元プロ車いすテニスプレーヤーで、ユニクロのグローバルアンバサダーを務める国枝慎吾さんと、東レ パン パシフィックオープンテニス大会アンバサダーの奈良くるみさんが、子供たちと一緒に、「The Heart of LifeWear “あったかい”を届けよう!」の授業に参加した。

 「ヒートテックで世界があったまる秘密を大公開」の授業では、東レ株式会社 テキスタイル・資材開発センターの吉光佐織さんが、ヒートテックに使用されている糸について説明した。

「ヒートテックを着ると、なぜあったかくなるのでしょう。吸湿発熱をする糸が使われています。皆さんの体からは目に見えない水の粒がたくさん出て動き回っています。それを糸がキャッチすることによって熱に変わって、ヒートテックが自ら温かくなるんです。ヒートテックに使われている糸は、ユニクロと東レが一緒に作っているんです」

 「ユニクロの能登支援」の授業では、ファーストリテイリング・サステナビリティ部の岡田恵治さんが、「地震から2年目ですけど、まだ仮設住宅で生活している方もいらっしゃるので、今年の冬も届けたいと思っています」と被災者への支援を続けることを表明した。

 株式会社ユニクロ(代表者/柳井正、塚越大介)は、40周年を迎えた2024年の秋冬から、世界の難民や子供たちや災害被災者など、困難な状況にある人々の生活を快適にするための支援として、ユニクロの主力商品の一つであるヒートテックを、世界28の国や地域に100万点以上寄贈する「The Heart of LifeWear」の活動を行っている。

 約53万点が、難民支援機関である国連難民高等弁務官事務所(以下UNHCR)からの要請を受けて、ヨルダンの難民キャンプに届けられた。また、約47万点が、全世界のユニクロ事業によって、事業国と近隣国で必要とされる人々に寄贈された。

 2024年12月には、LifeWearスペシャルアンバサダーを務める綾瀬はるかさんが、石川県の能登地域を訪れ、ヒートテックを届けた。

 また、「難民って何だろう」の授業では、UNHCR駐日代表の柏富美子さんが、子供たちにも理解できるようにわかりやすく難民のことを解説した。

 「世界にはいろいろな理由で、例えば、戦争で、自分のお家や町で暮らせなくなって、国を出て行かなければならない人たちがいます。そういう人たちは、どうするかというと、安心してごはんを食べたり、お友達と学校へ行ったりできるように、隣の国に行かなければならないことがあります。そういう人たちのことを難民といいます。

 みんなは、お友達が悲しい顔をしていたらどうしますか。『大丈夫?』って声をかけるんじゃないかな。そういうみんなの優しい気持ちは、世界のどこかで困っている人たちにも届けることができます。寒い国でお家に帰れない人に、温かい服を届けること、それは、みんなの優しい気持ちを届ける、とっても素敵な贈り物になります。

 難民の人たちは、毎日大変な日々を過ごしているんだけれども、本当に頑張って生きています。難民を知ること、応援してくれること、それが彼らの元気の素になります。心のどこかで覚えてくれて、優しい温かい気持ちを、遠い国にいるけど、どこかでつながっているかもしれない世界のお友達に届けてくれたらいいなと思います」

 ユニクロを展開する株式会社ファーストリテイリング(代表取締役会長兼社長/柳井正)は、2006年からUNHCRと連携して、世界の難民や日本国内避難民への医療支援を行ってきた。さらに、2011年には、世界の難民問題の恒久的な解決に向けて、より包括的な寄与をするため、アジアの企業として初めてUNHCRとグローバルパートナーシップを締結している。

 店舗で回収した衣料を、難民キャンプへ寄贈したり、ユニクロやジーユー店舗で難民を雇用したりして、難民の自立支援や、難民問題の啓発活動を行っている。

 ファーストリテイリング取締役 グループ上席執行役員 柳井康治さんは次のようにコメントを残している。

「毎年100万点を超えるヒートテックの寄贈活動は、2001年から24年間にわたります。服の寄贈を続けるユニクロにおいて、過去最大級の活動です。LifeWearを代表するヒートテックで人々の体と心を温め、生活にポジティブな影響を与えられる活動を続けていきます」

 2025年には、新たに100万点を超える寄贈が決定した。シリア国内への帰還民に50万点のヒートテックを寄贈する。併せて、全世界のユニクロ事業(日本、グレーターチャイナ、韓国、東南アジア、インド、オーストラリア、北米、欧州12カ国)が、50万点以上を、災害被災者、ホームレス、貧困層、社会的に困難な状況にある子供たちなどへ届ける。

 また、日本国内では、児童養護施設や、能登半島地震の被災地への支援を継続していき、全国へ10万点のヒートテックを寄贈する。

 今回、ローンチイベントに参加した国枝さんは、
「子供たちにとって、世界でヒートテックを必要としている方々がたくさんいることや、ヒートテックの機能性、なぜ温かくなるのか、そういうことも勉強になったんじゃないか。つい最近までアメリカで暮らしていましたけど、やっぱり異国に行って、人に優しくされることのうれしさ、それにすごく助けられることが多い。こういったイベントをとおして、人に優しくすることの大切さをみんなに伝えられたらなと思う」

 ユニクロと国枝さんの関係は、2009年から始まり、国枝さんが、プロとして活動していくうえで大事なビジネスパートナーとなっている。

「ユニクロさんのおかげで、車いすテニスのプロとしてやれています。継続してやってきて、ユニクロファミリーとしてやれている」

 授業の後には、テニスコートへ場所を移してテニスアクティビティも行われた。移動しながらラケットでボールを運ぶ競争では、国枝さんが本気になり過ぎてボールを2回落とすハプニングもあったが、笑いながらその場面を振り返った。

「やるからには、何でも本気でやらないといけない(笑)。それもまたメッセージかな。一生懸命やる大切さも伝えられたかな。子供たちと触れ合えることは、それほど多くないので、こういった機会は僕にとっても貴重です」

 2024年1月からアメリカ・フロリダに拠点を移して、約1年9カ月におよんだアメリカテニス協会(以下USTA)でのコーチの役目を終え、2025年9月に帰国した国枝さんは、同月に、日本車いすテニス協会の外部アドバイザーに就任した。

 テニスと車いすテニス、健常者と障がい者、目に見えない境界を無くすべく、未来に向かって動いている。国枝さんはアメリカで感じたことの一つとして、USTAでは、組織の中の部門の一つとして、車いすテニス部門があるということだった。将来、日本でも、日本テニス協会と日本車いすテニス協会が一つになる時が来るかもしれない。

「僕自身は、一つになることがもしかしたら正解ではないかもしれないけど、より近い方向でやっていくことは、よりこの業界(テニス界と車いすテニス界)を発展させていくことに近づくと思っています。究極としては、USTAが一つのモデルになるんじゃないかな。グランドスラムを持っている国では、テニス界と車いすテニス界が一つになってやっていく例がある。グランドスラム以外の他の国がどうしているか完全に把握しているわけでないですけど、そうしていくことが、この業界を発展させていくことは間違いないです。今回(2025年6月に)、川廷(尚弘)さんが(日本車いすテニス協会の)新会長に就任されたというのは、それに近づくきっかけになるんじゃないかというところを、僕は一番期待しているところではあります」

 寒い季節になると、毎日ヒートテックを着用している国枝さんは、世界中の困っている人々の手元にヒートテックが届けられることを希望している。

「ヒートテックを必要としてくれる人々が、世界にはたくさんいらっしゃいます。そういった方々に届ける活動に、ものすごく意味があると思っていますし、みんなが喜んでくれる顔を見るのが毎年楽しみです。世界をヒートテックで温かくしていきましょう」

 国枝さんの優しい気持ちと共に、今後さらに、「The Heart of LifeWear」の支援の輪が広がっていって、優しさと温かさで包まれるような世界で、多くの人々が笑顔あふれる平和で幸せな暮らしをできるようになっていくことを切に願いたい。


神仁司

著者プロフィール 神仁司

1969年2月15日生まれ。東京都出身。明治大学商学部卒業。キヤノン販売(現キヤノンマーケティングジャパン)勤務の後、テニス専門誌の記者を経てフリーランスに。テニスの4大メジャーであるグランドスラムをはじめ数々のテニス国際大会を取材している。錦織圭やクルム伊達公子や松岡修造ら、多数のテニス選手へのインタビュー取材も行っている。国際テニスの殿堂の審査員でもある。著書に、「錦織圭 15-0」(実業之日本社)や「STEP~森田あゆみ、トップへの階段~」がある。ITWA国際テニスライター協会のメンバー 。