【提案1】 高校野球文化を活かした地域対抗戦
日本時間の7月13日(現地時間12日)、日本よりも一足先にメジャーリーグのオールスターゲームが行われた。こちらは年に1試合のみの開催で、基本的に全30球団が1年置きに持ち回るシステムとなっている。単純計算でも贔屓球団の地元で開催されるペースは30年に一度だから、開催年のその週は、マイナーの有望選手が集う「フューチャーズゲーム」、前夜祭扱いの「ホームランダービー」、そして本戦の「オールスターゲーム」と、街全体が球宴ムード一色に染まる。
日本もメジャーに倣い、「1試合でいいのではないか」という声がよくあがるが(現在は2試合制)、球団数が少ないぶん純粋にプレミア感が増すとは考えづらい。むしろ、メジャーとはまったく別の改革路線で、幅広い野球を取り組む努力が必要だろう。
そこでひとつめの提案。ここ日本には、米国にはない根強い高校野球文化があり、現プロ野球選手のなかにも高校時代から甲子園を沸かせたスター選手が多数存在する。その選手たちが球宴で同世代のライバルたちと同じチームを組めば、多くのファンの注目を集められるのではないだろうか。
例えば、従来のセ・パ対抗戦ではなく、出身高校を基準に東西でチーム別けする。そうすれば、大阪桐蔭高の藤浪晋太郎(阪神)と森友哉(西武)がバッテリーを組み、一塁・中田翔(日本ハム)、二塁・浅村栄斗(西武)、三塁・中村剛也(西武)、右翼・平田良介(中日)など、バックを同高の先輩が守るフォーメーションが実現するかもしれない。
さらには、花巻東高出身の大谷翔平(日本ハム)が中田と対戦するなど、同一チーム同士の対戦も可能になる。奪三振率の高い大谷に対し、同じく日本ハムでチームメイトの中島卓也が、持ち前のカット打法でどこまで粘り倒せるかも見てみたい。
【提案2】 「●●世代」といった括りでチームを構成
ふたつめの提案。球宴といえば、かつては選手同士の交流も醍醐味のひとつだった。しかし、こちらも国際大会の普及で、いまや当たり前の風景になりつつある。それが同世代になればどうだろうか。幅広い年齢が集う代表戦よりも、もっと近い年齢の選手たちが集うことで、ベンチでワイワイやる姿が見られるかもしれない。
そうなれば、「●●世代」括りのような、同世代同士でチームを構成しても面白い。代表的なのは、やはり「松坂世代」だろう。主役である松坂大輔(ソフトバンク)は現在二軍調整中だが、ともにメジャー帰りの和田毅(ソフトバンク)や藤川球児(阪神)はまだまだ元気。さらに村田修一(巨人)や久保康友(DeNA)など、一軍で活躍している選手は多い。
働き盛りなのが田中将大(ヤンキース)、前田健太(ドジャース)の「88世代」。日本のプロ野球界にも坂本勇人、澤村拓一(ともに巨人)、柳田悠岐(ソフトバンク)、秋山翔吾(西武)、大野雄大(中日)、斎藤佑樹(日本ハム)らがおり、この世代だけで1チーム作れそうだ。
大谷と藤浪が代表的な「94世代」も勢力を拡大中だ。“神ってる”活躍で広島の首位独走を支える鈴木誠也や、ロッテ不動の正捕手に成長した田村龍弘。さらに北條史也(阪神)も今季は一軍定着を果たしており、来季のドラフト1位候補・田中正義(創価大)もこの世代に当てはまる。
ひと世代括りの選手選考は難しいが、例えば単純に30歳以上と29歳以下にチーム別けでもいい。そうすれば、試合前半は「88世代」中心でスタメンを組み、後半戦は「94世代」を中心にメンバーを替える。この形にすれば選手たちも同窓会的な感覚となり、出場意欲も増すだろう。
【提案3】 “イケメン枠”で新たなファンを獲得する
3つめの提案。せっかくなら、新たなファンも取り込みたいところ。現在はファン投票、選手間投票、監督推薦の流れで選手選考が行われているが、メジャー球宴で最後のひとりを選ぶ「ファイナル・ボート」のように、選手選考の段階で“もうひと盛り上がり”ほしい。
そこでオススメしたいのが“イケメン枠”である。投票の段階でイケメン用のチェックボックスがあり、誰かひとりに投票する。選考自体はもちろん実力優先で、最もイケメン票を集めても、ファン、選手間投票で上位ならそちらで選出される。そこから選考に漏れ、かつ監督推薦に選ばれた選手で最も票を集めた選手が、最後に“イケメン枠”として発表されるといったイメージだ。 2試合あるうちの1試合は、シンプルに“イケメンベストナイン”として送り込んでもいいかもしれない。やや偏った選手選考となるが、新たなファン獲得につながるなら一度トライしてみる価値はある。
代表戦の人気が高いサッカー界は、Jリーグ誕生からオールスター形式だった東西対抗戦を2007年限りで廃止した。それ以降はアジアチャンピオンズリーグの価値が高まり、クラブ単位での国際大会が注目度を増している。
野球界も一時、球宴の廃止・見直し案が検討されたが現存している状況にある。今年の交流戦では、巨人の菅野智之が強力ソフトバンク打線と対峙したが、それが球宴で再現されたところで、ファンは新鮮味を感じないだろう。もはや「セのエースvs.パの主砲」で盛り上がる時代ではない。だからこそ、プロ野球の新たな魅力をちがった形でどんどん発信してほしいのである。