アルバルク東京を0.6秒まで上回った滋賀レイクスターズ、竹内譲次の逆転3ポイントシュートを浴びてアップセットを逃す
接戦に持ち込むも高さのミスマッチを突かれる滋賀 29勝8敗で東地区2位のアルバルク東京と9勝30敗で西地区最下位に沈む滋賀レイクスターズの対戦。A東京の新外国籍選手、ジェフリー・エアーズとトレント・プレイステッドが初出場を果たしたこの試合は、終盤に劇的なドラマが待ち受ける激闘となった。 オン・ザ・コートはともに「2-1-1-2」を選択。序盤は互いに思い切りの良いシュートを高確率で決める、稀に見るハイペースな打ち合いとなった。 A東京は田中大貴が4本連続で3ポイントシュートを沈め、第1クォーターだけで14得点の荒稼ぎを見せる。209cmのサイズを持ちながらシュートレンジの広さが売りのエアーズは、Bリーグでの初ゴールを3ポイントシュートで記録した。 対する滋賀は並里成が積極的にリングにアタックしてオフェンスを牽引する。そしてジュリアン・マブンガも4本の3ポイントシュートを含む14得点を挙げ、A東京と壮絶な打ち合いを演じた。 しかし、互いにオン・ザ・コートが「1」となった第2クォーターになると、A東京の高さに劣勢を強いられるようになる。その『高さ』の要因となったのが新戦力の一人、プレイステッドだ。211cmの長身を生かし、オフェンスリバウンドからゴール下で初得点を記録した。 日本人選手のマッチアップで高さのミスマッチが生じてしまう滋賀は、パワープレーとオフェンスリバウンドから得点を許し、徐々に離されていく。特に菊地祥平のポストプレーが強烈。菊地は身長差だけでなく横のミスマッチも利用し、得点だけでなく切り崩しのカギとなり、さらには多くのファウルを誘って滋賀を苦しめた。 オフェンスでもマブンガにダブルチームでトラップを仕掛けられ、苦し紛れのパスを連続でスティールされるなど最大で14点差を付けられた。それでも滋賀は、長谷川智伸が連続で3ポイントシュートを沈め、ファイ・サンバがインサイドで奮闘するなど、粘り強くA東京に食らいつき、8点差で最終クォーターを迎えた。 第4クォーター後半、滋賀が怒涛の反撃を見せるも…… 第4クォーターの前半はA東京の時間帯。残り5分を切り67-81とまたしても点差が14と開くが、ここから滋賀の怒涛の追い上げが始まる。 並里がマークするディアンテ・ギャレットが高さのミスマッチを使ったポストプレーを仕掛けるのに対し、ダブルチームで逆にプレッシャーをかけパスミスを何度も誘発。激しい守りでシュートを打たせずショットクロックバイオレーションやイージーミスを誘った。 オフェンスでは並里が確率が上がらなかったミドルシュートを強気に沈めてチームに勢いを与えると、クレイグ・ブラッキンズが3ポイントシュートを沈め、マブンガが素早いトランジションからタフショットをねじ込み1点差に迫る。そして、直後のディフェンスで長谷川が田中のドリブルをスティールし、マブンガがフィニッシュを決めて残り29秒で逆転に成功した。 次のディフェンスを守り切り、長谷川がファウルを受けフリースローを獲得。1投目を決めて83-81、2投目を決めれば負けはなくなる場面だったが、これをミスしてしまう。 残り8.9秒、こぼれたボールは田中の元へ。5本の3ポイントシュートを決めている田中を止めようと滋賀は3人がマークに行く。結果的にこれは『行ってしまった』だった。田中は3人に囲まれながらも、ノーマークで待ち受ける竹内にボールを託す。 右45度、竹内が放った3ポイントシュートが決まって土壇場で逆転。この3ポイントシュートが決勝点となり、83-84で滋賀が敗れた。 新外国籍選手のデビューに指揮官は「ホッとしている」 新外国籍選手について質問を受けた伊藤拓摩ヘッドコーチは「新加入の2人が出た試合で勝つことができてホッとしています」と素直な気持ちを語った。「2人の選手が入った練習はまだほとんどできていないのですが、チームに馴染もうと努力してくれています」 劇的な3ポイントシュートを決めた竹内は「時間もなかったですし、オープンだったので打つしかないと思って打ちました。良い形でパスが回ってきて、しっかり決めることができて良かったです」と振り返った。 滋賀の遠山向人ヘッドコーチは、最後の3ポイントシュートのシーンをこう振り返る。「彼に打たせたのはディフェンスとして失敗ではないですが、結果的には決められてしまったので、難しいところです。あそこでワイドオープンではなく1人マッチアップできるようになることが次のステップ。ただ、選手たちは良い判断でついてくれたと思います」 滋賀の奮闘を象徴するのが長谷川智伸。果敢な守備から反撃のきっかけを作り、自らも12得点。ただ、最後のフリースローを外したことでA東京に最後のチャンスを与えてしまった。その長谷川は試合をこう振り返る。「個人でもチームでも強豪相手で気合が入っていました。個人的にも、今までにプロになってからアルバルクに勝ったことがなかったので、勝ちたかったです。最後のフリースローは決めておけば、3点差になっていたので、決めないといけなかったです」 「勝ちたいという気持ちで必死でした」という長谷川のプレーが、滋賀をアップセット寸前まで導いた。ただ、勝利はその手からこぼれ落ちた。「試合後のインタビューでは涙がこぼれました。皆はそれまでのプレーでミスもあったから、お前だけのせいじゃないと言ってくれましたが……」 勝利はできなかったがブースターの前で自分たちの持つポテンシャルを見せることはできた。大事なのは接戦の次のゲーム、今日の課題を修正し、ジャイアントキリングを狙う。
文=丸山素行 写真=B.LEAGUE