前田と岩隈はエース級の働きも国内では激減した“18番対決”

 前田健太はドジャーブルーのユニフォームに袖を通しても、広島時代と変わらず先発陣の柱として力投を続けている。大黒柱である“最強左腕”カーショーが椎間板ヘルニアを患い、復帰は最短でも8月下旬に。そんな危機的状況を支えているのが、10勝7敗、防御率3.22の好成績を残している背番号18の新人右腕だ。

 マリナーズの岩隈久志も負けてはいない。こちらも7年連続2桁勝利のヘルナンデスが一時戦列を離れたが、岩隈は中4日でも淡々と投げ続け白星を量産。今季は被本塁打数が増え防御率こそ3.99だが、12勝7敗でリーグ最多勝を狙える位置につけている。

 メジャーに「18番=エース」という価値観は存在しない。だが、両投手とも主戦投手としての誇りを胸に異国でも快投を続けている。楽天時代に18を背負い、ヤンキースでは19番を付ける田中将大もヤンキースのエースとして奮投中。こちらは打線の援護を得られない我慢の登板が続いているが、そのなかで8勝4敗、防御率3.32の成績を残している。

 田中は楽天での最終シーズンに24勝0敗1セーブ、防御率1.27という驚異的な成績を残し、日本シリーズでもフル回転の働きでチームを創設初の日本一へ導いた。球団は“無敗男”の実績を称え「ふさわしい投手が現れるまで」と、18を準永久欠番にしている。日本球界も数年前までは、田中や前田、西武時代の涌井秀章など、エースナンバー同士の投げ合いが頻繁にあった。だがその光景も、今年に入ってからは激減している。

斎藤佑樹は未だ0勝……松坂は2年間登板なし

 田中、前田と同世代の斎藤佑樹(日本ハム)は、なかなか今季初勝利を掴めないでいる。日本ハムは球団新記録の15連勝を成し遂げるなど好調だが、斎藤自身はここまで先発3試合、救援6試合に登板し防御率3.92。2度目の先発となった7月13日のオリックス戦では5回無失点の好投を見せるも、打線の援護がなく勝利投手の権利を得られなかった。

 3度目の先発となった7月28日の西武戦では、多和田真三郎との“18番対決”が実現。結果は4回途中5失点の斎藤に対し、多和田は6回1失点。軍配は西武の新人右腕に挙がり、多和田は今季2勝目を本拠地初白星で飾った。

 そもそも現在パ・リーグで稼働している18番はこの2投手くらいで、大型契約でソフトバンクへ入団した松坂大輔は、なかなかコンディションが上がらずウエスタン・リーグでも5試合にしか登板していない。ロッテの藤岡貴裕は、春先こそ貴重な中継ぎ左腕としてチームを支えたが、左肘痛の影響で登録と抹消を繰り返す日々。オリックスの岸田護も右肩を痛め、5月5日の西武戦を最後に一軍マウンドから遠ざかっている状況だ。

藤川は救援登板で復調傾向。杉内は復活間近か!?

 セ・リーグでは昨オフの大幅減俸が話題になった杉内俊哉(巨人)が、股関節手術の影響で前半戦を全休した。それでも二軍戦にはすでに出場しており、状態が万全になり次第、一軍復帰となる見込み。チームも後半戦開始から首位・広島とのゲーム差を着実に詰めており、経験豊富なベテラン左腕の復活劇はさらなる追い風になりそうだ。

 杉内と同じく“松坂世代”の藤川球児(阪神)は、救援防御率3.14と経験豊富なポジションで安定感を取り戻した。春先は先発転向でモデルチェンジを図るも結果的に失敗。それでも知り尽くす得意のポジションで、チームのCS争いを最後尾から支える。

 42歳の三浦大輔(DeNA)は7月11日の中日戦で今季初先発を果たすも、4回6失点で黒星。期待された24年連続勝利は次回登板へ持ち越しとなったが、ラミレス監督は2度目のチャンスを示唆した。ヤクルトの3年目右腕・杉浦稔大は、4試合に先発した7月の月間防御率が9.17を記録し、期待し続ける真中満監督の怒りを買った。中日の高卒3年目・鈴木翔太は春季キャンプで痛めた脇腹痛が長引き、二軍戦でも登板は1試合のみ。セ・リーグも一軍で稼働しているのは藤川くらいで、残りの投手は二軍調整が長引いている。

現在のエース番号は19番!? 11番、16番も好投手揃い

 18番投手の不振が目立つなかで、新時代のエース番号となっているのが「19」だ。下記の金子千尋(オリックス)、菅野智之(巨人)、野村祐輔(広島)、藤浪晋太郎(阪神)ら以外にも、増井浩俊(日本ハム)、唐川侑己(ロッテ)と実力者が揃う。

 それに続くのが大谷翔平(日本ハム)、岸孝之(西武)らが背負う「11」と、有原航平(日本ハム)、涌井秀章(ロッテ)らが着用する「16」。「21」は西勇輝(オリックス)、中崎翔太(広島)、今永昇太(DeNA)ら、伸び盛りの若手投手が多い印象だ。

【その他の背番号:主な投手たち】
11番:大谷翔平(日)、岸孝之(西)、松葉貴大(オ)、塩見貴洋(楽)、由規(ヤ)、福井優也(広)、山口俊(De)
16番:東浜巨(ソ)、有原航平(日)、涌井秀章(ロ)、菊池雄星(西)、平野佳寿(オ)、今村猛(広)
19番:金子千尋(オ)、石川雅規(ヤ)、菅野智之(巨)、藤浪晋太郎(神)、野村祐輔(広)、吉見一起(中)、山崎康晃(De)
21番:和田毅(ソ)、内竜也(ロ)、西勇輝(オ)、釜田佳直(楽)、中崎翔太(広)、今永昇太(De)

 前田健太、田中将大のメジャー挑戦後は、プロ野球界における18番の輝きが失われつつある。かつて巨人でこの番号を背負った堀内恒夫は「背番号が選手を作る」との名言を残した。偉人たちの歴史と想いも継承しながら、現在の着用投手たちにはエースナンバーに見合う成績を残してほしいものだ。

※数字は2016年8月8日終了時点


BBCrix編集部