ヒットメーカーはタイミング調整が非常に秀逸

 バッティングは、タイミングを外されてしまうとスイングスピードが大きく減少してしまうため、当然ヒットが生まれにくくなります。そのため、ピッチャーはカーブやチェンジアップなど変化球を駆使してなんとかしてバッターのタイミングを外そうとしてきます。

 近年ではカットボールやスプリットなど高速系の変化球を武器とするピッチャーも増えてきており、ほんのわずかなタイミングのズレでもバッターを打ち取ることに有効であることがわかります。首位打者のタイトルを獲得するためには、単に速いボールを打ち返せるだけではなく、タイミングを崩そうとしてくる相手に対していかに崩されないかが非常に重要な課題となります。

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タイミング調整のキーポイントは2つ

 バッターがタイミングを合わせるためのポイントは大きく分けて2つあります。話が複雑になるのを避けるため、ここではコースに関しては除外します。

1)目の使い方

 目の使い方といっても、単に動体視力が高いということだけでは事足りず、高速で動くボールにバットを正確に当てるためには、目で認識したものを身体を動かすための回路に接続する正確性と速度も要求されます。

 そのためにはボールにピントを合わせてはいけないという、これまでの常識とは異なる認識が必要となります。この点は非常に奥が深く、また別の機会に触れたいと思います。

2)バットを振り出すタイミング

 差し込まれる、泳がされる、という表現があるように、バットのスイングはある程度速度が上がってからでないとボールを強く飛ばすことはできません。つまり一定のゾーンでボールを捉える必要があります。

 そのため、タイミングの調整のカギはバットを振り出すタイミングということになります。東北楽天ゴールデンイーグルスの岸孝之投手のようなスローカーブが来た場合、多くのバッターがボールが来るかなり早いタイミングで腰が回り出してしまいます。これがバットを振り出すタイミングを崩された、いわゆる泳がされた状態です。

 逆に、腰が回り出すのを我慢し、スイングの開始を遅らせることができればヒットにできる確率が上がります

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タイミングをずらされても優秀な打者はお尻(股関節)で調整

 ここまで書いた視点を持って、セパの首位打者のタイミング調整を分析すると、かなり明確な共通項が見つかります。

 それはキャッチャー側の股関節、つまりお尻の使い方です。左バッター秋山選手であれば左側、右バッター宮﨑選手であれば右側のお尻です。

 タイミングをずらされたとき、彼らはお尻をグッと後ろ側に入れ込みます。その状態で少しピッチャー側にも入れます。この動きが何を意味しているのかというと、腰が回り始めるのを抑える役割を担っています。

 お尻がこのような動きをしつつ前側の足をステップしていくので、身体の左右が別々の方向へ動くことになります。これがいわゆる「バッティングの割れ」と言われる状態です。割れができると、そこからの急加速が可能となります。つまりいつでも急激にバットスイングが開始できる状態。

 セ・パの首位打者は、単に腰の回転を我慢しているだけでなく、割れを作りながらタイミングを調整できる能力が非常に秀でているのです。

参考動画|横浜DeNAベイスターズ 宮﨑敏郎選手

バランスの中で股関節を使うコモドスクワットトレーニング

 では、今回は首位打者に少しでも近づくため、タイミングをずらされた球にも反応し、的確にバットを繰り出すための運動をご紹介します。

「コモドスクワット」というトレーニングとしてプロ野球選手や多くのJリーガーにも導入してもらっています。少し難易度は高いですが、バランスの中でパワーを発揮するためには非常に重要なトレーニングです。

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 片脚で立ちます。

 この時、上半身や浮足はリラックス。軸足は、つま先ではなくくるぶしラインに体重がかかるように。

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 そこから、軸足とは「反対側の手と足」を前後に広げながら、上半身を倒して沈んでいきます。この時、軸足側の膝が前に出ないようにします。

 コツは、軸足側のお尻を後ろに出して、軸足の膝に胸を近づけていくようにすることです。

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 そこから腕立て伏せのような動きで上半身やおへそを地面にさらに近づけます。膝は身体の外側に少し逃がし、上半身が膝より下に行くようにします。

 軸足のお尻周りにはかなりストレッチがかかります。

 写真のように、この運動中は、一度も軸足のカカトを浮かすことはありません。

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 そのまま前後に伸ばしていた手と足をなるべく遠くの地面に着地。

 軸足の膝は前には出さず、カカトも接地したままキープです。

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 今度は引き返します。写真で腰に当てていた軸足側の手を上に伸ばしながら片脚で立ち上がっていきます。

 ロープで上に引っ張ってもらうようなイメージを持って行うと、バランス能力は高まります。

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 完全に腕を伸ばし、片脚立ちとなり、ここまでで1回です。バランスを崩さず、10回ぐらい連続でできるのを目指しましょう。

 いくら筋力が強くても、バランスの中で発揮できなければバッティングにはその筋力は十分には活かせません。特にタイミング調整では片脚立ちの状態でのお尻のコントロールがキモです。片脚バランスと筋力の同時発揮ができるように取り組んでみてださい。

 身体が硬くて難しいと感じた方は、こちらのストレッチから行ってみてください。


中野崇