六大学野球で投げ銭導入

コロナの影響で、プロスポーツを中心に広がりを見せていた「投げ銭」サービスだが、ついにアマチュアスポーツの代表格である六大学野球でも導入された。BIG6TV上のバナーから各大学野球部にギフティング(=金銭的支援)を行えるようになっている。アマチュアスポーツでは、そもそも興行を実施できていないという状況もあるが、プロスポーツに比べると、あまり「投げ銭」サービスの導入が進んでいない現状がある。今までの事例としても、大津高校のクラウドファンディング(500万円を集めた)や、箱根駅伝で青山学院大学が独自に実施したギフティングサービスの導入などしか見られず、OB・OGからの寄付などに依存している部分がある。

六大学野球の「投げ銭」企画ページ(C)Unlim

「ビジョンが見えない」期待とは程遠いUNIVAS

ここ数年、「UNIVAS」に代表される、大学スポーツ改革がさかんに叫ばれてきたものの、大学スポーツの状況は芳しくない。横浜DeNAベイスターズの初代社長であり、UNIVASの設立準備委員会で主査を務めた池田純氏は、UNIVASの問題点を次のように指摘している。
「日本版NCAA設立という壮大なプロジェクトを進めるには、古いしがらみを絶ち、新たな血を注がなければならないのは当然のことだと思います。しかし、発足したUNIVASの組織構成を見ると、しがらみに配慮し、調整することが重要視されているかのようで、本場のNCAAをよく知る人材、大学スポーツの最先端にいる実践家も入っていません。このままでは、ユニバスが日本版NCAAのような発展を見せることはない。そんな強い危惧を私は抱いています。」
また、有名大学がUNIVASに参加していない事実もある。いち早く米国の大学で一般的な「アスレチックデパートメント(AD=体育局)」を設置し、モデル8校の一つに選定されていた筑波大も、参加を見合わせた大学の一つ。筑波大でスポーツ振興を担う特別職「スポーツアドミニストレーター」を務める佐藤壮二郎氏は次のように語っている。
「大学の意志が置き去りになっていくだろうという危惧を感じざるを得なかった。それが大きな論点です。ただ、その議論をする上でUNIVASを否定するのではなく、むしろ筑波大は、ビジョンが見えてくればためらいなく加盟して、リーダーシップを取っていく大学になるとも宣言しているほどです。ですから、まず筑波大の取り組みや考え方を理解していただければと思います。」

本家NCAAでも廃部の事態に

そんな中、本家ともいえる、アメリカでもコロナの影響で、廃部が決まった大学も存在する。背景には、絶大な人気を誇る男子バスケットボールの大会中止があり、それに起因して多くの大学で財政難を招いているからだという。スポンサー依存ともいえる構造のため、景気の良し悪しに依存する部分が存在してしまうのは紛れもない事実である。7月にはスタンフォード大学も、学内にある36の運動部のうち11競技を廃部にすることを公表した。スタンフォードといえば、多数のプロ選手やオリンピアンを輩出したスポーツの強豪校であり、ビジネススクールやメディカルスクールでも全米トップレベルを誇る名門校だ。NCAAディビジョン1に所属する大学が、運動部を多数廃部にする決断を下したことは業界に波紋を広げている。

日本独自の大学スポーツの発展に向けて

UNIVASの期待とは程遠い現状と、NCAAのスポンサー依存の構造の破綻。この二つを一挙に解消してくれるのが、冒頭に紹介した「投げ銭」であると言えるのではなかろうか。まだ事例自体は少ないものの、金足農業が銀行口座振込という、決してユーザーに「優しい」とはいえない方法でも、2億円を集めたという事例もあり、ポテンシャルは十分にあると考えられる。もちろん、NCAAのようにスポンサーによる大口の資金源は確保すべく、UNIVASも同様の活動を進めていくことが望まれるが、それと両軸という形で、ファンユーザーからも「投げ銭」という形で、少額でも多くの口数が期待できる資金源を確保することで、景気の善し悪しに依存しすぎない構造を作ることができる。今後、六大学野球のみならず、箱根駅伝などでも「投げ銭」導入は進んでいくのか、注目したい。

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VictorySportsNews編集部