最多セ ーブのタイトルを獲得しているのは平野だけ
2017WBCで世界一奪還に挑んでいる侍ジャパンこと日本代表は13日、クローザーを務める投手を固定せずに総力戦で臨む方針を打ち出した。小久保裕紀監督は、抑えは固定しないのかとの問いに対して「そうですね」と答えた。
ペナントレースのような長期戦と違ってWBCは短期決戦である。その中で選ばれた精鋭たちをどう使うのか。誰を先発にし、球数制限がある中で第2先発として誰を起用するのか。そして誰をリリーフに回し、セットアッパーやクローザーを誰にするのか。それを固定するかしないかを含めて、すべては首脳陣の専権事項である。
それをもちろん承知のうえで、今大会ではリリーフ投手について多くの議論がされている。あらためて侍ジャパンの投手全13人のこれまでのプロ野球公式戦におけるセーブ数とホールド数を確認しておこう。
この中でタイトルを獲得しているのは、11年に49ホールドポイントを挙げて最優秀中継ぎ投手となった平野佳寿、12年に50ホールドポイントで最優秀中継ぎ投手になった増井浩俊、14年に40セーブをマークして最多セーブ投手となった平野佳寿、そして16年に42ホールドポイントで最優秀中継ぎ投手となった宮西尚生だ。
平野が最優秀中継ぎ投手と最多セーブのタイトルをどちらも獲得しているので、リリーフ投手のタイトルホルダーは3人ということになる。しかもこの3人とも最優秀中継ぎ投手になっているが、セーブ王になったのは侍ジャパン投手陣では平野だけである。
もちろん平野は33歳でキャリアも長く、セーブ数では2位の増井浩俊がマークした83セーブを大きく上回る127セーブを挙げているので、その数を持ってクローザーにしろなどと言うつもりは毛頭ない。あくまでも本人の調子や相手打線との予想される相性、他の投手陣との兼ね合いなどを総合的に判断して首脳陣が決めるべきことである。
抑えは最初から牧田という構想だったと話したが……
©️共同通信 その侍ジャパンの守護神だが、大会前には秋吉亮が務めると思われていた。しかし1次ラウンドの初戦だった7日のキューバ戦で、秋吉は8回途中から登板し、9回のマウンドに上がったのは牧田和久だった。翌8日のオーストラリア戦でも、最終回を締めくくったのは同じく牧田だった。この試合の後で小久保監督は、「最初から牧田という構想でした」とクローザーは牧田のつもりでいたと明言したのだ。
続く10日の中国戦は7対1と6点リードで9回を迎えており、クローザーを明言した牧田ではなく秋吉がマウンドに上がった。これについては点差もあったため、何の異論もなかった。
しかし2次ラウンドの初戦となった12日のオランダとの試合では、6対5と1点リードで迎えた9回は誰もがクローザーを明言された牧田が登板するものだと思っていた。しかしマウンドに上がったのは則本昂大だった。則本は1点を失って同点となり、延長に入ってから牧田が登板して、11回のタイブレークの末に日本は勝利を収める形となった。9回に牧田が登板しなかったことに対してまたいろいろな議論が飛び交ったが、9回の則本の起用について小久保監督は「抑えに則本を起用した理由は特にない」と話した。
そして今後については冒頭に書いたように、抑えは固定せずに総力戦で臨む方針にしたというのだ。穿った見方かもしれないが、小久保監督は他国のチームに情報戦を仕掛けているのかもしれない。牧田を抑えにすると明言しながら、2次ラウンドのオランダ戦では則本を起用した。さらにそれについての理由は特にないと煙に巻く。そして今度は抑えを固定しないと言いながら、もしかしたら当初の構想通りに牧田をクローザーとして使うのではないだろうか。
これは勝手な推測に過ぎないが、固定しないと言えば、相手チームも交代が告げられるまでわからない。牧田と決めているのに、少しでも相手に考えさせ、わずかなりともプレッシャーをかけようとしているのであれば、小久保監督は想像以上に権謀術数に長けた指揮官だと言える。