文/Baseball Crix編集部 写真/J SPORTS

「選手に重圧を感じさせない場作りをしたい」

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 侍ジャパンの常設化に伴い、2013年10月に就任した小久保裕紀監督。翌2014年2月、前年の日本シリーズを制した楽天の久米島春季キャンプから視察を本格的に開始し、シーズン中も解説業をこなしながら選手たちのプレーに熱い視線を注いできた。

 あれから約3年半。「僕にとっての集大成。全身全霊をかけて世界一を獲りにいく」と意気込む指揮官は、WBC過去3大会の印象的なシーンに意外な一戦を挙げた。それは“アナハイムの奇跡”と称された、第1回大会の2次ラウンド・アメリカ対メキシコ戦。韓国を含め2次リーグ1組に属していた日本は、このラウンドを1勝2敗で終えていた。準決勝進出は絶望的な状況だったが、その後、下馬評の低かったメキシコがアメリカを2対1で撃破。この結果、日本、アメリカ、メキシコの3チームが1勝2敗で並び、失点率の少なかった日本が奇跡的に準決勝進出を果たした。

 小久保監督はこの一戦を「衝撃的だった」と振り返り、勢いに乗った日本代表はそのまま初代王者へ駆け上がった。重圧を感じているのは他国の選手、スタッフも一緒。そのうえで「選手に重圧を感じさせない場作りをしたい」と雰囲気作りの重要性を説いた。

「投手を中心にした守り勝つ野球」。国内組の13投手に自信!

 4年ぶりのWBC、目指すはもちろん「世界一」だ。小久保監督は改めて「投手を中心とした守り勝つ野球」を標榜。実績があり期待していたメジャー投手は全員不参加となったが、指揮官は、先発、第2先発、中継ぎ専門、抑えと、それぞれのバランスを重視して選んだことを強調し国内組への信頼を口にした。

 先発は大谷翔平(日本ハム)、菅野智之(巨人)、則本昂大(楽天)、石川歩(ロッテ)に託す方針。第2先発候補として牧田和久(西武)、藤浪晋太郎(阪神)らの名を挙げた。投手陣のキーマンには宮西尚生(日本ハム)と秋吉亮(ヤクルト)の両サイドハンドを指名。「このふたりを中心に、残りの中継ぎ投手を決めた」と選考過程を明かした。

 宿敵・韓国に準決勝で敗れた2015年の「プレミア12」は、中継ぎ専門投手の重要性を痛感した大会だった。ここでの失敗、経験を踏まえ、今回は実績が優れる救援のスペシャリストを多めに招集。オリックスの守護神・平野佳寿もそのひとりだ。経験豊富な右腕に対しては、彼にしかできない“ある特徴”を挙げ高い評価をすると共に、国際大会という厳しい戦いのなかで幅広い起用を検討しているようだ。

大谷の二刀流起用に含み。青木の打順は「1番か2番」

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 野手陣にはチーム唯一のメジャーリーガー・青木宣親が加わった。指揮官は小柄ながらもメジャーで安定した成績を残し続ける青木の“強さ”を評価。起用法については「1番か2番」と明言し、「打撃対応に関する選手同士の意見交換など、豊富な経験にも期待している」とリーダー的な役割にも期待した。

 注目の4番打者は「中田(翔/日本ハム)か筒香(嘉智/DeNA)」と即答。昨秋の強化試合では三塁も守った山田哲人(ヤクルト)については「もうサードはない。セカンドで行きます」と具体的な起用方針にも言及した。

 そして大谷翔平(日本ハム)に関しては「まずはピッチャーで」と投手優先を強調。二刀流起用については「考えています」としながらも、「球界の宝。オーバーワークにならないよう日本ハムさんと調整しながら決めたい」と慎重な姿勢を見せた。


BBCrix編集部