文/Baseball Crix編集部
ヤクルト廣岡は山田ソックリ、成績でも近づけるか?
ヤクルトの大型遊撃手・廣岡大志。智弁学園高を卒業したばかりの19歳は新人だった昨季、高卒野手としては高木守道(元中日)以来となる、56年ぶりの初打席初本塁打デビューを成し遂げた。しかも、対峙した相手投手は引退登板だったDeNAの三浦大輔。世代交代を印象付けたデビュー弾は、2016年シーズンのトピックスでもあった。
チームの大先輩でもある山田哲人に準え“山田二世”と呼ばれている廣岡。選手としてスケール感だけではなく、打席での構えや仕草も山田にソックリだ。本人は「真似ではないです」と話すが、一連の動作は完全に“模倣”のレベル。今年の春季キャンプで廣岡とじっくり向き合った杉村繁打撃コーチは、「タイプ的には山田というより池山(隆寛)。どういう形であれ、まずは自分のフォームを固めてほしい」と期待を寄せた。
まだまだ線が細く変化球対応に脆さが感じられる廣岡だが、能力に疑いの余地はない。春季キャンプ、オープン戦ではバットでアピールを続け、ヘルニアで離脱した川端慎吾に代わり、三塁での開幕スタメンも視野に入れている。
重信は早大の先輩・青木、宇佐見は師匠・阿部に倣う
©️共同通信 正中堅手を目指す2年目の重信慎之介は、青木宣親(アストロズ)そっくりのフォームに変化していた。昨年の秋季キャンプで高橋由伸監督から「バットを立てて構えた方がいい」と助言された重信。その後、早大の先輩にもあたる青木と自主トレをともにし、現在の打撃フォームに変貌を遂げた。
正捕手獲りを目指す宇佐見真吾の打撃フォームは、阿部慎之助を彷彿とさせる。重信と同期入団の期待の2年目は、城西国際大時代から“阿部二世”と呼ばれていた。ルーキーイヤーは1度も一軍昇格できなかったが、それでも昨オフの台湾ウインターリーグ、そして今キャンプとアピールを続け、メキメキと頭角を現してきた。正捕手候補筆頭の小林誠司はWBCで活躍したが、宇佐見は武器である打撃力を磨き小林超えを目指す。
日本ハムのキャンプでは、西川遥輝を追いかける高卒4年目外野手・岸里亮佑が印象的だった。左打席に入り、やや投手よりに重心を置く構えは西川ソックリ。昨年、二軍戦でチーム最多出場を記録した22歳は、西川と同じような成長曲線を思い描いている。
崖っぷちの堂林は新井に弟子入り! 護摩行にも同行
8年目を迎える広島の堂林翔太は、オフに新井貴浩に弟子入りし、打撃フォームも師匠ソックリになった。「映像を見ているうちに似てきた」と語る構えもだいぶ板に付いてきており、ボールをしっかりと手元まで引きつけることで、キャンプ以降の実戦では逆方向への鋭い当たりが目立っている。
打撃フォームだけではなく、内面も新井に近づこうとしている。オフには護摩行への参加を直談判。護摩行とは煩悩と炎を一緒に焼き尽くす修行で、約3メートル燃え盛る炎を前に、堂林は声を張り上げ不動真言を唱え続けた。
「最初は『人に勧めるもんじゃない。本当にきついからやめとけ』と断られたんですが、それでもお願いし続けてOKをもらえました。効果はシーズンが終わってみないとわからないが、すでに行ってよかったと感じています。あれ以上、きついことはないだろうと……」
頬には火傷のあとが残っているものの、より精悍な顔つきに変わっていた“鯉のプリンス”。今キャンプからは外野守備にも本格挑戦。なりふり構わぬ姿勢で開幕スタメン入りを目指している。
期待の2年目右腕・本田&青山、投手陣の〇〇二世にも注目!
名前が話題になった西武の2年目右腕・本田圭佑は、昨年まで同僚だった岸孝之の投球フォームに酷似している。このふたりは東北学院大の先輩・後輩の間柄で、本田は楽天へ移籍した岸の穴埋め役として、シルエットのみならず成績面でも模倣を目指している。
オリックスの2年目右腕・青山大紀もトヨタ自動車の先輩にあたるエース・金子千尋の投球フォームにソックリだ。昨オフは、U-23ワールドカップ、台湾ウインターリーグでも好投。球種が豊富な点も師匠譲りだ。
かつては王貞治の一本足打法や落合博満の神主打法、野茂英雄のトルネード投法などがブームとなり、そのフォームを倣う選手が相次いだ。だが、本家に匹敵するような成功を収めた選手は皆無に等しく、多くの選手はそこからブラッシュアップし、自己流へと昇華させてきた。上記で取り上げた若手たちも、模倣が完成形というわけではなく、模索段階である選手が大半のはず。その過程を心に刻みながら、彼らの成長を見守っていきたい。