文=河合拓

Fリーグを牽引してきた名古屋オーシャンズ

 Fリーグは今季、創設10周年を迎えた。その節目のシーズンに歴史が動こうとしている。これまで常にリーグタイトルを獲得してきたのは、「絶対王者」と呼ばれる名古屋オーシャンズだ。リーグで唯一の完全プロチームである名古屋オーシャンズは、優秀な日本人選手を獲得したばかりではなく、海外からも世界トップレベルの選手を加えてきた。その象徴的存在が2010-11、2012-13シーズンに在籍した、ポルトガル代表のリカルジーニョだ。来日当時25歳と脂の乗っていたリカルジーニョの加入は、サッカーに例えるならクリスティアーノ・ロナウドがキャリアのピークに日本のクラブでプレーしたようなものだ。逆に言えば、そうした世界トップレベルの選手を呼べるだけの資金が名古屋にはあり、プロクラブではない他クラブと大きな戦力差を生んでいた。

 世界的にも注目される名古屋は一発勝負のカップ戦タイトルを逃すことはあっても、リーグ戦では強さを見せつけてこれまで9連覇を達成してきた。しかし現在は10連覇に黄信号が灯っている。全33節で争われているリーグ戦の第27節終了現在、順位表の最上位にいるのはシュライカー大阪だ。2位の名古屋は勝ち点「11」の差をつけられており、名古屋が残り6試合を全勝しても大阪が3勝してしまえば、追いつくことはできないのだ。

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2017年1月7日、Fリーグ2016-17第27節が行われた。首位のシュライカー大阪はデウソン神戸を7-1で退け関西ダービーに勝利。勝ち点差9で追いかける2位の名古屋オーシャンズは、湘南ベルマーレに5-1で勝利。勝ち点差はそのままで、残す試合は6試合となった
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絶対王者・名古屋を追い詰めるシュライカー大阪

 絶対王者を追い詰めているシュライカー大阪を率いるのは、選手としてフットサル日本代表でも長年に渡って活躍した木暮賢一郎監督。スペインでプロ選手として活躍した木暮は、当時からどうすれば勝てるチームをつくれるかを考え、技術や戦術といったピッチ内のことだけではなく、選手構成やクラブの運営方法についても学んでいった。

 その木暮が率いた大阪は、実は2年前にも名古屋を追い詰めている。Fリーグはリーグ戦後上位5チームによるプレーオフでシーズンの優勝チームを決めるのだが、木暮が率いた1年目の大阪はリーグ5位でプレーオフに進出すると、リーグ2位のバサジィ大分、リーグ3位のバルドラール浦安を次々と破り、リーグ1位の名古屋が待つプレーオフファイナルまで勝ち進んだ。プレーオフファイナルの初戦を4-4で引き分けた大阪は第2戦でも6-5で勝利した。しかし、リーグ1位の名古屋には1勝のアドバンテージが与えられていたため、優勝を決めるための延長戦が行われた。そして、この延長戦に0-2で敗れたことで大阪は初タイトルを逃していたのだ。

 この敗戦があるからこそ、木暮監督はリーグで優勝できるチームづくりにこだわった。監督就任2年目には大分を戦力外となった日本代表の小曽戸允哉を獲得。そして就任3シーズン目となる今季の開幕前にはチアゴ、アルトゥールという2人のブラジル人選手をチームに加えた。そうした有力選手の補強に目が行きがちだが、その背後では就任直後の2年間で有力なベテラン選手から若手選手中心の選手構成に切り替え、加藤未渚実や水上洋人らの若手選手に出場機会を与えて経験を積ませていた。今季27試合で157得点と、1試合平均5点以上を奪う超強力な攻撃力を誇るチームができたのは、そうしたチームとしてさまざまな面でのベースアップがあったからだ。

 仮にリーグ1位になったとしても、大阪がタイトルを獲得するためにはプレーオフを勝ち上がらなければならない。しかし、現在のプレーオフファイナルは1試合を引き分ければリーグ1位のチームが優勝になるというレギュレーションに変更された。リーグ1位のチームが絶対的に有利な状態にある。9年間続いた歴史が変わる瞬間は、まもなく訪れるはずだ。


河合拓

2002年からフットサル専門誌での仕事を始め、2006年のドイツワールドカップを前にサッカー専門誌に転職。その後、『ゲキサカ』編集部を経て、フリーランスとして活動を開始する。現在はサッカーとフットサルの取材を精力的に続ける。