仕事帰りのビジネスパーソンやショッピング客が行き交う東京ミッドタウン日比谷1階のアトリウムで行われた授賞式。多くの人が足を止め、時には拍手や歓声が会場に響くなど、吹き抜けになったパブリック空間が、華やかな空気に包まれた。

 授賞式の冒頭で、主催する「Number」の松井一晃編集局長は「私たちはスポーツが浮き彫りにする人間の魅力、人間の面白さをずっと伝えてまいりました。この春で創刊 46周年を迎えます。さらに 4年後には 50周年の節目を迎えるにあたりまして、もっと日本のスポーツ文化を豊かなものにしたい、スポーツの力でもっと日本を元気にしたい、そのために私たちももっと貢献したい、そういう考えにいたりました。その思いに大いに共感してくださったトヨタ自動車株式会社の協賛を得て、本日ここで『Number SPORTS OF THE YEAR 2025 presented by TOYOTA』を開催することができました」と、その趣旨を説明。「ご列席の皆さま、ミッドタウンに足をお運びくださった皆さん、どうか私どもとともに、日本に活力を与えるアスリートたちをたたえていただけませんでしょうか」と、熱く呼び掛けた。

 大きな一歩を記した今回の式典。色濃く浮かび上がったキーワードは「世界」だった。まず発表された1年間で最も見る者を興奮させ、輝いたアスリートを選出する「NumberMVP賞」には、競走馬のフォーエバーヤング(牡5歳)と坂井瑠星騎手(28)が選ばれた。ダートコースを舞台にした世界最高峰のレース、米ブリーダーズカップクラシックを日本調教馬として初制覇。しかも、日本人ジョッキーを背にしての快挙。「世界」を制した人馬のコンビが、堂々の表彰を受けた。

 大谷翔平投手(2021年)、羽生結弦(2014年)、中田英寿(1997年)ら名だたるアスリートたちが受賞してきた同賞の競馬界からの選出は、2005年の武豊騎手以来20年ぶり2度目。これまで60号の表紙を飾るなどスポーツとしての競馬を熱心に取り上げてきたNumberらしい視点で、その世界的偉業をたたえる形となった。

 同馬のオーナーで株式会社サイバーエージェント代表取締役会長の藤田晋氏は、ビデオメッセージを寄せ「誇りに思います。本当にどうもありがとうございます」と感謝。「賞金15億円のサウジカップをおかわり(連覇)し、去年取り損ねたドバイワールドカップに勝って、最後芝のレース…有馬記念になると思うんですけど、そこに出て『もっと芝で使えばよかったな』って後悔しながら無事に引退させるのが2026年の目標です」と、さらなる壮大な夢を明かした。管理する矢作芳人調教師は「この賞を人間以外の動物が受賞するのは初めてということで、そこに一番の喜びを感じていますし、光栄に思います」とニッコリ。坂井騎手は「チームで、フォーエバーヤングと(賞を)獲得できたということが何よりうれしいです」と、こちらもビデオメッセージで殊勝に喜びを語った。

 そして、続いたのが今回新設された部門賞の発表。中でも、メディアなどで大いに注目され、取り上げられたのが「NEW FACE賞」だった。「Number」で連載中の企画「FACE」に登場し、その後ブレイクを果たした若きアスリートが対象で、まさに「未来のスポーツ文化」を見据えて創設された「Number SPORTS OF THE YEAR」の趣旨と合致するもの。記念すべき第1回の受賞者には陸上・中長距離の久保凛(18)、ムエタイの吉成名高(25)、スケートボードの小野寺吟雲(15)と、いずれも若きスター候補として「世界」を舞台に活動する3人が名を連ねた。

(C)Number

 女子800メートル日本記録保持者で、東大阪大敬愛高3年の久保は制服姿で登壇し、トロフィーを受け取ると「日々たくさんの方への感謝の気持ちを忘れず、これからも頑張りますので、引き続き応援よろしくお願いします」と初々しい笑みを浮かべた。昨年は世界選手権(世界陸上)に出場するも、予選敗退と悔しい結果に。そこで痛感したという「世界との差」を縮めるべく、「自分の目標は世界で活躍してメダルを取れる選手になりたいっていうところなので、強くなるためには人よりも努力しないといけない。その気持ちは誰にも負けない自信があるので、もっともっと努力を積み重ねて、自分の目標を達成できるように頑張っていきたい」と力強く誓った。

 高校卒業後は積水化学に所属し、クラブチーム「TWOLAPS」で2012年ロンドン五輪男子800メートル代表、横田真人氏の指導を受けることが決まっている。「環境もステージも変わる中で、初心に戻ってもっと成長していきたい」と視線を鋭くした。

 吉成は、格闘技の舞台での「世界」を股にかけた活躍をたたえられ、晴れの舞台に招かれた。2025年11月にアジア最大の格闘技イベントONEの初代アトム級ムエタイ世界王座に就き、40連勝という偉業も成し遂げた。

 「ムエタイは本当に素晴らしい競技ですので、自分をきっかけにムエタイに関心を持っていただけるとうれしいです」と、吉成は競技の裾野拡大への思いを吐露。ムエタイが国技であるタイでは既にレジェンド級の知名度を誇る中、「ムエタイの強さを証明するために違う競技にチャレンジするっていうのも、僕はすごく興味がある。誰も成し遂げていないことをこれからも成し遂げたい」と“野望”を口にした。

 小野寺は、その才能が「世界」で注目される存在だ。2023年に国際競技会「Xゲームズ」千葉大会で史上最年少の13歳での初優勝を飾り、翌年にはスケートボード男子ストリートでパリ五輪に出場。 2025年12月には世界最高峰のプロツアー「ストリートリーグ(SLS)」の年間王者決定戦スーパークラウンで初優勝を果たした。

 タキシードで出席した小野寺は、「今年もいろいろな大会があるので、自分らしく自分のスタイルで、全力で頑張って一個一個勝っていきたい」とキッパリ。パリ五輪では熱中症とみられる症状が出て本来の力を出し切れず、全体14位で予選敗退という無念の結果に終わっただけに、「自分のやりたいことが全部決まらなかったので、ロスオリンピックでは 目の前の大会から全力で自分らしく勝っていきたい」と2028年の大舞台での栄冠を見据えた。

 ほかにも、長年にわたりスポーツ界やその競技界に多大なる影響を与えた選手に贈られる「レジェンド賞」に「NumberMVP賞」を歴代最多の4度受賞しNumberの表紙登場回数も最多の37回にのぼるイチロー氏(52)が選出され、アマチュアの世界一を争う「世界相撲グランドスラム」開催や五輪競技採用など「世界」での相撲の普及に取り組む元横綱白鵬の白鵬翔氏が、現役時代の成績にとどまらずその後も社会貢献に情熱を注ぐ姿勢を讃える「特別賞」に選ばれた。

 若き有望株から、レジェンドまで、そこに共通するのが世界基準で物事を捉えているということ。「NumberMVP賞」が始まった1980年代とはスポーツを取り巻く環境も大きく変わり、大谷がメジャーリーグでチームでも個人でも頂点に立ち、サッカーでは日本代表クラスの選手が早くからJリーグを飛び出して欧州で活躍するのが当たり前になった。全米記者協会から年間最優秀選手に日本選手で初めて選ばれた井上尚弥という絶対王者がボクシング界には君臨する。挑戦から成功のフェーズへ。「Number SPORTS OF THE YEAR 2025 presented by TOYOTA」の授賞式には、そんな日本のアスリートたちの現在地、そして輝ける未来が映し出されていた。

「Number SPORTS OF THE YEAR 2025 presented by TOYOTA」受賞者一覧

《NumberMVP賞》 フォーエバーヤングと坂井瑠星
 1年間で最も見る者を興奮させ、輝いたアスリートを、Numberの視点で選出。

《NEW FACE賞》 小野寺吟雲(スケートボード)/久保凛(陸上・中距離走)/吉成名高(ムエタイ)
 「Number」で連載中の「FACE」に登場し、その後ブレイクを果たした若きアスリートを選出。

《Challenge Spirit賞》 湯上剛輝(陸上・投擲)/茨隆太郎(競泳)/若松優津(バスケットボール)
 困難な環境やハンディキャップを乗り越えて己の限界に挑戦し、多くの人に勇気や感動を与えたアスリートを選出。トヨタ自動車とともに創設。

《LEGEND賞》 イチロー(野球)
 ⻑年にわたり、スポーツ界やその競技界に多大なる影響を与えた選手を選出。

《特別賞》 白鵬翔(相撲)
 現役時代の成績にとどまらず、その後も社会貢献に情熱を注ぐ姿勢を讃える。

《Numberスポーツ報道写真賞》 グランプリ・田口有史/優秀賞・カジリョウスケ、中障子重紀、山口裕朗
 プロ・ハイアマチュアを対象に、スポーツ報道写真を募集し、グランプリ・優秀賞を選出。特別最終選考委員に上村愛子氏。

※敬称略


VictorySportsNews編集部

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