僕自身は2012年に楽天イーグルスのピンストライプユニフォームをデザインさせてもらいました。その際に、同じようにストライプの検証を重ねて決めていく作業をしていたので、その経験を元にこのヤクルトの時もいくつかのストライプを並べて決めていきました。
実際に制作したサンプルはミリ単位の違いで作っています。実寸でなければなかなかその差を表現することができないので、ここではいろいろなストライプの例をいくつか。例えば今年のホークス鷹の祭典のものは、縫い目のような柄が連続して線のようになっています。少し間隔が広くなっていますね。阪神のだと線が少し太いですかね。それらをスワローズのユニフォーム風に置いてみるとこんな感じ。

※上から決定したスワローズのもの・2017年ホークスの鷹の祭典風(少し間隔が広い)・阪神タイガース風(線が少し太い)です。ストライプひとつでイメージが変わるの、分かりますかね?
決定した物はそれまでのものより細く、間隔も広げたもので、それこそメジャーリーグで使用されているようなストライプに近くなりました。スマートな雰囲気にできたかなとおもいます。
長く愛されるものに
胸の“Swallows”ロゴは変更しないということだったので、あとは背番号の数字や背中の名前用のA~Zの書体を作っていきますが、全体的にシンプルでいいけど、何かそれまでのものと大きく変更した部分がほしいという球団からの要望をいただき、襟元と袖口に3色のリブを付ける事になりました。このリブはその後デザインしたビジターユニや限定ユニフォームにも同じように配置する事になり、東京ヤクルトスワローズとしてのユニフォームに一貫した特徴を出す事ができました。

※ストライプを細くしたのでスッキリしたイメージにできたかなと。
いまでも忘れない2015年11月23日のファン感謝DAY。2016年はこれでいく、という限定ユニフォーム2種類を含めた4着が同時に発表されるということで、僕も会場に出向き、その様子を見ていました。短期着用の限定のものとは違って、数年使用していくホーム・ビジターユニフォームということで、ファンの方々のリアクションが気になって、この時、実はいつもよりかなり心臓がバクバクしていました。気に入っていただいているかな、といまでもドキドキなのは、ないしょのおはなし。
編集協力:ベースボール・タイムズ
■プロフィール
大岩Larry正志(おおいわ・らりー・まさし)
1975年生まれ。滋賀県出身。デザインオフィスONE MAN SHOW代表。
『野球とデザイン』をテーマに制作活動を続け、2008年には西武ライオンズ(当時)の交流戦用、09年に福岡ソフトバンクホークス『鷹の祭典』のユニフォームとグラフィックを。2012年からは楽天イーグルス夏季用ユニフォームや優勝ロゴ、同時に2015年からは、東京ヤクルトスワローズのユニフォームやグラフィック、ロゴのデザインを毎年手掛けている。
また、アニメ『The World of GOLDEN EGGS』のボイスアクターなどとしても活躍をしている。
http://www.oneman-show.com