デマか?真実か? ゴルフの“都市伝説”を究明する
19番ホールは、ゴルフ用具に関する伝説やデマカセ、そして通説に満ちた遊び場でもある。そこでは「池で拾ったボールはまだ使えるのか?」といった基本的なことから、「ドライバーのフェースにワセリンを塗るとどうなるのか?」といった話まで、実にさまざまなトピックが交錯する。我々にとって大変興味深いゴルフにまつわる6つの都市伝説について、それぞれの専門家に解き明かしてもらうことにした。あなたもご存知のアノ話は、果たして真実か――。 実際にはそんなことを気にするほど長い間、1つのボールを失くさずに使い続けることはないと思うが、仮に同じボールで10ラウンドしたらどうなるのだろう? 傷や何百回という打撃は、ボールのパフォーマンスを低下させるのだろうか? かつてタイトリストやテーラーメイドでボールの設計を手掛け、現在は”スネルゴルフ”を経営するディーン・スネル氏によると、「少しでもボールのカバーに亀裂を入れるには、ツアープロレベルのヘッドスピードで、ドライバーを使って少なくとも100回以上ショットを打つ必要がある」という。ほとんどのボールは250回以上ショットしない限り、少しも劣化はしないとのことである。傷に関しても、ディンプルが切り裂かれてしまった場合を除いて大きな問題ではないようだ。 しかし、気温と水は大敵である。38℃を越える、あるいは氷点下になると、ボールの各層を形成するポリマーが軟化、あるいは硬化し、ボールの初速やスピン量に影響を与える。また、池で拾ったボールでプレーするのも、賢明ではないとのこと。「水はコアまで浸透するので、飛距離や初速が損なわれてしまう。水に浸けておくと、48時間後に初速が遅くなり始め、さらに2、3週間すると、本格的に速度が損なわれる」とスネル氏は話している。 ではボールが最高のパフォーマンスを発揮する完璧なコンディションとは? サンディエゴの気候のように、気温20℃ほどで乾燥している状態がベストとのことだ。 気温20℃ほどの穏やかな日にプレーしない限り、平均飛距離よりも飛距離が落ちたり、逆に上がったりということがあり得る。トラックマンの開発者たちは様々なコンディションのもと、彼ら独自のレーダーシステムを使って何千球というショットを解析。その結果、気温は我々の想像以上にゴルフに影響をもたらすことを把握したようだ。 6番アイアンで比較してみたところ、気温38℃の天候では、5℃の時に比べ、8ydも飛距離が伸びたのである。また標高に関して言うと、平均的なヘッドスピードの持ち主であれば、標高約1,500mの場所では6パーセントの飛距離アップが望め、フェアウェイウッドやハイブリッドなど、弾道の低いクラブでは飛距離の増加量が低くなる傾向になる。つまり、デンバー(標高約1,600m)では1番手下のクラブを使わなくてはいけないということだ。 アイアンのフェースの同じ位置で何千球というボールを打つツアープロでない限り、平均的なプレーヤーの場合はクラブが使い物にならなくなるよりも、テクノロジーの進化(=クラブの買い替え)の方が先である。 「ステンレスの鋳造アイアンであれば、フェースは永遠に摩耗しません」と言うのは、ニューヨーク州ミネオラのピーツゴルフショップで働き、全米クラブフィッターベスト100に選ばれたこともあるカーク・オグリ氏。「ごく稀に、メタルウッドにひびが入ることはありますが、摩耗したり強度が弱まったりすることはありません」。 劣化が起こり得るのはシャフトとウェッジで、「スチールシャフトは、特にマットで多用すると経年劣化で湾曲することがあります」とオグリ氏は述べた。「ウェッジでたくさん練習をするとフェースの溝が摩耗します。2年おきに買い替えるのがいいですね」。 そしてもう一点。寒冷な気候がクラブにダメージを与えることはないが、夏場の車のトランクの中などの極度の高温は、ヘッドとシャフトを繋いでいるエポキシ(樹脂)を弱めることがあるので要注意だ。 あなたが7番アイアンで人生最高のスイングをして、練習レンジの150yd表示にキャリーでブチ当てたとする。その時あなたは、どれくらい自らを誇れば良いのだろうか? それは実際に打ったボール次第だ。 我々は2014年に行ったテストで、スイングロボットを使用の上、無作為で別々の練習レンジから集めた20個のレンジボールと、タイトリストPro V1を打ち比べてみた。平均的なアマチュアの7番アイアンのヘッドスピードとなる36m/sでタイトリストPro V1を打ったところ、飛距離は147~152ydだった。これに対し、レンジボールは139~168ydと飛距離に大きなばらつきがあった。 さて、このテスト結果から得られる答えは…? レンジボールの飛距離で狂喜乱舞するのは、賢明なこととは言い難いということだ。 数多くのレッスンではクラブのヘッドスピードを向上することに専心しているが、スピードにばかり気を取られると、飛距離というパズルのもう一端が疎かになってしまう。そう、スイートスポットで打つことだ。 ゴルフ科学者(元ベル研究所エンジニア)のデイブ・チューテルマン氏に、オフセンターヒット時のインパクトの計算を依頼したところ、それはフェースのどこでヒットしたかによる相対パフォーマンス、“ミート率”次第であるとの回答を得た。 スイートスポットで打つことの多いツアープロのミート率(ヘッドスピード÷初速)は約1.48だが、ハンディ20のアマチュアはフェースの至る所で打つため、通常、ミート率は1.30を切ってしまう。仮にハンディ20の人がヘッドスピード44m/sで打ったとしても、ミート率が1.30であれば40ydほど飛距離をロスすることになる。別の見方をすれば、スイートスポットで打つのは、ヘッドスピードを5m/s上げるのと同じということである。 一言で言うと、答えはイエスだ。どんな物であれ、グリースの類(ワセリン、日焼け止め、リップクリームなど)をフェースに塗布すれば、悪いスイングによるサイドスピンが抑えられ、ボールはそれほど曲がらなくなる。またバックスピンも減るが、これが吉と出るか凶と出るかは打球の性質次第である。 なお、これは重大な規則違反でもあるので、こういったグリース類はどこかへしまっておくのが良いだろう。 (米国ゴルフダイジェスト誌 2017年3月号掲載)