プロ生活に幕を下ろした錦織圭。豪華アンバサダーが集った有明コロシアム

 株式会社ユニクロは、2026年10月1日にプロテニスプレーヤーとしての現役生活を終えた錦織の功績を称え、10月11日に有明コロシアム(東京)で、「UNIQLO LifeWear Day Tokyo 2026 with Kei Nishikori 」を開催した。

 このイベントには、錦織と同様にユニクロのグローバルブランドアンバサダーを務める、元プロテニスプレーヤーのフェデラー、元プロ車いすテニスプレーヤーの国枝慎吾、プロ車いすテニスプレーヤーのゴードン・リードが有明に集結した。

 プロとして19年間におよんだ競技生活を終えた錦織は、10月6日に有明コロシアムで行われた引退セレモニーでのある瞬間が忘れられない。

「たくさんの歓声を受けながら、何かすごいいい気持ちになっちゃって、歓声を浴びるのはこれが最後なんだと寂しさももちろんありました。やっぱりお客さんの中でプレーができるという幸せな気持ちがずっとあって、本当に幸せだったと噛みしめました。それが無くなるのは寂しい部分もありますけど、それを経験できたというのは、僕の次の人生につながる。ものすごくいい経験ができたことに感謝しています」

 2007年10月に当時17歳でプロへ転向した錦織は、2008年ATPデルレイビーチ大会で衝撃のツアー初優勝を弱冠18歳で成し遂げて以来、着実に世界への階段を駆け上がっていった。

 2014年USオープンで男子シングルス準優勝、日本男子選手初の世界トップ10入り(2014年5月)、自己最高ATPランキング4位到達(2015年3月)、2016年リオデジャネイロオリンピックでの男子シングルス銅メダル獲得、日本男子選手として初めてツアー最終戦・ATPファイナルズに出場(2014年、2015年、2016年、2018年)など、日本男子前人未踏の結果を世界の舞台で残していった。

「悔しさもありながら引退しますが、最後まで力を出しきれたことに関しては、悔いなく終われています」

 このように錦織がファンへ挨拶をする姿を目の前で見ていたフェデラーは、「ユニクロと共に特別な日を迎え、彼(圭)のこれまでのレガシーやキャリアを祝えることはとても嬉しい」と喜んだ。

ファンも本人たちも大興奮。ユニクロの縁が繋いだ奇跡のダブルスチーム

 無料招待された約9000名の観客が見守る中、トークセッション、車いすテニスシングルスマッチ、ジュニアテニスセッション、クイズコーナー、ニューミックスダブルスなどが行われたが、今回の一番のハイライトは、錦織とフェデラーがペアを組んだドリームダブルスが実現したことではないだろうか。現役時代に、2人がダブルスチームを結成することは一度もなかったが、ユニクロという共通の縁があり初めて実現。会場に集まったファンはコートに釘付けになり歓喜した。

ユニクロ提供

 対戦ペアは、現在の男子国別対抗戦デビスカップ日本代表監督の添田豪と、同前監督で錦織のツアーコーチも務めたことがある岩渕聡だった。夢のようなダブルスマッチは、フェデラー/錦織組が6-3で勝利した。

「現役時代にやれればよかった。そういう考えを1回も持たなかったことをちょっと残念に思いました。ここでダブルスをやろうよと誘い合えばよかった。今回とても楽しかったです」(フェデラー)

「同じサイドにロジャーがいたことが新鮮でした。横から見ていて彼のフォームがきれい。ストロークだったり、間近で見れてすごく楽しかったです」(錦織)

 錦織の引退を記念して開催されたイベントだったが、参加した錦織やフェデラーらだけでなく、スタンドから見守った観客たちによって、有明コロシアムは温かく優しいエネルギーに満ちあふれた。

アンバサダー4人が語る感謝と喜び。錦織が噛みしめた「最高の時間」

 グローバルブランドアンバサダーの4人は、イベントを次のように振り返った。

「錦織くんの引退イベントに、僕も関わられて光栄なことで嬉しいことでした。ロジャーが日本に来てくれたこと、長年一緒に戦ってきたゴードンとも再び試合をできたことに嬉しく思いました。錦織くんに、今までの感謝を僕自身も伝えられたかなと思っています」(国枝)

「本当にいい経験ができました。日本のテニス界にとって、錦織というレジェンドのイベントに来させてもらってすごく意味のあることでした。3人と一緒にプレーできたことはとても楽しいことでした」(リード)

「引退したばかりのこのお祝いの時に、ここ(東京)に来られてとても嬉しく思っています。だから、とても喜ばしいことだと思いますし、悲しいとか、残念とか、寂しいではなく、本当にお祝いだと思っています。ポジティブでいるべきじゃないでしょうか。圭もそう思ってくれるといいですね。ファンのみんな、ユニクロの皆さんとお祝いをした。人生で1回だけ、(プロテニスプレーヤーを)卒業をするということですから。(圭は)テニスに対して全力を尽くしたと思います。素晴らしい形でそこから1歩離れるということ、卒業することを誇りに思っていいと思います」(フェデラー)

「有難かった。これだけの(ユニクロや観客の)方々と、ここに並んでいる仲間と楽しい時間を過ごせたことが本当に幸せでした。1週間前に引退したばかりだったので、ちょっと早いかな、と恥ずかしさもあったんですけど、最高の時間でした」(錦織)

ユニクロ提供

 果たして、今回のイベントを訪れた子供たちの目に、錦織圭のレガシーは、どのように映っただろうか。確かに錦織の現役としてのキャリアは終わったが、彼のセカンドキャリアは今始まったばかりだ。ユニクロの協力も得ながら、今後もファンとの良好な関係が長く続いていき、錦織が子供たちの希望となるような存在であり続けることを願いたい。


神仁司

著者プロフィール 神仁司

1969年2月15日生まれ。東京都出身。明治大学商学部卒業。キヤノン販売(現キヤノンマーケティングジャパン)勤務の後、テニス専門誌の記者を経てフリーランスに。テニスの4大メジャーであるグランドスラムをはじめ数々のテニス国際大会を取材している。錦織圭やクルム伊達公子や松岡修造ら、多数のテニス選手へのインタビュー取材も行っている。国際テニスの殿堂の審査員でもある。著書に、「錦織圭 15-0」(実業之日本社)や「STEP~森田あゆみ、トップへの階段~」がある。ITWA国際テニスライター協会のメンバー 。