現在、気候変動に伴う猛暑は子どもたちのスポーツ環境を大きく変えつつある。文部科学省の調査(令和8年5月1日現在)によると、公立小中学校の普通教室における冷房設置率が99.6%に達している一方、体育館等は31.7%にとどまる。「勉強する場所は涼しく、体を動かす場所は暑いまま」という格差が存在し、日射や輻射熱によって閉め切った館内が厳しい高温状態となることが懸念されている。
「消えた夏練」の実態と体育館の断熱・空調整備が目指すもの
プロジェクト始動にあわせ発表された「消えた夏練」実態調査(学校体育館の指導者147名(21都道府県)対象)では、空調のない体育館で指導する指導者がこの夏に暑さで失った練習時間が平均8.9時間に達し、空調のある体育館(平均2.1時間)の約4倍に上ることが判明した。さらに、空調なしの体育館の92%で練習の中止や短縮、内容変更が発生しており、指導者の50%が「このまま続けたら命に関わる」と回答する(空調あり15%)など、現場での切実な課題が浮き彫りとなった。
「消えた夏練」実態調査より(画像提供:一般社団法人SDGs in Sports) こうした課題に対し、本プロジェクトには6つの競技団体(日本車いすバスケットボール連盟、日本ボッチャ協会、日本バドミントン協会、日本バレーボール協会、日本卓球協会、日本体操協会)が賛同。単なる空調設備の導入にとどまらず、建物の「断熱」性能を高めることで「冷やす前に熱を入れない」整備の普及を目指している。
建築家で東北芸術工科大学教授の竹内昌義氏は、「屋根や窓などの断熱性能が十分でない体育館では、空調を入れても外からの熱が入り続け、冷えにくく、電気代もかさみがちです。大切なのは、冷やす前に“熱を入れない”こと。断熱と空調を組み合わせれば、体育館は夏でも安心してスポーツができる場所になり、災害時には命を守る避難所にもなります」と、断熱と空調を組み合わせる重要性を指摘する。
元バドミントン世界王者の桃田賢斗もインタビュー映像で高校時代の熱中症体験を語り、「次の世代のために」と想いを訴えた。今後はモデル体育館での技術検証や自治体向けガイドブックの作成、啓発活動を通じて、全国の学校体育館を「安心してスポーツができ、命を守れる場所」へと変えていく取り組みを推進する。