1964年の東京オリンピック開催に合わせて誕生した明治公園は、国立競技場の建て替えに伴ってリニューアルされ、2024年に全面開園。その中央に位置する芝生広場「希望の広場」に面した商業施設の一角に、BEAMS SPORTSの店舗がある。

ランニングとトレイルランニングのコーナー

 瀟洒な雰囲気の店内に足を踏み入れると、まずはDOスポーツ(するスポーツ)として根強い人気を誇るランニングとトレイルランニングのコーナーがお出迎え。中央に並べられているのはイギリス発のフットランニングウエアブランド「R.A.D. RUNNING(ラッドランニング)」のシューズで、これが日本初上陸だという。今のところはここでしか入手できないランニング愛好者垂涎の逸品に目を奪われる。

 その周りを囲むのは、ポップな色づかいが目にも鮮やかな南アフリカ発「アレックス・ゾノ」のランニングウエアに、韓国発のアウトドア・ライフスタイルブランド「SOHC」とイタリア発のトレイルランニングブランド「WILD TEE(ワイルド ティー)」のウエアやシューズなど。ビームスが世界中からセレクトしただけあって、機能性のみならずファッション性にも優れた商品の数々に、1つひとつじっくりと眺めたくなる。

ヴィンテージTシャツエリア

 さらに店の奥に歩を進めると、そこにはスポーツをテーマにしたヴィンテージTシャツがズラリ。1990年代を中心としたグラフィックTシャツは、ニューヨークシティマラソンなどのランニング系だけでなく、サイクルロードレースやオリンピック、野球など多岐にわたる。スポーツ好きであれば、手に取るだけでも楽しいはずだ。

 BEAMS SPORTSがオープン時の強化カテゴリーとして設定しているのが、先の「ランニング」と「トレイルランニング」に加え、ファッションとの親和性も高い「バスケットボール」。店内にはNBA各チームや米国代表のジャージー、Tシャツなどが取り揃えられ、ストリートカルチャーをルーツに持つブランド「Winiche & Co.(ウィニッチ アンド コー)」とバスケットボール・スポーツアパレルブランド「AKTR(アクター)」のコラボレーションアイテムも展開されている。

 ビームスは1976年の創業以来、ファッション、雑貨、インテリア、音楽、アート、食品など、国内外のブランドや作品を多角的に紹介するセレクトショップの先駆けとして、時代をリードしてきた。日本で57年ぶりに夏季五輪が開催された2021年には、スポーツとファッションの掛け合わせで誰もが楽しめるブランドとしてBEAMS SPORTSを立ち上げ、同名のウェブメディアを通じて新たなスポーツカルチャーを世に発信している。そんなビームスが、このタイミングでスポーツに特化した店舗の運営を始めたのはなぜか?

株式会社ビームス クリエイティブのプロジェクトマネージャー 髙瀬弘将氏

「BEAMS SPORTSはウェブメディアとしてスタートすると同時にBtoB(他の企業との取り組み)も始めていまして、(プロバスケットボール・Bリーグの)琉球ゴールデンキングスとのコラボレーションや、最近では(プロテインブランドの)ザバスさんとのキャンペーンも行ってきました。それによって現在はインスタのフォロワー数も2.5万人ほどいるのですが、よりリアルな接点をお客様と持っていきたいというのが出発点です」

 そう語るのは株式会社ビームス クリエイティブのプロジェクトマネージャー、髙瀬弘将氏。「このプロジェクトに携わるようになって自分でもランニングを始めた」という同氏は、店舗に掲げられたポスターや従業員が着るTシャツにも書かれている「NEW WAYS TO ENJOY SPORTS(新たなスポーツの楽しみ方)」を、BEAMS SPORTSとして提案していきたいと語る。

「日本のスポーツ文化をより豊かで楽しいものに変換していきたい。日本のスポーツには根性論というかそういう考え方がまだまだ残っていると思いますが、世の中的には少しウェルネス(心身の健康)に向かってきている。我々もそこに向けて『&ENJOY』というテーマをブランドコンセプトとして掲げていて、ストイックにスポーツをするだけではないという新たな楽しみ方を提案していきたいと考えています」

 店舗には株式会社Stapleが運営するベーカリーカフェ「Parklet Meiji Park(パークレット メイジパーク)」も併設されていて、カウンターの奥には往年のNBAのスーパースター、シャキール・オニールのサイン入り実使用シューズ(オープン当初限定公開)などの“お宝”も飾られている。カフェスペースの脇にはNFLのスタープレーヤーのジャージーや1954年創刊の米スポーツ専門誌「スポーツ・イラストレイテッド」のバックナンバーなどもディスプレイされており、これらのアイテムを肴にカフェ自慢の天然酵母を用いた焼きたてパンやスペシャルティコーヒーを楽しむのも一興だろう。

「我々としてはこの場所をスポーツカルチャーショップにしていきたい。スポーツにファッションやカルチャーを掛け合わせることによって、新しいスポーツの楽しみ方を伝えたいと考えています。ただの物販ではなく、カルチャーの要素に集まってくれる方たちとコミュニティを作って、この場所をコミュニティのハブ(拠点)にしていくというところを、これから目指していきたいと思っています」

 明治公園の周辺には国立競技場の他にも、プロ野球の東京ヤクルトスワローズのホームグラウンドである明治神宮野球場や、関東におけるラグビーのメッカともいえる秩父宮ラグビー場などもある。そうした地の利も今後は生かしていきたいと、髙瀬氏は力を込める。

「コミュニティのハブになりたいというところで言えば、たとえばヤクルトさんの試合が終わった後で、我々のお店に来てもらうのもアリだと思っています。企画としてスワローズ居酒屋みたいなものができたら面白いなと思っていて、そこにトークショーでOBの方をお呼びしましょうとか、そこに付随する応援グッズをつくりましょうとか、そういうことも考えていきたい。あくまで『DO』だけではない、それも1つのカルチャーだと思うので、そういった受け止めもしていきたいなと思います」

 土日ともなればファミリー層の憩いの場になる明治公園だが、BEAMS SPORTSに先駆けてランニング用品を扱う「ALPEN RUN MEIJI PARK」がオープンしたことで、ランニング愛好者なども多く訪れるようになっているという。DOスポーツを楽しむ人、国立競技場や神宮球場、秩父宮ラグビー場などで行われる試合やイベントに足を運ぶ人、スポーツを愛するあらゆる人たちが集う「ハブ」としての店舗を、BEAMS SPORTSは目指している。


菊田康彦

著者プロフィール 菊田康彦

1966年、静岡県生まれ。地方公務員、英会話講師などを経てメジャーリーグ日本語公式サイトの編集に携わった後、ライターとして独立。雑誌、ウェブなどさまざまな媒体に寄稿し、2004~08年は「スカパー!MLBライブ」、2016〜17年は「スポナビライブMLB」でコメンテイターも務めた。プロ野球は2010年から東京ヤクルトスワローズを取材。著書に『燕軍戦記 スワローズ、14年ぶり優勝への軌跡』、編集協力に『東京ヤクルトスワローズ語録集 燕之書』などがある。