日本は負傷で三笘薫(ブライトン)や南野拓実(モナコ)といった攻撃の主力がW杯メンバーから漏れた。鋭い速攻から相手ゴールに迫る攻め手が欠けることになり、マイナス要素ではある。それでも2025~26年シーズンで日本人初のオランダ1部リーグ得点王となった上田綺世(フェイエノールト)ら、欧州クラブで台頭した選手たちは過度に相手を「リスペクト」することなく、ぶつかっていけるだろう。日本のメンバー26人のうち、欧州でプレーしているのは過去最多の23人。前回カタール大会を経験している選手は半数の13人おり、経験という意味では不安はなさそうだ。
前回のW杯での対戦では、まだ経験値に大きな差があった。2010年大会、当時の日本は海外組がメンバー23人のうち、4人だけ。長谷部誠(当時ウォルフスブルク)、本田圭佑(当時CSKAモスクワ)、松井大輔(グルノーブル)、森本貴幸(当時カターニア)のみで、ファンペルシーやスナイデルらを擁してその大会で準優勝することになるオランダは仰ぎ見る存在だった。
試合展開も、長くボールを保持され、耐える時間帯が多かった。なんとか0―0で折り返したものの、後半8分にスナイデルの強烈なミドルシュートをGK川島永嗣がはじけず、ゴールネットを揺らされた。0―1のスコア以上に、実力差を感じさせられる黒星だった。
今回のオランダにはファンダイクやガクボ(ともにリバプール)ら欧州トップクラブで活躍する選手がいる。監督は元代表選手のロナルド・クーマン。欧州予選は6勝2分けで悠々と勝ち上がってきた。
ただ、直前の親善試合ではなかなか思うような結果を残しておらず、日本にも付け入るチャンスは十分にあるだろう。6月3日のアルジェリア戦は多くの好機をつくりながら無得点で敗れた。8日のウズベキスタンとの親善試合は二つのPKによるゴールで2―1での辛勝だった。ガクボや、マレン(ローマ)らスピードのある前線は強力で、日本は背後にスペースを与えたくはない。低い位置でブロックを構えるような展開になれば、2022年ワールドカップ(W杯)カタール大会のドイツ戦やスペイン戦のように、日本側が機を見て逆襲する形が期待できる。伊東純也(ゲンク)や中村敬斗(スタッド・ランス)といった推進力のあるアタッカーにチャンスが訪れるかもしれない。
今回のオランダには日本代表とつながりのある選手は多い。ファンダイク、ガクボ、さらにフラフェンベルクは遠藤航とリバプール(イングランド)でチームメート。正GKフェルブルッヘンやファンヘッケはブライトン(イングランド)で三笘薫の同僚だ。オランダでプレーする選手も多い。上田のほか、渡辺剛もフェイエノールトでプレーし、2025~26年シーズンはクラブでファンペルシー監督の下でプレーした。冨安健洋と板倉滉はアヤックス、小川航基はNECナイメヘンに所属している。
オランダは1970年代、名選手ヨハン・クライフに象徴される全員攻撃・全員守備の「トータルフットボール」という革新的なサッカーで世界に名をとどろかせた。退屈な試合で1―0で勝つよりも、常に2点目、3点目、4点目を狙い、「美しく勝つ」という哲学が、「オレンジ軍団」のDNAには刻み込まれている。4―3―3で、サイドには強力なウイングを配置するのが伝統のスタイルだ。
ただ、近年は現実的な戦術も披露するようになっている。ウイング不足から2022年大会は3―5―2の形で臨み、ベスト8。今回、指揮を執るクーマン監督も「内容と結果」の両立が求められるオランダ代表の宿命にあらがいながら、チームを構築している。
今大会は48チームが参加する方式になり、1次リーグは各組2位までだけではなく、3位でも通過する可能性がある。過去7大会、日本は初戦で勝ち点を取れば決勝トーナメントに進み、逆に黒星スタートとなると1次リーグ敗退となっている。大会方式が変わったことで、仮に初戦で黒星となっても、3試合で勝ち点3ないし4を挙げれば、3位での滑り込みの突破も十分可能性はありそうだ。
日本の森保監督や選手らは、クロアチアにPK負けしたカタール大会の決勝トーナメント1回戦後、2026年大会での目標を「優勝」に定めた。これまでベスト16が最高成績ではあるが、前述の通り、昨年10月にはブラジル、今年3月にはイングランドとW杯優勝経験チームを倒している。「新しい景色」を目指した4年前の戦いから、今回は「最高の景色」へ。まもなく、キックオフの笛が鳴る。
W杯で2度目の激突 日本が挑む「オレンジ軍団」
サッカーのワールドカップ(W杯)北中米3カ国大会が幕を開けた。8大会連続出場となる日本代表「サムライブルー」は1次リーグ初戦でオランダに挑む。キックオフは日本時間15日午前5時。準優勝3度を誇る伝統の「オレンジ軍団」とは2010年大会以来、W杯では2度目の対戦となる。通算成績では国際Aマッチ過去1分け2敗とこれまで勝利はないが、近年はブラジルやイングランドからも白星を挙げている森保ジャパンに期待は高まる。
記者会見でW杯への抱負を語るオランダのファンダイク。右はクーマン監督 (C)共同通信