画期的な日本上陸
インターナショナルシリーズはLIVとアジアツアーの合意の下、3億ドル(約447億円)が投資されて2022年に始まった。今年はインドやモロッコ、サウジアラビアなどで10試合が予定されており、日本大会は第3戦。こちらも金銭面は潤沢で、賞金総額200万ドル(約3億円)で実施される。インターナショナルシリーズの年間ポイントランキング1位には、来年のLIV出場権が与えられる。
日本大会は出場156選手で、アジアツアーやLIV、日本などから参加が見込まれている。香妻は「めちゃくちゃ楽しみ。日本人のLIVプレーヤー=僕と認識してもらえるように、優勝争いできたらいいなと思う」と意欲満々。LIV側のコメントからは、勢力拡大のために日本重視の姿勢が伝わる。幹部のロス・ハレット氏は次のようにコメントした。「日本のゴルフ市場は世界で最もダイナミックなマーケットの一つで、日本大会の実施はまさに画期的。世界的な普及においても大事な節目となる」と意義を強調した。
LIVではラーム、ケプカの他にもブライソン・デシャンボー、ダスティン・ジョンソン(ともに米国)、セルヒオ・ガルシア(スペイン)ら強豪が競い合う。日本開催の情報を耳にした香妻はLIVの選手たちに声を掛けて参戦を促している。見どころについて次のように熱弁する。「レベルの高さがすごいと思う。インターナショナルシリーズではLIVの選手が優勝争いすることも多い。僕自身も楽しみで、見に来られる方々にもいい刺激になると思う」と、日本ツアーとはひと味違う争いを予想した。
つらさ乗り越えた自信
日本選手初のLIVフル参戦という未知の領域を開拓し、香妻は一回り大きくなった。昨年の試合会場は英国、米国、サウジアラビア、オーストラリアなどまさに世界各地に及んだ。名だたる選手たちを向こうに回しての試合。慣れない環境で大変なこともあった。裏側にあった逆境を次のように漏らす。「つらいことがいっぱいあった。特に前半戦はなかなかなじめず、試行錯誤しながら成績が出ないことが続いた」と明かした。
それでも逃げず、戦い抜いたことに価値があった。一緒に転戦するキャディーやマネジャー、そして家族の支え。出場試合が増えるごとに視界が開け、しっかりと居場所を確立していった。個人戦の最高順位は9位、ポイントランキングは45位だった。今では次のような心境に至った。「1年間戦ったというのは、自信につながっている。目指しているところでやると充実感がある。自分の戦いたいと思う場所で挑戦するのがプロゴルファーだと思う」と勝負師のメンタリティーが根付いた。
今季は腰痛の影響で開幕戦から出場を回避。治療を優先させながら、4月下旬には戦列に復帰する予定だ。慌てることなく、その時々でやるべきことに集中。「1年目と2年目では全然違って、さまざまな経験が生きてくると思う。こういうゴルフをしたら上位にいけるんだというのは、肌感覚で慣れてきた」と、いい意味でのゆとりを感じさせた。
秘める狙い

2022年にスタートしたLIV。選手の引き抜きなどを巡って伝統ある米男子のPGAツアーとことごとく対立していた。しかし近年は状況が変化し、2023年に両団体が事業統合に合意したと発表された。米国の大統領にドナルド・トランプ氏が復帰して情勢が活性化。PGAが事業統合に向けてトランプ氏に協力を要請し「彼のリーダーシップで最終合意に近づいている」との声明を出す段階にまで来た。ちなみにトランプ氏の名の付いたゴルフ場ではLIVの試合が開催されている。
メジャーとの絡みでは6月の全米オープン選手権、7月の全英オープン選手権がともにLIVのランキングに基づく出場資格を設けた。またメディア露出では今年に入り、LIVが米国向けに放送局FOXスポーツと新たに契約。映像配信サービスのDAZNとの契約もリリースされ、日本やカナダ、複数の欧州の国々でも視聴可能になった。香妻は「話を聞くと、FOXで放映されているのもプラスになって、去年よりも盛り上がっているみたい。必ずPGAとLIVがいい形で共存し合えるようになると思う」と願望を口にした。
世界の潮流に乗り、5月のインターナショナルシリーズでは、別次元の思考で活躍を期す香妻。「日本のファンの方にいいところを見せて盛り上がれば、日本でもLIVの試合ができると思う。そこまでつなげることができたらうれしい」。LIVプレーヤーらしい自覚を漂わせるコメント。自分のため、そして世界のゴルフ界のために、ジーニーが確かな足跡を記すチャンスを迎えた。