そもそも、『NCAA』とは何か?
文部科学省や大学関係者による大学スポーツ振興検討会議が8日に開かれ、全米大学体育協会(NCAA)を参考に「日本版NCAA」を2018年度に創設する目標を盛り込んだ方針をとりまとめた。
NCAAは、「National Collegiate Athlete Association」の略称で、アメリカ大学体育協会を意味している。1906年に設立されたアメリカの大学スポーツ全般を統括する非営利団体だ。現在、アメリカには約2300の大学があり、約1200校がNCAAに加盟している。NCAAは競技会の開催やスポーツクラブ同士の連絡調整、さらには試合のテレビ放映権などの管理も行い、年間約1000億円以上という大きな収益を上げている。
以前に掲載した新川諒氏による河田剛氏のインタビュー記事によると——
Pac-12と呼ばれるカンファレンスに所属するスタンフォード大学もアメリカンフットボールだけで収入はおよそ60億。5万人収容のスタンフォード・スタジアムで毎年ホームゲームを6試合行い、チケット代、グッズ販売、そしてリーグが一括する放映権と莫大な金額が動き続ける。なぜ大学のアメフト部が60億も“稼げる”のか? 河田剛氏に聞く米国カレッジスポーツ驚異の構造 vol.1
と、一大学の一競技だけでも、とてつもない収入を得ていることがわかる。
日本とアメリカの現状
©共同通信(写真=ラグビー大学選手権決勝)
日本の大学スポーツは、学生の自主的な課外活動という位置づけの場合が多く、大学と連携が取れていない場合が多く、活動資金の確保は難しい。卒業生の補助に助けられていることも少なくないが、多くはアルバイトをして自ら稼ぐこともあり、学業にも支障が出ている可能性もある。
NCAAでは、シーズン中であっても、1週間に練習ができる時間の上限は20時間までと定めているうえに、週に1日は休養日にしなければならないという決まりを設けている。さらにNCAAは選手の学業もチェック。学生の成績や卒業率が、NCAAの定める最低ラインに届かなかった場合、スポーツ推薦枠の減少などの厳罰がチームに科されるのだ。
日本版NCAAでも、練習時間に上限を設け、試合出場に一定の学業成績条件を設けることに加え、高校生の勧誘や不祥事の罰則についての統一ルールがつくられると見られている。また、見るスポーツとしての価値を高めることで、放映権料などによる収益を拡大し、その収益を大学やチームに還元していくことも、重要な役割になってくる。
現在、日本の大学スポーツは、箱根駅伝や六大学野球などが、ある程度の人気を集めている。しかし、プロスポーツと比較すると盛り上がりには欠けている。アメリカでは、大学が自前のスタジアムを有しており、その客席が満員になるなど、プロスポーツにも引けを取らないほど、大学スポーツは盛り上がっている。
また、日本の大学スポーツですでに盛り上がっている競技ほど、その競技団体とテレビ局や新聞など媒体社とのつながりが強く、媒体社が協賛することで放映権を得ているビジネスモデルもすでに成立している。そういった既得権益との軋轢(あつれき)が生じる可能性もあり、その調整も問題となるだろう。
日本版NCAAができることで、日本の大学スポーツもビジネスとして成り立っていくだろうか。しっかりと見守っていきたい。