故障者続出の日本ハム 栗山監督のキャンプ点数は……
今年は気温こそ低めだったものの、二大キャンプ地である宮崎と沖縄、そして日本ハムが一次キャンプを行った米国・アリゾナ州ピオリアも天候に恵まれた。そんな環境下で、まず気になったのが離脱者の数。なかでも昨シーズン日本一を争った両リーグのチャンピオンチームには、故障者が目立った。
広島は宮崎・日南で行った一次キャンプ中に、丸佳浩、エルドレッド、中崎翔太と主力選手が相次いで離脱。場所を移した沖縄でもレギュラー獲りを目指す野間峻祥が右脇腹を痛めたが、幸い主力勢は軽症で済み、丸とエルドレッドはすでに戦列へ復帰している。
一方、深刻なのが日本ハムだ。こちらは右足首痛でWBC出場を辞退した大谷翔平を筆頭に、負傷者が続出。特に陽岱鋼に替わる正中堅手候補の大田泰示、岡大海、谷口雄也が相次いで故障に屈し、内外野を守れる杉谷拳士も左腹斜筋を痛め、開幕に間に合うか微妙な状況に。春季キャンプの点数を求められた栗山英樹監督は「1点」と即答。その背景に故障者続出のチーム状況があることは明白で、冷静沈着な指揮官が珍しく顔を歪めた。
一方、離脱者が少なく、活気あるキャンプを送っていたのが2016年リーグ最下位同士のオリックスと中日だった。オリックスは昨年のキャンプで苦しめられたインフルエンザ対策が万全で、前年約10名いた感染者を今年はわずか1名に抑えた。中日は3月に入りドラフト1位右腕の柳裕也が上半身のコンディション不良を訴えたが、こちらもケガ等の故障者を最小限に食い止め、練習試合から対外試合6連勝をマーク。
ちなみにオリックスと中日は、2016年のオープン戦成績も揃って最下位。チーム状態が良好なままオープン戦に臨めること自体、明るい材料である。
若手が目立ったDeNAと中日、高卒ドラ1投手たちは無念の離脱
©️共同通信 冒頭でも触れたが、WBCの影響で若手の積極登用が目立った今キャンプ。その筆頭は、昨シーズン初めてクライマックス・シリーズ進出を果たしたDeNAだった。先発ローテーション入りが期待される濱口遥大、パワフルな打撃が魅力な佐野恵太、細川成也らのドラフト組だけでなく、育成枠の笠井崇正、網谷圭将のアピールも光った。さらに、ハイレベルな争いを予感させる新外国人投手3名に加え、新天地での復活を目指す田中浩康も一軍キャンプで躍動。全体的にポジティブな要素が多かった。
森繁和新体制の中日は、これまで燻っていた既存の社会人組がようやく台頭。外野転向が板についてきた遠藤一星、豪快なフルスイングが魅力の石岡諒太、正捕手を目指す木下拓哉らがアピールし、投手陣でも元育成選手の変則右腕・ミツ間卓也が一軍首脳陣の前で好投を続けた。既存戦力の底上げとともに主軸候補のゲレーロ、長身左腕・アラウホらも使えるメドが立ち、強竜時代再来の予感が漂っている。
ブルペンが熱かったのは覇権奪還を目指すソフトバンク。昨オフのドラフト1位右腕・田中正義を筆頭に、15年同1位の高橋純平、14年同1位の松本裕樹らが主力メインのA組で連日のアピール合戦。その他にも育成選手の石川柊太、高卒新人の古谷優人が期待度の高さを示し、改めて層の厚さを知らしめた。
阪神もドラフト組を筆頭に若手の成長が目についたが、こちらはコンバートを視野に入れた選手が多く、実戦での経験不足が気になるところ。ベテラン・鳥谷敬の使い方も含め、オープン戦でどこまで詰められるかが課題だ。
残念だったのが、期待されていた高卒ドラ1投手たちの早期脱落だ。西武の今井達也は初日に右肩痛を発症。ヤクルトの寺島成輝も左内転筋を負傷し、楽天の藤平尚真は体力強化優先で、3投手とも一軍キャンプを完走することができなかった。
早くも爆発中のゲレーロ 守護神定着を目指すカミネロ&パットン
若手とともに注目されたのが、新外国人選手たちだ。近年は助っ人の大量保有が当たり前となり、今年も多くの新外国人が来日した。そのなかで最も目立ったのは、中日の正三塁手候補・ゲレーロだ。2月10日のシート打撃では、エースの大野雄大、ドラ1右腕・柳から豪快な2本塁打をマーク。その後の練習試合でも快音を連発し、竜党の期待感を煽り続けている。
抑えの座を狙う巨人・カミネロ、DeNA・パットンも前評判通りの投球を披露。その座を争うのは澤村拓一、山崎康晃と実績のある実力者だが、オープン戦の結果次第では守護神交代の可能性も十分にある。ロッテのパラデス&ダフィーは長距離タイプではないものの、オープン戦初戦でいきなりアベック弾を放ち、幸先の良いスタートを切った。
まだチームには合流はしていないものの、ソフトバンクは昨年までロッテで活躍していたデスパイネ獲得を発表。新たに補強したジェンセンも含め、こちらも外国人枠をかけた争いから目が離せない。
ひと足早いタイトル予想、セの本塁打王は巨人の……
©️共同通信 少し気が早いが、キャンプを見渡したうえでのタイトル予想をしてみたい。セ・リーグ投手部門の勝利数、防御率には、すでに仕上がっていた広島のジョンソンが高確率で絡んでくると見る。セーブ王は、守護神争いを制した巨人とDeNAの抑え投手。さらに中日・田島慎二の状態もよく、出遅れた広島の中崎も初タイトルを狙える位置にいる。
打撃部門でも元気だった中日勢を推したい。大島洋平は首位打者&最多安打、ゲレーロは打点王に絡む可能性が高く、巨人の大砲・ギャレットからは2年目の余裕が感じられた。こちらは1年目に24本塁打を放っており、今年は本塁打王争いに絡むと予想する。
パ・リーグはWBCに参加する選手が多く、予想が難しい。これは日本人に限った話ではなく、昨季の本塁打王である日本ハムのレアード(メキシコ代表)、ソフトバンクへ移籍したデスパイネ(キューバ代表)、来日14連勝をマークしたソフトバンクのバンデンハーク(オランダ代表)らも含まれる。筒香嘉智(DeNA)、山田哲人(ヤクルト)のセ・リーグ勢も含め、タイトル常連者たちはWBC後のコンディション作りが重要になる。
新人王にはヤクルトにドラフト2位で加入した星知弥と楽天にドラフト9位で入団した高梨雄平を推したい。両投手の所属チームに共通しているのは、ブルペンが手薄という点。星は守護神の座も狙える力強さが魅力で、高梨は左の中継ぎ1番手になれるポテンシャルを秘める。その他にもDeNAのドラ1左腕・濱口、ソフトバンクの若手投手陣、西武の正遊撃手を狙う源田壮亮ら楽しみな選手は豊富だが、チャンスが多いであろう星と高梨が新人王に近い存在だと予想する。
2月下旬からは侍ジャパンに話題を持って行かれたが、新たな発見が多かった2017年の春季キャンプ。最後に優勝チームではなくキャンプ充実度1位を選ぶなら、セは中日でパはソフトバンク。この結果がシーズン成績とリンクすることを切に願う。