文=西尾典文

最もプロ選手を輩出している高校は?

 現在、最も多くの現役プロ野球選手を輩出している高校は横浜高校(神奈川)で、その数は17人に上る。象徴的な存在だった松坂大輔(ソフトバンク)は日本復帰後に苦しんでいるものの、先述した筒香はジャパンの四番であり、涌井秀章(ロッテ)もまだまだ力は健在だ。昨年のドラフトでも藤平尚真(楽天)、柳裕也(明治大→中日)と2人の1位指名選手が誕生しており、現在も高い育成力を誇っている。

 続く2位は広陵(広島)の15人。高校から直接プロ入りした選手は4人と少ないが、野村祐輔(明治大→広島)、小林誠司(同志社大→日本生命→巨人)、有原航平(早稲田大→日本ハム)、上原健太(明治大→日本ハム)など大学、社会人を経ての1位指名選手が多いのが特徴だ。

 3位は14人で大阪桐蔭(大阪)。過去10年間の甲子園で圧倒的な強さを誇っているが、選手の輩出でも素晴らしい実績を残しているのは見事という他ない。14人中11人が高校から直接プロ入りしており、西岡剛(阪神)、中田翔(日本ハム)、藤浪晋太郎(阪神)、森友哉(西武)とあらゆるタイプの選手が1位指名を受けているのも驚異的だ。かつてのPL学園に迫る「勝ちながら育てられる」チームと言えるだろう。

 4位は県内で横浜としのぎを削っている東海大相模(神奈川)が11人で続いている。大きな期待を受けて1位でプロ入りした大田泰示(日本ハム)は伸び悩んでいるものの、菅野智之(巨人)と田中広輔(広島)の同級生コンビが侍ジャパン入りしているのはさすが。夏の甲子園優勝投手の小笠原慎之介(中日)の今後の成長も楽しみである。

 甲子園には春夏を通じて一度も出場していないにもかかわらず、7人もの選手をプロに送り出しているのがつくば秀英(茨城)だ。現在一軍のレギュラークラスは塚原頌平(オリックス)だけだが、山田大樹(ソフトバンク)も昨年3シーズンぶりに一軍での勝利をマークして復活の兆しを見せている。そして昨年のドラフトでは大山悠輔(白鴎大→阪神)、中塚駿太(白鴎大→西武)、長井良太(広島)の3人が指名を受ける快挙となった。大学経由ではあるものの、野手の大山が1位指名を受けたところに、チームとしての高い育成力を感じる。

無名校出身の名選手も少ないない

©共同通信

 次に高校の地域別で見ると1位は神奈川で57人。横浜、東海大相模以外にも秋山翔吾(横浜創学館・西武)、松井裕樹(桐光学園・楽天)、田澤純一(横浜商大高・マーリンズ)、山口鉄也(横浜商・巨人)、鈴木大地(桐蔭学園・ロッテ)などあらゆる高校から大物選手が輩出されており、激戦区神奈川の面目躍如と言える。

 続く2位は福岡で50人。九州国際大付が近年の甲子園での躍進と比例してトップの9人を輩出している。ただ、合計で23校がプロ選手を輩出しており(1位の神奈川は15校)、県内の勢力図と同様に有望選手が分散しているのも特徴的である。

 3位は49人で大阪がランクイン。大阪桐蔭に次いで多いのは昨年夏を最後に休部したPL学園の7人。松井稼頭央(楽天)、福留孝介(阪神)のベテランは健在で、前田健太(ドジャース)はメジャーでもエース格の活躍を見せている。それだけに野球部の復活が望まれるところだ。履正社もT-岡田(オリックス)、山田哲人(ヤクルト)、寺島成輝(ヤクルト)と三人のドラフト1位を輩出して存在感を示している。大学、社会人でも活躍している選手が多く、今後更に増えていく可能性は高いだろう。

 バリエーションに富んでいるのが6位に入った愛知だ。チームとしての成績では中京大中京、愛工大名電、東邦の三校が頭一つ抜けているが、プロでは冒頭で触れた千賀以外にも実にさまざまな高校から一流選手を輩出している。その顔ぶれは岩瀬仁紀(西尾東・中日)、藤井淳志(豊橋東・中日)、浅尾拓也(常滑北・中日)、森福允彦(豊川・巨人)、小川泰弘(成章・ヤクルト)、田島慎二(中部大第一・中日)、福谷浩司(横須賀・中日)と錚々(そうそう)たるもの。豊川と成章以外は甲子園出場経験のない高校だというのも驚きだ。

 甲子園に出場して高校から直接ドラフト指名を受けてプロ入りする、というのが野球界のエリートコースである。現在の野球界では横浜、大阪桐蔭出身の選手がまさにそう言えるだろう。しかし詳しく見てみると、全くの無名校から飛び出した名選手も決して少なくないのがよく分かる。育成年代を中心に多くの課題はあるものの、この裾野の広さこそが日本の野球界の最大の強みと言えるのではないだろうか。

■現役プロ野球選手輩出数ランキング:高校
1位 横浜(神奈川)   :17人(投手:5人 野手:12人)
2位 広陵(広島)    :15人(投手:6人 野手: 9人)
3位 大阪桐蔭(大阪)  :14人(投手:4人 野手:10人)
4位 東海大相模(神奈川):11人(投手:3人 野手: 8人)
5位 九州国際大付(福岡): 9人(投手:2人 野手: 7人)
6位 帝京(東東京)   : 8人(投手:1人 野手: 7人)
6位 日大三(西東京)  : 8人(投手:3人 野手: 5人)
6位 敦賀気比(福井)  : 8人(投手:5人 野手: 3人)
9位 つくば秀英(茨城) : 7人(投手:6人 野手: 1人)
9位 PL学園(大阪)   : 7人(投手:1人 野手: 6人)

■現役プロ野球選手輩出数ランキング:高校所在地
 ※()内は輩出している高校の数
1位 神奈川:57人(15校)
2位 福岡 :50人(23校)
3位 大阪 :49人(19校)
4位 埼玉 :35人(19校)
4位 広島 :35人(13校)
6位 愛知 :34人(20校)
7位 兵庫 :30人(17校)
8位 千葉 :29人(18校)
9位 東東京:27人(14校)
10位 西東京:25人(11校)

西尾典文

著者プロフィール 西尾典文

1979年、愛知県生まれ。大学まで野球部で選手としてプレーした後、筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から技術解析などをテーマに野球専門誌に寄稿を開始。修了後もアマチュア野球を中心に年間約300試合を取材し、全国の現場に足を運んでいる。